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魔性の瞳  作者: 冬泉
第二章「惑う夢」
88/192

魔性の瞳-87◆「告白」

■ヴェロンディ連合王国/王家の森(湖)


「・・・レムリア。」


 私には、その彼女レムリアの微笑みは何よりうれしく思えた。

 人形のようにも見えた偽りの仮面の微笑みでも、どこかに陰りを残した微笑みでもない。

 少し躊躇うようにはにかんだ微笑みだが、まぎれもなく彼女自身の意志で紡がれた、心からの微笑み。

 彼女の手の中のムーンストーンの首飾りをそっと拾いあげ、漆黒の瞳を見つめながら、彼女の首にかける。


「・・・“今”という“時”が、けして“夢”ではないあかしとして。

 ・・・私の言葉が、けして“夢”ではないあかしとして。

 ・・・そして、“今日”という日の想い出に。」


 彼女をそっと抱き寄せ、耳元にささやく。


「・・・約束するよ。君はこれからいろいろな経験をするだろう。

 ・・・けして楽しいことばかりではないと思うが、それらはいつか君にとって、忘れ難い“想い出”となる。

 ・・・君が“生きて”いる限り、きっと。」


 私はそう言って微笑った。


               ☆  ☆  ☆


「ありがとう。とっても・・・嬉しいです」


 なんでなのだろう──不意にうまく言葉が出てこなくなってしまった。

 なぜだか、躰がすごく熱く感じている。

 心臓の鼓動は早鐘を打つかのように暴走気味──こんな感覚は初めてだった。


「あの・・・」


 この人は、いつまでわたしを抱きしめているのだろう?

 不快ではないけれど──躰が熱くて、おかしくなってしまいそう。


「あの・・・お城に、戻りませんか?」


 囁くような声しか出なかった。

 この状態から抜け出したいという想いと、ずっとこのままでいたいという想いが交錯する。


“わたしは、どこか変になってしまったのだろうか?”


 はっきりしない頭で考えてみる。よく分からない。

 でも──抱きしめられて、相手の鼓動を感じられることが、こうも居心地が良いとは思わなかった。


「ね、エリアドさま・・・お城に・・・」


 声が途切れがちになる。

 あぁ、頭も躰も熱い。わたしはどうなってしまうのだろうか・・・。

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