魔性の瞳-24◆「危急」
■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/庭園
抱き上げた柔らかい躯は非常に軽かった。男は無言のまま庭園に入ると、奥の一角を目指した。高い生け垣の角を何回か曲がると、母屋からは視界が通らなくなる。もとより、誰もいない庭園だ。人目を避ける、何の意味があるのだろうか。
暫し歩くと、周りを円形に生け垣に囲まれた場所に着く。静かにしていれば、誰かが近くまで来ても気が付かれないところだ。
『パサッ』
冬でも青い芝生に娘を横たえると、徐に上衣を脱ぎ捨てた。カラーを緩めると、娘の脇に跪いた。透き通るような美しさだった。華奢な肢体に小さな顔。細い、柔らかい黒髪・・・神がつくりたもうた造形美の極地だった。
凍るような冬の地面に横たわる娘は、脚や腕が青くなってきた。睨め付けるように娘を見ていたが、ゆっくりとドレスの胸元に手を伸ばす。
『ビリッ』
絹を引き裂く音がした。肩口から胸元への、真っ白い肌となだらかな膨らみが露わになる。溜息を付くように息を吸うと、裂けたドレスに両手をかけ、一気に左右に引き裂いた。
「ウククク・・・」
耳障りな、甲高い笑い声が漏れる。
「悪いのは、キミだよ・・・悪いのは、キミだよ・・・」
虚けのように繰り返し呟きながらも、男は娘を辱める手を緩めない。無惨にもはだけられた白い肌は、冬の厳しい寒気に晒されて見る間に青ざめていく。
『ビリビリッ』
狂人の力なのか? 残ったドレスを常人離れした力で引き裂くと、もはや華奢な娘の白い肢体を隠すものは何も無くなった。神聖にさえも思えるその麗容な躯を目の当たりにしながらも、男の目は欲望と狂気とにギラギラ輝いた。
「ようやく・・・ようやく、この時がきた・・・」
興奮のあまりか、口元からつーっと涎が流れ落ちる。意にも介さず、目の前に横たわる柔らかな躯を睨め付けながら、男は呟く。
「キミが・・・キミが、拒むからいけないのだ!」
最後は叫ぶように声が高くなると、男は一気に娘に覆い被さった。