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第1章 異世界転生がベタなのは小説の中だけだ

ここまで読んだ人は居るのでしょうか。無駄に長く続く予定です。

 20XX年、ゲームはリアルを越えようとしていた。一定の領域内に限るが情景を描写しキャラクターは立体化するようになり、中には実際に触れる物まで生まれていた。

 この技術革新により日本は再び注目されることとなる。世界はこの立体技術をあらゆる分野に利用しようと画策していた。だが日本のオタク文化は新たなる快楽を求め更にコアな方向に進んで行くこととなる。


「いつの時代もレベル上げは怠いなー」


慎之助はそう呟くと腕に装着した端末の電源を切り、布団に潜り込む。


「明日も一限は自主休講かな」


そういうと慎之助は目を閉じる。窓の外は少し明るくなり始めていた。





 慎之助がやっていたゲームは『ラストクルセイド』ーー美少女キャラを集めて冒険し、イベント中はギルドに集まり共闘する。何十年前からよくある設定のキャラゲーだ。一見有象無象のゴミゲームだった。

 だが噂が人を呼んだ。ーあのゲームは本物だーと。彼が友人に勧められ始めたのは3ヶ月前。すでにリリースから2年は立っていた。やれば分かるさ。そう友人は言うと腕に装着した端末にカードを挿入するよう言ってきた。


..........


目を開けるとそこは広い草原だった。一陣の風が彼の髪を撫でる。


「おい」


慎之助はゆっくりと振り返る。


そこにはイケメンの男と美少女が立っていた。


「人違いです」


そう言うと慎之助は歩き出す。


「待てよ」


腕を掴まれる。今の声は...


「せっかく人が気づかないフリをしてやったのに」

「うるせー。仮想世界ぐらいイケメンでいさせろやい」


友人、相川翔太郎の物だった。金髪碧眼のロングヘアーを携えた長身美形。リアルとはかけ離れていた。


「そう言うお前こそリアルとの乖離がすざましいぞ」

「うるせー、設定でブサイクは作れなかっただけだよ」


慎之助も銀髪の筋肉質イケメンの姿を借りている。人のことは何もいえない。


「こっちこいよ、まずはギルドを作ろうぜ」


翔太郎は歩き出す。慎之助もついていく。


「こっちでは翔太郎じゃなくて景虎と呼んでくれ」

「相変わらず厨二全開だなお前は」

「じゃ、慎はなんてHNをつけたんだよ」

「....蟲」

「は?」

「甲蟲だよ..」


 好きなアニメキャラの名前をもじったHNで慎之助がよく使う物だった。面と向かって言うのはやはり恥ずかしい。

翔太郎改め景虎君は顔を赤くした慎之助を一瞥すると口を閉じる。

アニオタの友人はもれなくアニメ好き。慎之助は気の置けない友人に心地よさを感じた。


..........


 しばらく歩くと景色が変わる。どうやら草原は抜けたようだ。さっきまで何も無かった視界に急に建物群が映る。例えるなら台北の九份といったものか。


「すげーリアルだな」

「だろ、この切り替わりの速さとディテールの細かさもこのゲームの重要な要素なんだぜ」


景虎君は自慢げに胸をそらす。別にお前何も関わってないだろとは言わない。


「ここがギルドセンターだ、改めて登録し直すぜ」

「お前今まで入ってたギルドには入って無かったのか?」

「んや、慎じゃなくて甲君を引き込むに当たって新しく作ろうと思って」

「そこまでしなくても」

「次の方々、何の御用でしょうか」


受付のお姉さんに呼ばれ会話を止める。その声に慎之助はなぜか懐かしさを覚えた。


「新規ギルドを設立しに来ました」

「3ヶ月間はギルドの移動は出来ませんが大丈夫ですか」


 慎之助は二人の会話をボーと聞き流す。このゲームに関する事は景虎の方が詳しいはずだ。無理に自分が参加する理由もない。そもそもまだやるかも決めていないのだ。

 慎之助はふと視線を感じそちらを見る。景虎が連れていた美少女だった。彼女はじっとこちらを見ている。


「は、初めましてでいいのかな」

「・・・・・」


【へんじがない。ただの しかばね のようだ。】


「・・・・・」

「・・・・・」

「終っt、何やってんの君たち」


【しょうがない。 だって だんしこう しゅっしんだもの。】


..........


「この女神の名前はヘレン=ケラー。俺の相棒だ」

「どうも...」

「「....」」


 ギルド設立の報酬で貰ったというこじんまりとしたギルドハウスのなかで二人と話す。続かない。イケメンの焦る顔はメシウマだ。


「と、とりあえず任務報酬でもらえる女神を貰いに行こう」

「おおう」


ようやく捻り出したセリフが出るのにたっぷり10分はかかっただろうか。


ハウスを出た慎之助は豪華なホテルみたいな場所につれていかれた。


「お疲れさまでした。ギルド設立ミッションの報酬受け取りで宜しかったでしょうか」

「はい」


受付嬢が翔太郎に声をかける。


「テメェ、俺をだしに使ったな」

「心外だよ甲君。僕は君の為を思ってだね」

「ほざけ」

「君もその報酬は貰えるはずだよ、フレンド申請した一人とは共有できるってあったから」

「ああ。さっきのヤツか」


 慎之助はそこで一体の女神を受け取った。ルメアと名乗る美少女女神は子供っぽい見た目ながら馬鹿でかい斧を背中に担いでいる。そのギャップは嫌いじゃない。むしろ大好物だった。


「始めまして、マスター。ルメアと言います。小さいけど頑張ります」

ざわっ

「ん?何だ。まあいいか。よろしく。俺の名は」


トントン


「甲君。君自分を呼ぶ設定をマスターにしたんだね。勇気あるよ」


周囲の笑い声を背に受け甲蟲は逃げ出した。


「へえ」

「+兄さんどうしたの?急に立ち止まって」

「いや、何でもないよ」


..........


「普通、誰に聞かれるかわからないから呼び名は設定しないか人が居ない時だけONにするんだよ」

「そういう事は最初に言えよこんちくしょー」

「今回ばかりはすまん。設定読ませなっかった俺も悪かっtブフッ」

「○す」

「ごめんなさいマスター」

「いや..君は悪くないんだ」


気づけば時刻は24時を回っていた。ゲーム内の空も暗く明かりも少なくなっていた。ホテルで周りの冒険者に笑われた慎之助はギルドハウスに逃げ込んだ。遅れて入ってきた翔太郎を慎之助は責め立てる。


「もうあそこには行けねーよ、てかもう辞めるからいいわ」


 翔太郎の説得を受けた後、そう言うと慎之助はログアウトしようとする。高い買い物だったなー。2年立ってるし人気あるか微妙だからほぼ新品でも安く買い叩かれそうだ。


「お休みですか?マスター。ではまた後ほどお会いしましょう」


ルメアはそういうと虚空に消えた。なんか後味が悪い。


「お前はやめられないよ」

「ある程度会話が成立する女神があえて『お休みですか』と言ってきたんだ」

「お前はそこまで冷酷じゃないはずだ」

「あんな顔をした女の子を無視できるほどはな」


 また明日、学校で。そういうと翔太郎もログアウトしたようだ。静かなギルドハウスで慎之助はしばらくログアウトは出来なかった。




読んでくださった人、ありがとうございました。居るのかね

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