こんな腐った世界に救済と世直しを
第二章 こんな腐った世界に救済と世直しを
「う、うう..........」
俺は目が覚めると、一面草だらけの平原に寝転んでいた。
立ち上がるとそよ風が心地よく肌を撫でるように吹いてくる、とても静かな場所だった。
「ここってどこだ?」
俺は指を縦にスライドすると目の前にステータス画面やアイテムボックスなどが表示された。
やはりここはゲームの中だとわかった。
しかし、何故か妙に体が重く違和感を感じた。
あれ?今思ったけどおかしくね?
このゲームは一人称ではなく三人称のはずだった。それと匂いや感覚と言ったものは何一つない。
俺は試しに自分の腕を指でつねってみた。
「痛い.....」
そうなると答えはひとつしか思いつかなかった。いや多分ひとつしかないだろう。
俺がこのゲームの主人公になったってことになる。言わば転生したってことだ。
「ああもう、わけがわからん」
頭が痛くなり再びその場に倒れ込んだ。
どうすんだよ........いや、もう一度クリアすればなんとかなるのか........。
〜五分後〜
ああ!もう、わからん!
俺はグダグダしても始まらないと思い、行動を開始した。
まずはステータス画面を開く、すると正真正銘俺のキャラクターそのものだった。
名前 暁
HP2000
NP95
種類 不死の人間
職業 槍兵
筋力99+ 技量20 知力25 体力50 素早さ99+
補正 突属性ダメージ1000%アップ
槍系を装備時全ステータス500%アップ
バッドステータス全無効化 (デメリット)回復魔法以外の支援魔法などを受け付けない
火の王 (火属性ダメージ1000%アップ&火属性攻撃全無効化)
スキル 神速 フレア 暖かな温もり 内に睡る炎 投槍 炎王 火の王
装備品
火の王の槍 ダガー+SS 日の丸の弓+SS
レベル140
安堵した表情で額の汗を手で拭い、「はあ〜」と息を吐く。
「いや〜、レベル1からだったら泣いてたわ」
そして次に情報を集めるために周辺で一番近い街を目指すことにした。
「よし、火の精霊達よ。我、汝の王なり。道を示したまえ」
一回言ってみたかったんだよね。俺は少しテンションが上がっていた。
すると手の平から赤く光った丸いものが浮かび上がった。
そのまま大空へと飛んで行き周辺の探索と感知そして敵対反応を調べてくれている。
やはり、詠唱もゲームと同じであった。
この技は魔法ではなく神様(運営)が初心者のために、レベル20を超えると誰でも使えるように配布されたものだ。しかし、俺みたいに接近戦を得意とする職業は一匹が最大だ。
そうして精霊が周囲の地図と敵の情報を集めている内に少し散歩をしに行くことにした。
「いや〜、やっぱこのゲームは神としか言いいようのない出来だな」
俺は崖から流れる滝を見てうんうんと頷いていた。
すると森の奥からなにやら鉄臭い匂いがした。
「なんだ?鉄?いや、血だ!!!」
俺はなりふり構わず森の奥に全速力で走った。緑色のゲージ(スタミナ)がどんどん消費されていく。
密集する木々を抜けると少し広い場所に出た。そこには白い髪の少女二人を取り掛込み一人を殴るなど暴行を与えていた。
俺は初めてゲームで怒りを覚えたようだった。
「何をしている」
「あぁ?誰だお前......」
男達は俺の装備を見るといきなり勝てないと思ったのか声色を変えてきた。
「こいつらは俺達が買った奴隷なんだよ。あんちゃんもわかるだろ、これはただの躾なんだよ」
男はまるで勝ち誇ったような顔だった。すると俺はいい考えが浮かんだ。
「お前等さ、金が欲しいのだろ」
俺は心の中でどす黒い笑を浮かべた。
「そりゃあそうだ」
「なら取引をしないか?」
「取引?」
男達は顔を見合わせ首を傾げ合う。
「ああ、この奴隷を俺に売らないか?」
「ほう、幾らなら出せる?」
金なんて腐るほどあるぞ。まあ、永久的に金を作り続けるアイテムを持っているからな。
俺は袋の中がパンパンに詰まった金貨をチラつかせた。
「いいだろう。その代わりそいつらの品質は保証しねえぞ」
「ああ、もちろんいいとも」
すると男達はぞろぞろと帰っていき一人の男が青い石を渡してきた。
奴隷契約の青い石を手に入れた。
(このアイテムを持っていると契約した者に対し永続的に隷属及び絶対命令を可能にする)
まあ、こんな物を持っていても仕方がないな。
俺は二人の少女達に近ずいて行った。すると怯え始めた少女に俺は笑顔で青い石を砕いた。
パリン!!!
ガラスが割れるような綺麗な音と共に少女達の震えが止まった。
「な.......なんで?」
「話しは後だ。傷を見してみろ」
よく見ていなかったが犬系の亜人のようだ。一人は長い銀髪でもう一人は青い髪だがボサボサだった。
「痛い!!」
足には長い棘のようなものが刺さっておりかなりの出血だった。
俺は棘を引き抜き手で出血を押さえた。だが、血はどんどん出てくる
「火の王として我が同胞の傷を癒そう...........暖かな温もり」
呪文を詠唱すると俺の手から光が現れ、痛々しい傷を綺麗さっぱり無くした。
すると怪我した少女は安心したのか気を失ってしまった。
「終わったぁ〜〜〜」
傷も無くなり一安心したいところだが森の奥なので油断は出来ない。
「取りあえずここから出ようか」
俺は怪我した少女を抱きかかえて来た道を真っ直ぐ戻る。後ろにはちゃんともう一人がついてきていた。
だが、どれだけ歩いても一向に森から出る気配がない。
「おかしいなぁ、一直線に走って来たんだけど」
俺は少し不安になりその場に足を止めた。
「あ、あの〜..........」
すると後ろにいた少女が口を開いた。
「うん?どうした?」
「さっきの話し.....」
「ああ、なんで助けたって話しだよね」
少女はコクリと頷いた。
可愛い。...いかんいかん、こんな時に何を考えてんだ!
俺は昔から動物が好きだったので人と動物が融合したような亜人は素晴らしいと思っている。
俺は撫でたい衝動を抑えつつ話を戻す。
「助けた理由は無いかな。まあ、突然のことだったし」
俺は嘘偽りのなく話した。ここで選択をミスると敵対してしまうからだ。
このゲームでは全てを味方にすることも出来るが選択肢をミスったり、変に関係を結ぶと敵対となってしまう要素があるのだ。
「でも、私達は亜人だから」
「それがどうしたって言うんだ?」
「みんな私達のこと嫌ってる」
そうなのか?俺のゲーム時代はみんな平等に暮らしてたのだがな。
俺はそれを聞いて少し落ち込んだ。
「なあ、一つ聞いていいか?」
「わかることなら」
「赤き月の団を知っているか?」
「うん、知らない人は居ない」
赤き月の団は俺のゲーム時代のチームパーティ名だ。その名がこの世界に知れ渡っているならば俺がラスボスを倒しこの世界は救われたはずだ。そう英雄として。
そう思っていた俺だったが少女の一言で全てが打ち壊された。
「みんな世界を救った英雄だったのに悪英雄として処刑されたって聞いた」
「どどど、どうゆうことだ!?詳しく聞かせてくれ」
全く想像もつかない回答が来て俺は驚く。
「えっと.....聞いた話しだけどチームの中に亜人だった人がいて〜...」
少女は語り始めた。そして俺が俺じゃ無くなるその時まで。
....
これは俺がラスボスを倒した後の話し。俺のチームパーティは英雄の帰りを待っていた。しかし一向に現れなかったので俺が帰って来た時のことを考え国王の座を守っていたらしい。そんな時だった。元チームパーティのディアブロが俺の帰りが来ないことに腹を立て、反乱を起こしたそうだ。だがそんな寄せ集めの兵では俺のチームパーティに勝てるはずがないだろう。
そこでディアブロはある作戦に出たのだ。それはチームパーティメンバーで二番目の強さを持ったサン・クラーク・ララティー(サクラ)を洗脳し敵対させることに成功。それによりディアブロの作戦により俺のパーティは壊滅的な痛手を追ってしまう。そして一年間の間持ちこたえていたが三番目に強いアルバーが戦死よって戦争は反乱軍の勝利に終わった。だがディアブロは強欲なのか俺に味方した者を処刑し俺を悪の英雄として広めたそうだ。ディアブロは王国だけでは飽き足らず世界を侵略し全ての領地と権利を手に入れた。しかし、予想外の事件が起こったらしい。サン・クラーク・ララティー(サクラ)の洗脳が解けてしまった。当然彼女はディアブロを恨み、復讐しようとしたのだろう。それに感ずいたディアブロは恐怖を感じ彼女を捕獲して火で焼き殺したそうだ。だがその時に死体が無かったと言う。
そうして時間が経ち二年後俺は再びこの世界に召喚された。
....
「その話は本当なのか」
確かに俺とディアブロはよく喧嘩をしていたが一応仲間なのだ。しかし、俺の望む返答は帰って来ない。
「私達はまだ産まれて間もなかったから」
「そ、そうか.............」
嘘だろ....。じゃあ、俺はなんの為にここに戻って来たんだ........。せめて、サクラだけでも居れば。あ、ああ、アアアアアアアアアアアアああああああああぁぁぁ!!!!!
俺は歯を食いしばる。少し血が滲む。
「くそ....」
ここはゲームの世界だろ。なのになんなんだよこの気持ちは!?
「うん?アカツキ様?」
俺は前が暗く見え始め我を忘れていた。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す、絶対に復讐してやる」
俺の中で何かが壊れる音がした。そして人から外れていく感じがした。
ステータス解放
闇の王
「アカツキ様!!」
「は!?」
彼女の声が俺を元の世界に戻してくれた。
心臓がすごく苦しい。なんだよこれ!!
「アカツキ様?」
少女が心配そうにこちらを見ている。
「す、すまない。ちょっと歩いてくるからこの子を頼む」
俺はその場から逃げ出したい気分だった。いや、現実から逃げ出したかったのだろう。
俺は少し歩いた所で立ち止まり槍を手に取りなりふり構わず振り回す。すると木々がどんどん倒れていった。
なんで、なんでだよ!!!!
涙が溢れんばかりに流れる。憎しみ、怒り、そして仲間に裏切られた不甲斐なさが俺を襲った。
「クソが、こんな世界腐ってやがる」
俺は地面に這いつくばって泣いた。
もう心が折れそうだった。立ち直りの出来ないくらい完膚なきまでに打ち砕かれた。
これはゲームじゃない........現実だ!!
「あああああああああぁぁぁ!!!!」
俺は雄叫びを上げ胸に槍を向けた時だった。
「アカツキ様いや英雄様!!!死んじゃだめーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「え?」
その声はまるでサクラの声に聞こえた。そして一人の少女が俺を抱き抱えた。
「英雄様、私は貴方に救われた。だからこの恩を返したい」
本当にあの少女なのかわからなかった。だって、どの言葉もあの人に似ているのだから。
「アカツキ様、私を信じてほしい」
俺はまた涙を流した。今度の涙は苦しみではなく幸せによるものだ。
砕かれた心を修復されるように感じた。
「私はアカツキ様のおかげで奴隷から解放された。でも今度は私の意思で奴隷になる」
そう言って彼女は俺口にキスをした。
奴隷を獲得
奴隷名 ルナ・クラーク
そうして彼女は笑って俺を抱きしめ続けた。
こんにちは永久 光です。初めての人もいるかもしれませんがもし第一章を読んでない方は是非読んで頂けると幸いです。これからもどんどん投稿していきたいと思いますので評価または誤字脱字がございましたらメッセージでお願い致します。さて、これから始まるアカツキの日々を応援してください!!!まだまだ未熟ですが今後ともよろしくお願いします。