魔性の瞳-28◆「讒言」
■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/庭園
「どうされましたか!」
生け垣の合間から、完全武装の警備の騎士二騎が現れた。蒼白な顔をしながら、エルド男爵が指さす方向を振り向くと、強烈な凍気を放つエリアドを目にする。片方の騎士が叫んだ。
「貴様、何者だ! この方を、王国の貴族と知っての狼藉か!」
騎士達はエルド男爵を背後に庇うと、一斉に長剣を抜刀する。
「私が酔い覚ましに奥庭を散策していたら、コヤツがいきなり襲いかかってきたのだ! 騎士たちよ、この不届き者を取り押さえてくれ!」
心底恐怖に怯えたように、エルド男爵はエリアドを指さすとヒステリックに叫んだ。
「フッ・・・。みごとな猿芝居だ。」
私は冷やかに呟く。わざとらしく足元に落ちている手袋を拾い、手に戻す。
「・・・我が名はエリアド。月影のエリアド。星々と放浪者の神の追随者にして、“阿修羅”の使い手。アーサー新王陛下を“奈落の淵”より救出した“功”により、この宴に招かれた。」
少しだけ間を置く。こちらが何者かを気づかせるために。
そして、私はこう続ける。
「・・・もし私がその男を殺すつもりなら、その男はもう死んでいる。そして・・・。私には、その男は死んでいるようには見えないが、どうかしたのか。」
それは、淡々とした口調。
少しの気負いも、また躊躇いもない、単なる事実を一方的に告げる、ただそれだけの言葉。
そして、私は振り向いてそこに倒れているはずのレムリアの方を見た。
だが、レムリアが横たわっていた場所には、自分が掛けたクロークが残されているばかりだった・・・。
何時もお読み頂き、有り難うございます。王国の有力者エルド男爵を敵に回してしまったエリアドはどうなるのでしょうか。また、消えてしまったレムリアの運命は? 今後ともご期待下さい。