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魔性の瞳  作者: 冬泉
第二章「惑う夢」
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魔性の瞳-88◆「夢幻」

■ヴェロンディ連合王国/王家の森(湖)


 腕の中、彼女レムリアの華奢な身体は小さく震えていた。


「あ・・・、あぁ・・・。・・・そうだな。」


 途切れ途切れに紡ぎ出された彼女の言葉に、私は彼女を抱いた腕をそっと緩める。


「・・・すまない。・・・人の、・・・人の身体が温かいものだったのだということを、・・・久しぶりに思い出していた。

 ・・・痛くはなかったか?」


 けして痛みを感じるほどきつく抱きしめたわけではなかったが、彼女になんと聞けばよいものか、うまい言葉を見つけられず、結局そんな言葉が出てしまう。胸元に感じた彼女のぬくもりは、それほどに忘れ難いものだったのだろうか・・・。ふと、そんなことを自分に問うてみる。それに対する明確な答えが返って来ることはなかった。だが、それでも・・・。


「・・・レムリア。・・・私は、君に出会えたことを、心からうれしく思うよ」


 その気持ちは生涯忘れ得まい。私にはそんな風に思えた。


               ☆  ☆  ☆


「・・・平気、です・・・」


 レムリアは呟くように言うと、相手の顔をそっと仰ぎみる。ともすれば、冷厳に見られがちな表情には、優しげな笑みが浮かんでいた。


“あぁ・・・この人は、こんな表情もできるのね・・・”


 自分に会えたことを嬉しく思っていると、どこか恥ずかしそうに話してくれている相手の柔らかい表情が、今は自分一人だけに向けられている──その事実がレムリアには嬉しく思えるのだった。


「・・・わたくしも・・・」


 ──想いには、想いで応えなくては。心を閉ざしてきたわたしだけど、大切にしなければいけない事柄ははっきり判る・・・。


「・・・エリアドさまにお逢いできて、とても嬉しく思っております」


 そう、この想いに偽りはない。少なくとも──今、この一瞬は・・・。

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