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魔性の瞳  作者: 冬泉
第二章「惑う夢」
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魔性の瞳-42◆「微笑」


レムリアに朝食に招待されたエリアドだが・・・

■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/宮殿/レムリアの居室


「・・・お待たせして申し訳ない。・・・御気分は、いかがか?」


 月並みな挨拶。朝の光の下で見るレムリアの顔に、昨夜のような苦悩の表情は見てとれない。

 むろん、だからと言って、彼女の苦悩が消えてなくなったわけではあるまいが・・・。


 彼女は、舞踏会でのドレスとはうって変わって、動き安そうな実用的な服を身につけている。

 口さがない者には、女性らしくないと言われそうな服だったが、私の目から見ると、ドレスよりむしろ彼女には似合っているようにも思えるほどだ。

 そして、さほど化粧しているとも思えぬ薄い化粧。あるいは、女性であることを求められるのは、あまり好きではないのかもしれぬ。

 彼女の顔を見ながら、私はふと、そんなことを思う。


               ☆  ☆  ☆


「おはようございます、ムーンシャドウさま。」


 レムリアは立ち上がってエリアドを笑顔で迎えた。


「お客さまをお迎えしているのですもの。非常に楽しい気分ですわ。さぁ、お座りになって下さいませ」


 自ら椅子を引いて、エリアドを座らせる。自分も隣の椅子に腰掛けると、嬉しそうに華やかな笑みを浮かべる。薔薇色に頬が紅潮し、黒い瞳が輝いている。


「お紅茶に致しますか? それとも、珈琲ですか?」


 一つずつ、エリアドの好みを確認するように丁寧に聞いてゆく。

 自分は紅茶を選ぶと、後ろに控えていたアンヌに用意を、と声を掛ける。

 はい、と元気良く答えると、アンヌはまずはエリアドに、そしてその後レムリアに紅茶を注ぐ。

 銀のポットをトレイに置くと、銀の蓋をした皿から蓋を取って、二人の前に出す。ハムエッグにサラダ、それから種なしのパンだ。


「どうぞ、召し上がれ。」


 エリアドに勧めると、自分もパンを取った。朝食はとても美味しくできていた。ハムエッグの半熟度も絶妙ながら、サラダも冬場とは思えないほどの鮮度だ。食材は、特別に王室用に作らせているのだろう。


「天気を零すのは不作法ですけれども・・・わたくしは、このような天気は好きになれませんわ。」


 少し眉を寄せながらレムリアは小首を傾げて言った。


「曇天や雨天は気が滅入る感じがいたしますの。」


 花のような笑顔、と言うのは斯様な笑みを言うのであろうか。そんな、華やかな笑顔をレムリアは浮かべていた。

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