第8話
『起きなさいルイス!…起きなさい!!』
『ん…何、マイリン?』
ぼんやりとした視界の中、窓を叩く音と共に、僕は彼女、マイリンに起こされる。
『はぁ、やっと起きたわね。…ねぇ、お父さんには内緒でなんだけど…魔術を見てみたくない?』
『え!本当に!?』
『えぇ。ふふ。本当に魔術が好きなのね。』
『うんうん!』
彼女は見てなさい。と、そう言って、窓から少し離れ、僕の前で呪文の用意を始めた。手には一本の木材があった。
『魔術をひとつも使えないあなたに、私が貴重な体験をさせてあげるわ。私との差を、せいぜい見に刻むことね。【加工】!』
彼女が、一本の丸太にそう魔術をかけると、丸太は鋭く変化し、木刀になった。
『凄いや!』
『えぇ凄いでしょ?あなたも出来るようになりたい?』
『うん!』
『ならこっちに来なさい。』
『分かった!』
僕は窓を乗り越え外に出る。彼女は付いてきてと僕に言って走り出し、僕もその後ろ姿を追った。
『ふふ。ここら辺で良いわね。』
『はぁ…はぁ…で、来たけど早く教え(バシンッ)痛い!!』
急に頭に強い衝撃が走る。その後すぐに、僕の視界は赤く染る。
痛くて今にも泣きそうになるけど、僕は出なかった。
僕が泣くと、父さんがまた暴力をするから。
『あぁ、血がべっとり…汚いわねぇルイス。』
『…なんでこんなことするのマイリン。』
『?まだ分かっていなかったのかしら?勉強よ。
べ・ん・きょ・う!』
『痛い!!』
今度は強く左足のスネを打たれる。彼女は剣術の修行もしてるため、女の子なのに当たり前のように僕は膝を折った。
打たれた場所が、酷く曲がり、腫れている。
痛い…。
痛い…
痛い痛い痛い痛い痛い!!!
「何なんだこの女は!!!」
『ん〜?なぁに?ルイス。』
「【拘束睡眠】!」
『えっ?なんでルイスに魔術が…。』
突然の事に油断したのか、女は地面へ倒れた。
「はぁ…はぁ…思い出した。君もそうだったね。」
『くっ!何をしたの!?』
「へぇ、眠らないんだ。まぁ動けないでしょ。」
ルイスが一歩ずつ、マイリンに擦り寄る。
「…僕は嘘が嫌いなんだ。」
ゆっくりと、その腕にマイリンが持っていた木刀を持ちながら。
「君が僕を実験にした魔術は全部覚えているよ。
【加工】、【水の刃】、【風刃】、【身体強化】、【回復】、【麻痺】。
全部痛かったなぁ。傷を負う事に、君は笑いながらそれを治してさ、その後、また同じ場所を傷つけるんだ。
…知ってる?傷が治ったとしても、痛みは残るんだ。」
『それが、どうしたのよ…。』
「僕も実験がしたくてね。」
『嘘……キャアァァァ!!パパ!助けてぇ!!』
「パパは来ないよォ?」
分かってる。これが既に夢だってことは。
でも、辞められない。
「確かぁ…【加工】。おぉ!」
夢のせいなのか、魔術が一回で成功する。
僕は作り替えた。
木刀を、更に鋭い木剣に。
「ふふ。起きるまで、何回刺せるかなぁ?」
『イヤ…イヤァァ!!!』
(ピーヒョロロピーヒョロロ)
「…あれ。」
朝か。
「何か…昔の思い出を見ていた気がする。でも、何か凄く残念な…。」
不思議と、昨日火を消した焚き火の前にある木材のカスを見る。
「そう言えば…。」
僕はこれまでの森の生活のおかげで村での生活を忘れかけていた。
村で教わったことも。
確かこんな感じだったはずだ。
「…【加工】。」
腕から魔術の放流が出たことで、呪文は間違ってはいないと僕は解釈する。
だけど、嫌な予感がして結果を見ると、確かに木材が、僕の魔術に反応し、棒の形状へ変化したが、すぐに元に戻ってしまった。
「これも時間をかけて頑張らないとな…。」
ただ、僕は本当に良いタイミングで思い出した。
この日から僕は、毒属性魔術の練習と共に、【加工】の練習も始めるようになった。
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