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魔性の瞳  作者: 冬泉
第一章「舞踏会」
35/192

魔性の瞳-34◆「慟哭」

■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/宮殿/奥の部屋


「・・・では、戯れまでにお聞き下さいませ。」


 溜息を漏らす様に言うと、レムリアは語り始めた。


「夢を・・・観ています。心が暖まる、温もりのある夢を・・・。

 それは、決して現実となることがない。だから、安心して観ていられるのです。

 夢が、夢で終わることを哀しく想うこともありますけれども、自分に夢観る自由が残されているのならば、それだけで良しとしよう──そう想うのです」


 両手を握りしめて項垂れる。


「“魔性の瞳”──わたくしの瞳の事はご存じでしょう?

 人が覗き込んではならない、“原罪の証”。本来なら、この瞳が為にこの国では即座に断罪されていたことでしょう。

 運良く−−などど言ってしまっても良いのかわかりませんが──わたくしは王家に繋がる者として生を受けました。王陛下と王妃殿下は優しくも、こんなわたくしでも許してくださっています。けれども・・・」


 声がだんだんと高まっていく。


「・・・けれども、この国を覆うであろう災厄が、黷オみと暗闇に覆われている未来が、わたくしには観えてしまっているのです! 美しき都が戦火の中に崩壊し、国土の大半が蹂躙され、多くの人が命を落とし・・・」


 どうしようもなく躯が震えている。握りしめた両手は、血の色が失せて白くなるほどだった。


「・・・これは、狂気に生きるわたくしが、望んで観ている夢が為の夢なのでしょう。

 そう・・・人で有らざるわたくしが、人の中で生きていることの・・・

 これはわたくしが背負った“業”かも・・・しれません」


 不思議と、涙は流れなかった。いや──流す涙など、とうに枯渇しているのだろう。

 静かに、そして深い絶望を持って、己の運命に流されているだけ。そう言っても過言ではなかった。



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