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魔性の瞳  作者: 冬泉
第二章「惑う夢」
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魔性の瞳-90◆「現実」

■ヴェロンディ連合王国/王家の森(湖)


「・・・そうだね。私としても、貴女きみとのつきあいを今日だけのものに終わらせたくはない。・・・だが、まぁ、今日のところは帰るとしようか。“夜”をつき合ってもらえないのは、少々残念ではあるが、ね」


 唇の端に皮肉っぽい笑みが戻ってくる。(おそらく)真っ赤に染まる(であろう)レムリアの表情の変化をちらりと見ながら、私はこのように続ける。


「・・・冗談だよ。そうだな、こう言えばわかってもらえるかな。・・・私は、星々と放浪者の神セレスティアンの追随者(Follower of Celestian)という立場にある。夜空に輝く星々の下、“夜”の一時ひとときを一緒に過ごすということは、私の気持ちの中では、まぁ、そういった特別な意味もあるということだ。

 ・・・だが、焦りはすまいよ。もしこれから、私たちの運命が交錯してゆくものなら、いずれ、きっとそういった機会もあろう。」


 そこまで言って少しだけ表情を引き締める。


「・・・それに。せっかくの気分に水を挿すようで悪いが、おそらくこれから先、考えなくてはならないことはいくらも出てくるだろうしね。貴女きみの婚約者と名乗っていたあの男のことやら、兄君あにぎみ義姉君あねぎみのことにしても、ね」


               ☆  ☆  ☆


 一瞬、レムリアの顔が火照ったように紅潮した。驚いたように見上げた先には、余裕の笑みが浮かんでいる。


「あの・・・どうしても、お望みでしたら・・・」


 その先の言葉を、敢えて続けようとしたその時の自分は、すっかり己を見失っていたのだろう。少なくとも、後になって冷静に考えると、今置かれている立場で自分が言って良い言葉などではなかった。


 だが、運命はきちんと帳尻を合わせてくれるようだ。そんな自分の浮いた気分も、エリアドの次の言葉を聞いて一瞬で消失する。


「・・・あの、男・・・」


 心が急速に冷めてくる。問題は全然片づいてはいない──こんなところで、こんなに惚けている場合じゃないのだ。


「仰るとおりですわ。すっかり時間を使ってしまって──わたくし、どうかしておりました。急ぎ、お城に戻りましょう」


 “風の囁き”を呼び寄せると、ひらりと跨る。この場を去るのが非常に心残りではあったが、そんな自分を冷笑する声も聞こえてくる。



──婚約者のいる身で、他の男性と一日一緒にいたのよ。当然噂にはなっているでしょう?



 それは、予期していた。



──ましてや、相手は王国随一の富豪。国に対する影響も少なくはないわ。



 それだけは、避けなければ・・・。



──あなたを庇っているお兄さま、お姉さまのことを考えるのね。あなたの行動は、彼らの立場を一層難しくするわよ。



 そんなこと、判ってる。だから…



──だから、何?



 だから・・・“夢”を見ようと思ったのだけど・・・



──夢は、夢でしかないわ。叶わない、現世うつせの夢…



 渋面を作っている自分にはっとすると、笑みを表情に載せてエリアドに言う。


「さぁ、行きましょう」

 昨日は更新できず、申し訳ありませんでした。昨日より二週間の出張に出ております。(これも、空港のラウンジで更新してます)基本的に、出張中は更新が難しいので、恐縮ながら再開は31日から、させて頂き度。宜しくお願い申し上げます。

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