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魔性の瞳  作者: 冬泉
第二章「惑う夢」
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魔性の瞳-41◆「待望」


目覚めたレムリアは、エリアドを想って行動する・・・

■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/宮殿/レムリアの寝室→居室


 一夜明けると、暗い曇天が広がっていた。シェンドルの冬には特有の陰鬱な天候だ。

 何時も早くに目覚めるレムリアだったが、この日は珍しく、表が大分明るくなってから目を覚ました。

 ゆっくりとベットから起きると、ちょっと考えてから、おもむろに呼び鈴を鳴らした。

 すぐに扉がノックされると、小柄なメイドが現れる。


「お呼びになりましたか?」

「おはよう、アンヌ。ねぇ、ムーンシャドウさまに伝言を届けてくれる?」

「はい、もちろんです。レムリアさま。」

「まだ朝食を召し上がっていなければ、わたくしとご一緒しませんかと、そう伝えて欲しいの。」

「はい。ところで、今朝の朝食はどちらで取られますか?」

「わたくしの居間に運んでくれる?」

「わかりました。では、さっそく行って参ります。」

「お願いね。」


 アンヌが出ていくと、ワードローブを開いて幾つかの服を手に取った。

 少し迷った後、結局一人で着付けが出来る軽い白の上下を選んだ。その上に、薄い蒼の上着を羽織る。

 髪を肩口で切りそろえているので、胸のふくらみがなければ年若い青年騎士にも間違われそうな装いだ。

 こんな格好も、口さがない噂話の的にされている事は知っていたが、レムリア自身は特に頓着していなかった。


“動きやすい方がいい”


 自分は、女性として見られる事が好きではないのかも知れない──そう思う事があった。

 女性としての魅力が無い訳ではない。漆黒の髪に、抜ける様に白い肌。端正な顔に輝く双眸。誰にも、非常に魅力的に見えるのだろう。そう思っていないのは、本人だけなのかも知れないが。


「レムリアさま。」


 物思いにふけっていると、アンヌが戻ってきた。


「伝えて参りました。いらっしゃるとの事です。」

「そう。それじゃあ、用意をお願いね。」

「はい。ところで、レムリアさま、」

「なぁに?」

「またその様なお召し物を!」


 毎度恒例のアンヌのお説教が始まった。

 困った表情を浮かべると、人差し指をたててお説教モードのアンヌに弁解する様に言う。


「アンヌに着付けを手伝って貰う手数を掛けたくなかったから・・・」

「お手伝いする為にわたしはいるんです。」

「身軽な方が、わたしは好きだし・・・」

「好き嫌いの問題じゃありません。」

「・・・似合わないし・・・」

「レムリアさまに合わせて、全部仕立てられたドレスですよ。」


 いよいよ逃げ道が無くなってきた。


「いいの。これが一番着易くて、動き易いから。」


 最後は開き直る。

 それに対して、アンヌが大袈裟に溜息を付いてみせる。いつものパターンだ。


「はぁ・・・とってもお似合いですのに。」

「そんなことを言うのは、アンヌだけよ。」

「そうお思いになっているのはレムリアさまだけですわ。」


 これで、とりあえず決着。

 いや、結論は出ていないのだが、毎回こんなたわいもない会話を交わす。習慣の様なものなのだろう。


「わたしは、ムーンシャドウさまを居間でお待ちします。」

「はい。わたしは、急いで朝食の用意をしますね。」

「ん、お願い。」


 アンヌが出ていくと、レムリアは隣室への扉を開けた。

 寝室の隣はレムリアの居間となっていた。部屋の奥の暖炉には既に火が燃えており、広い部屋は気持ちよく暖まっていた。

 部屋に入って扉を閉めると、窓際に歩み寄って外の庭を眺める。


『ガラガラガラ』


 やがて、朝食を二人分乗せた台車を押してたアンヌが扉を開けて入ってくる。

 窓際のテーブルを手早く飾り付けると、90度の角度を付けて扇状に椅子を二脚置く。


「レムリアさま、用意が調いました。」

「ありがとう、アンヌ。」


 レムリアは窓から離れると、飾り付けられたテ−ブルに付くと来訪者を待った。

本編から、「惑う夢編」の開始です。新たな登場人物達も加わり、物語は徐々に佳境へと入っていきます。ご期待下さい。

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