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嫌われ者の毒属性魔術師  作者: kashizaki
3/10

第2話

やっと本題が始まります。

『ビーヒョロロロローピーヒョロロロロー』


「……朝か。」


あれから数時間たち、僕は魔物に喰われずに朝を迎えていた。

ただし、服は完全に魔物に破かれ、下半身は何も履いていない。


「なんとか臭いで誤魔化せてよかった…。」


村長が居なくなった後、しばらく僕は思考が停止し、その場から動くことが出来なかった。

そんな僕を現実へと引き戻したのは、奇しくも魔物の鳴き声と足音だった。


とにかくここから逃げないと!っと焦った僕は、すぐさま思考した。


まず、僕は甲高い音と夜の森でよく通るあの声は狼だとまず断定した。そして、直ぐにここにやってくることを。


「時間が無い!」

周りを見渡す。ここは少し森の中では開けた場所で、見晴らしが良い。


自分を見る。

そこで、僕は下半身の不快感に嫌な思いと一緒にこれだ!と突発的に服を脱いだ。


僕は見た事があった。狼ではなく犬だったけど、犬は臭いや声に敏感だと。

きっと、狼は、僕の叫んでしまった声と、この臭いに惹かれてきている。


改めて周りを見る。そこには一冊の本。それを土で隠し、その場を離れ、少し離れた木へとなんとか登った。


「はぁはぁ…なんとかこれで。」


息を整える。すぐに来るはずだ。




ーーーサッサッサッサッーーー


「………来た。」


後ろから聞こえる森を翔ける足音。狼にしては、随分と遅かったような…。


「グルルル…クバゥ!」


「ヒッ!」


ーーー狼じゃない…!?ーーー


暗闇の筈なのに、黒い毛並みが明らかに目立つ。

そして、特徴は狼そのものだった。だけど、僕よりも一回り大きい身体は、全くもって普通の生物ではなく、犬なんて比較にもならない。


「不味い…!」


今僕が居る位置を見て気付く。


あれがきっと魔物だ。



僕が木に登ったのは、最悪見付かっても登っては来られないと思ったからだ。


でも、あんなに大きいと、人飛びで僕の所まで来れる筈だ。


つまり、見つかった瞬間死ぬ。



狼の魔物が僕の服を噛みちぎっている間、僕はそれをただ見ながら、生きた心地がしなかった。


「ぁ…!」


僕の口から自然と声が漏れる。


見つかった訳では無い。魔物に魔術書の存在に気が付かれたからだ。


魔物が土で隠した魔術書を掘り起こす。


僕は魔物に殺されたくなかったし、今でもどんな事が起こっても良いから、とにかく生きたいと思っている。

だけども、それ以上に、魔術書が破かれるかもしれない事が怖かった。


やっと、僕は魔術を学べる。そして、僕にも知らない僕自身の秘密があの本にはある。


「離れた…。」


魔物は一度距離をとる。

恐らくあの魔物も、人間の魔術書なんて、見た事が無かったのだろう。それくらい大袈裟にバックステップで距離をとった。


そうだ。そのまま居なくなってくれ…!


「バウッ!グルルル…。」


何か威嚇するような声が聞こえる。それだけあの魔物も知らない物には慎重なんだろう。


だけど、魔術書と魔物の距離は時間が経過し段々と近付いていく。


そして、次の瞬間


「あぁ…ダメッ!」


「ガルル!!(パリンッ)グァ?…グラァッ!?」


「なに…!?」


狼の魔物は魔術書に思い切り噛み付いた。

だけど、その瞬間に魔術書が発光し、何か仄かな光で本全体が覆われて、逆に狼の鋭い牙を破壊した。


「付与魔術…?」


読んだことがある。魔術師が、味方や貴重な物などにかける魔術があることを。


使った事なんて全く無いけど、知識だけは少しはあった僕は、その現象を正しく理解していた。


驚いた狼は来た道を先程来たよりも更に速く逃げ去った。

その場に残ったのは破かれた服と魔術書だけ。

その日はそのまま緊張の解かれた僕は、木の上で死んだように眠った。




起きた僕は木から下り、本が置いてある場所に戻った。


隣にあるビリビリに破けた服を見る。何故か分からないけど、所々腐敗していた。


「これはもう服として使えそうに無いかな…。」


一応腐敗した場所を土で落とし、近くの枝に立てかける。こんなものでも夜の寒さを少しでも凌ぐには良いだろうと思ったからだ。


ある意味僕は運が良い。もし、捨てられたのが寒い季節だったら僕はとっくに昨日死んでたと思う。

割と早くに寒さの対策をしなければいけないだろう。


「それにしても、夜のあの黒い狼の魔物は何だったんだろう。」


僕はその場に座り込む。周りに魔物の気配は多分しない。

あの魔物には、何故か怖さもあったけど、何か惹かれるような気がした。


「もう合わなければ良いな。」


村のお父さん達がよく狩りをして持ってきたのは魔物ではなく、鹿だとか兎だった。

魔物なんて、僕は初めて見たはずなのに。


「いや、とにかく今は別だ。」


無造作に置いてある本を見つめる。


「…これが僕の得意属性の魔術書。そして、僕の今までの理由。」


表紙には大きく、後から村長が書いたのか『危険』と言う文字と一緒に、『触れるべからず』ともある。


ゴクリ。と、唾が喉を通る音が聞こえ、恐る恐る魔術書のページを開いた。


「これが僕の…。」


そこには確かに本の名前が書いてあった。

そうして僕は、本のページに手をかけたのだ。





「毒属性魔術書…。」





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