魔性の瞳-51◆「謝罪」
■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/宮殿/レムリアの居室
「あっ・・・」
口元を抑えたアンヌの表情がみるみる紅潮する。
「わたしの勘違い故に、大変失礼を申し上げました。平にご容赦をお願い申し上げます。」
スカートの端を摘むと、アンヌは深々と頭を垂れた。
「申し遅れました。わたしはアンヌと申します。レムリア様付きの侍女でございます。レムリア様とは、レムリア様がこの都にお見えになられてから、ずっとお仕えしております。」
顔を伏せたまま、言葉を続ける。
躯が小刻みに震えているのは、自分の失言の大きさに恐れ戦いている為か・・・。
「レムリア様に対する風評についてはご勘弁をお願い致します。
でも・・・わたしはレムリア様をとても好ましく思っております。
わたしや、他の使用人にも大変丁寧に、親切に接して頂いております。
とても・・・とても良い主人です。」
アンヌの必死の言葉に、エリアドはゆっくりと頷いた。
「どうやら、そのようだね。いろいろと参考になったよ。・・・ありがとう。」
その表情に笑みを浮かべたまま、エリアドはアンヌの言葉に軽く相槌を打った。
「では、レムリア殿に『馬を連れて、館の前で待っている。』と伝えてくれ。」
そう言うと、エリアドはゆっくりと扉を開け、廊下に出た。
扉が再び静かに閉まるまで、アンヌは深く頭を垂れたままだった。