表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔性の瞳  作者: 冬泉
第一章「舞踏会」
31/192

魔性の瞳-30◆「黄昏」

■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/庭園


「待たれよ。」


 逡巡していた騎士達が、それでも権威を優先させようとエリアドに向き直った時、低い制止の声が掛かった。

 深い藍色の衣装を身にまとい、金色の仮面を付けた背の高い偉丈夫が、生け垣の後ろから進み出た。


「一部始終、見させて貰った。」


 静かな口調だが、騎士達は強いプレッシャーを感じた様だ。二、三歩後ろに下がってしまう。


「姫君は、部屋で休まれている。それ故に、騒ぎを起こす理由は何も無い。騎士達よ。そこな貴族を館の客室へお連れして休息させてあげよ。」


 明快な解決策を得て、騎士達はきびきびと動き出した。部下が両側からエルド男爵を抱え上げる。隊長はその偉丈夫に深く礼をすると、部下を促して本館に向かって立ち去った。


「さて。」


 金色の仮面は笑みを浮かべた様だった。


「男爵に教訓を垂れた剣士のお名前をお尋ねしても宜しいか。斯様な装い故、我が名を名乗ることは出来ぬがな。」


「・・・私の名を知らぬ、と?」


 私は相手を揶揄するかのように、唇の端に微かな笑みを浮かべる。


「・・・もっとも、私にとって、そのようなことはどちらでもいいことだ。権威を振り翳すだけの見苦しい貴族に、そうした権威にさえ忠実に動かざるを得ない騎士たち・・・。ある意味、この国の現状をよく表わしていると言えなくもないのだろうが、いずれにせよ、余計な争いをしなくて済んだのは、貴殿の力添えによるものだということは間違いないらしい。


 ・・・そのうえ、どうやら貴殿は、かの姫君のことも御存知のようだ。私としては、貴殿の名が聞けぬのは至極残念だが、だからと言って、勿体ぶって隠すほどの名でもない。御所望とあらば、お教えしよう。


 我が名はエリアド。月影のエリアド(エリアド・ムーンシャドウ)。星々と放浪者のセレスティアンの追随者にして、“阿修羅”の使い手。


 ・・・さて、金色の仮面の御方。それでは、私は貴殿のことをなんとお呼びすればよろしいのかな。」


 私は静かにそう尋ねた。



 

 本編も漸く三十話目に達しました。幸か不幸か(笑)、物語はまだまだ続きます。今後とも、お読み頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ