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魔性の瞳  作者: 冬泉
第二章「惑う夢」
93/192

魔性の瞳-92◆「急転」

■ヴェロンディ連合王国/王家の森(湖)→王都


「・・・そうか。」


 私は小さなため息をつく。

 彼女レムリアは、知っていること、わかっていることのすべてを話しているわけではない。そのようなことは、ある意味、当たり前のことなのだが、なぜか私には、それがとても残念なことに思えた。


『エリアドさま! 競争ですわ!』


 “風の囁き”が駆け出し、彼女の声が響く。

 ・・・あるいは、それは「自分を追いかけてきてほしい」という、彼女なりの表現なのだろうか。

 ふと、そんなことを思う。


“・・・ならば。”


「・・・おつきあいさせて、いただくとしようか」


 口の中で小さく呟き、“月光”の跨ると、首筋を軽く叩く。


「・・・頼むよ。“月光”。」


 まるで、その言葉に応えるかのように、“月光”は静かに駆け出した。


               ☆  ☆  ☆


 一陣の風のように走る“風の囁き”。巧みに馬を操るレムリアの乗馬術は確かなものだった。


“早く、早く──もっと、早く”


 レムリアの高揚した気持ちが、愛馬に拍車を掛ける。往路にはあれ程時間を掛けた王家の森を抜ける道を、復路ではあっという間に駆け抜けてしまう。


 程なく、王宮を取り巻く城壁に辿り着いた。多少息を荒くしながら、振り返って追ってきたエリアドに悪戯っぽい笑みを向ける。


「わたくしの勝ち!」


 些か子供っぽい言い方をすると、門に向かって右手に嵌めた指輪を翳す。ギギギ、と軋みながら門が外側に開いた。


「えっ!」


 門を抜けようとしたレムリアは、寸前で馬を止めた。アーチウェイを抜けた先に、道を塞ぐように一人の人物が立っていたからだ。顔も見たくない人物──嫌悪感で顔を背けた主の心を感じ取ったか否か、“風の囁き”が二三歩後退する。

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