表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔性の瞳  作者: 冬泉
プロローグ
3/192

魔性の瞳-02◆「愁眉」

■ヴェルボボンク子爵領/子爵館/庭園


「あれから一年・・・。私の中で、何が変わっただろう・・・」


 意識せずに、レムリアは声に出していた。誰も聞いてはいない。誰も聞くはずがない。早朝の庭園には、レムリア以外の誰の姿もなかった。


「私は、自分の何を変えられたのだろう・・・」


 これまで、繰り返してきた問いがまた心に響く。


「何も変わってなんかいない。何も、忘れてはいない・・・」


 習慣にもなってしまった自問を繰り返す。心に浮かぶ問いかけに、自然と想いが言葉となって零れてくる。



 ──わだかまっているの?



「・・・えぇ。許したいのだけど・・・」



 ──忘れられないの?



「・・・えぇ。忘れたいけれど・・・」



 ──どうしたいの?



「・・・判らない・・・」



 子爵や子爵の友であるラルフ、テッドは、レムリアにとても優しく、良くしてくれる。ヴェルボボンク子爵領の誰も、レムリアを悪し様に言うものはいない。


「・・・」


 それでも、レムリアは孤独だった。誰にも理解されない。誰にも理解できない。受け入れる人も、受け入れられる人も・・・誰もいない。


「私は・・・おかしいの? 私だけ、普通の人とは違うの?」


 堂々巡りの考えが、また出口の見えない闇の中で行き惑う。


 折からの涼風が、庭園に漂う朝靄を吹き払っていく。幻想的な庭園を包むベールが消えてゆく。もうすぐ、館の人たちが起きだしてくるだろう。部屋にいないと、お付きの女官が慌てて自分を捜すだろう。


 レムリアは溜息をつくと、踵を返して部屋に歩いて行く。そして、また新たな長い一日が始まる・・・。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ