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魔性の瞳  作者: 冬泉
第二章「惑う夢」
83/192

魔性の瞳-82◆「涙滴」

■ヴェロンディ連合王国/王家の森(湖)


 レムリアがゆっくりと顔を上げると、そこには自分を見下ろす優しげな表情があった。



──あぁ、この人はこんな表情も出来るのね…



 不安感も恐怖感もなかった。ただ、しっかりと自分の道を歩く大人がそこに居るだけだった。



──自分は、なんて子供なんだろう…



 夢見だ、預言者だと言ったところで、真に大人として振る舞う相手の前にあっては、それは虚勢としか思えなかった。子供の自分が、とても恥ずかしかった。


「ごめんなさい・・・」


 涙がゆっくりと頬を伝う。


「こども・・・ですね、わたくし・・・。駄々っ子のような──自分でも、呆れてしまいます」


 泣き笑いの表情。だが、それは紛れもなく十七歳の少女の素顔だった。

 華奢な躯に小さな、細い顔。見上げる瞳は、その深い闇の色を失い、生真面目で純粋無垢な輝きだけを宿していた。


「・・・平凡だけれども、幸せな暮らしが欲しかった──そう言ったら、笑いますか? 何も考えずに、毎日笑って暮らせたら嬉しいです──そう言ったら、軽蔑しますか?」


 同情して欲しくて、言ってるのではないのです──そう言葉を結ぶ。ちょっと、子供の自分が我が儘を言っているだけなんです、と。



──さぁ、もう十分でしょう? 嘆いても、泣いても、現状は何も変わらないわ。



 ・・・そうね。判っているわ。



──相手に依存するのは止めなさい。貴女は夢見。独りで生き、独りで死ぬのがその路なのよ。



 えぇ。知っているわ。



──ならば、毅然とした大人の態度を取りなさい。



 ・・・そうね。



ふぅ、と溜息を付く。判っている──判っているのだけど。


「・・・どうして、こうも辛く感じるのでしょうか・・・」


 呟くように、その想いは声に出されてしまっていた。

 澄んだ瞳が、奈落の絶望の色で染められていく。もう涙も流れない。流したくても──流れてはくれなかった。

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