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魔性の瞳  作者: 冬泉
プロローグ
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魔性の瞳-06◆「許諾」

■知恵の塔/居室


「・・・わかりました。本人が了解しているのならば、その様に取りはからいましょう。はい、それでは。」


 部屋に置かれた姿見の鏡は、再び正面に立った若い女性の姿を映しだしていた。真理査は、龍の盾との魔法交信を打ち切ると、ほっと溜息をついた。


「ここ、何年も無かったことですのに・・・これは、運命の女神の織りなすタペストリーに新しい模様の波が起こり始めている証なのでしょうか? それとも・・・」


 真理査の目にも、未来は漠とした靄の中にあってはっきりと見通すことが叶わなかった。



 真理査――『灰の予言者』の双子の娘の一人。預言者であった父の知恵を受け継ぎ、その『言葉』を話す者。今では、真理査だけが『夢見』を鍛えることが可能であった。『夢見』。現在・過去・未来を繋ぐ『言葉』を預かる者。闇の陣営に於ける創世神を相手に回す“光の陣営”にあって、最も頼りになる知恵を持つ者。


 ・・・だが、『夢見』となる為には、特異な資質を持ち合わせていなければならず、そしてその資質を持っていたとしても、『言葉』を預かるために“心を調える”途中で精神が崩壊してしまう危険性が非常に高い。今、この世の中に『夢見』たるものは二人のみ。西方封土ウェストヘヴン時代の『夢見十二聖』を思うと、現在の数は危機的に少なかった。


「・・・だからと言って、安易に『夢見』の責を負わす者を増やすことは、賛成できません。」


 真理査は、答えのない鏡に向かって呟いた。


「『夢見』となることは、難しくはない。それは、資質の問題だから。でも・・・『夢見』で在り続けることは、生易しいことではない。知り得るに叶わず、能わざるに求める・・・自分ではどうにもならないジレンマに、少しずつ心が壊れていく。正気と狂気の狭間にあって、それでも自分をしっかり確立し続けなければならない・・・そして、その責は自分が死ぬまで、つきまとう・・・」


「・・・そのような苦難を、あなたがたはその少女に望むの? 本当に、その少女はそんな行き方を欲するの?」


 だが、真理査には判っていた。例え少女が望まなくても、時代が少女の力を要求してしまうことを。否応なしに、世が変動する渦中に巻き込まれてしまうことを。


「でも・・・何も手出しは出来ない・・・起きるべき事柄に、起こすべき者を、導くだけ・・・」


 自分もまた『夢見』である真理査には、他に選択肢はなかった。今はただ、毅然として起こるべき事態に対処するだけだった。そして、それで幾ら己の心を痛めようとも・・・。




 真理査は今代只一人、“夢見”を鍛えることが出来るメンター(指導者)です。繊細で心優しい女性ですが、非常に強い心の持ち主でもあります。

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