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魔性の瞳  作者: 冬泉
第一章「舞踏会」
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魔性の瞳-22◆「窮地」

■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/王宮→庭園


 躯が熱かった。

 どうしようもない激情に駆られて、レムリアは足音高く回廊を歩いていた。

 それは、自分の克己心の無さに対する自己嫌悪なのか、相手の態度に対する憤りなのか――己が思考の混乱が故に、レムリアにはよく判らなかった。


 とにかく、その場を離れて自分の感情を静めたかった。ヒソヒソと噂話が飛び交う大広間を飛び出ると、庭園に出る廊下を足音高く歩いていく。外気にあたれば、少しは気分が違うだろう。


『どん!!』

「あっ・・・」


 レムリアが王宮の庭へ出ようとした時、外から館に入ってこようとした人物にぶつかった。


「ごめんなさい、急いでいましたので。外へ出たいのですが、そこをどいて下さる?」


 感情が高ぶっているせいか、ついつい口調がきつくなる。

 だが何故か、相手はレムリアの行く手を遮ったまま微動だにしない。


「あの、外に出たいのですけれども。」


 はっきり聞こえなかったのか? そう思ってもう一度言ってみる。

 しかし、相手は尚も無言である。

 普段は、忍耐強く相手の再考を促すのだが、今日のレムリアは虫の居所が悪かった。

 ため息をつくと、キッと相手を睨み付けて言った。


「子供じみた真似はお止めなさい。わたくしが誰だか知っての上での行為ですか?」


 相手は、尚も無言を貫き通している。


「わたくしを怒らせると、後悔しますわよ。」


 危険な程に、レムリアの語尾が上がってくる。

 怒りのエナジーが躯に満ちて行く。


「・・・仕方がありません。後悔、しないでくださいね。」


 心の中の“力の扉”を解錠する。

 “夢見の修練”を積んだ者の真の力がどれほどのものか、見せてあげよう。

 ゆっくりとその瞳を閉じる。 

 “それ”を静める努力を放棄する。

 レムリアの中で、“何か”が急速に膨れあがっていく。


 そして。


「!!!」


 カッと見開いたその瞳は深紅の輝きを放っていた。

 辺りの空間が歪曲し、存在と非存在の境界線がぼやけ始める。だが。


『キュインッ』


 一瞬何かが光ったかと思うと、躯全体に痺れるような激痛が走った。

 目の前が真っ暗になる。

 何が起こったのだろう? 低い笑い声が聞こえる。


「・・・あ、なたは・・・」


 漸くそれだけ口にするが、そのままレムリアの意識は奈落へと落ちて行った・・・。



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