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魔性の瞳  作者: 冬泉
第二章「惑う夢」
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魔性の瞳-69◆「想巡」

■ヴェロンディ連合王国/王家の森(湖)


「哀しくとも──素敵な、思い出ですね・・・」


 奇妙な感じだった。何か、心の隅に引っかかっている、そんな感じ。何を拘るというのだろうか? レムリアは、自分でも自分の反応を意外に思った。


「あの、不躾にお尋ねするようですけれども──その方と、再び巡り会いたいと、思われますか?」


 何で、こんな事を聞くのだろうか・・・

 心の中では、結論の出ない“問い”が渦巻いていた。判らなければ、黙ればよい──しかし、そんな考えを何処かで拒否している自分もいた。


“何で・・・なのかしら・・・”


 それが判れば、苦悩することもない。

 漠然とした不安を心に抱いたまま──レムリアは相手の答えを待った。


               ☆  ☆  ☆


「・・・それは、難しい質問だな。」


 私は彼女レムリアの問いに少し考え込む。


「・・・私の中に、『彼女に会いたい』という“想い”がまったくないと言えば、それはたぶん“嘘”になるだろう。・・・だが、今となっては、私の中に必ずしも彼女に会って、『これだけは伝えたい』というような特別な“想い”が残っているわけではないということも、また事実だと言わざるを得まいな・・・。

 しかし、それでも私は、たぶん今でも彼女には『幸せになってほしい』と思っている。・・・あるいは、私は彼女が幸せになったところを、自分の目で確かめることができないままになってしまったのが“心残り”なのかもしれぬが、な・・・」


「・・・とはいえ、まだ旅に出て間もなかった“あの頃”ならいざ知らず、今の私には、『どうしてもせねばならぬ』と信じることがあり、そして、『是が非でも辿りつきたい』場所もある・・・。

 たとえ・・・、彼女に再会できたとしても、今の私には、゛女のもとにとどまることはできまいし、彼女が私と一緒に来たとしても、幸せになれるとは思えない・・・。ゆえに・・・、私は彼女と一緒にはいられない・・・。いや・・・、彼女は私と一緒にいるべきではない・・・。

 ・・・そう思っている。」


 ふと、いつになく饒舌になっている自分に気づいて苦笑する。


「・・・なぜだろう。・・・君に聞かれると、ずっと長いこと誰にも言えぬまま、心の奥底にしまってあったはずの“想い”を、こうも素直に口にすることができる・・・」


 なかば無意識のうちに、そんな“想い”までが口に出る。


「あ・・・。いや・・・、退屈な話でなかったのなら、いいのだが・・・」

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