魔性の瞳-188◆「思惑」
■ヴェロンディ連合王国/王都/大聖堂
「・・・あるいは、ハリー殿が感じたように、“彼ら”は君のことを知るためにここに来たのかもしれぬ。そして、もしそうだとすれば、『君が“夢見”だから』というのは、おそらく“彼ら”がここを訪れた一つの理由であるのだろう。」
エリアドはゆっくりと口を開く。
「・・・だが、“それだけ”だろうか?」
少しだけ間をあけてこう続ける。
「・・・確証があるわけではないが、私はけしてそれだけではないような気がしてならぬ。もしただ単に君のことが知りたいだけであれば、過去にそうできる機会はいくらもあったはずだ。とすれば、何か“彼ら”が“今”という時を選んだ理由があるような気がしてならぬ。」
そこまで言って、私はふと一つの可能性に気づいた。そう、私がレムリアと出会ったことが、結果的に彼らの介入を招いた可能性があると考えるのは、いささか傲慢が過ぎるだろうか。むろん、私と彼女の出会いが良き結果を招くのか、あるいは悪しき結果を招くのかはわからない。だが、私と彼女が出会ったことによって、何らかの変化がもたらされるであろうことは、おそらく間違いあるまい。
・・・運命の女神よ。これは貴女の意思だとでもいうのか。
エリアドは、己に問いかけるように瞑目する。
・・・いや。もし仮に、私と彼女の出会いが運命の女神に意図されたものであったとしても、私の中にこの出会いを後悔する理由は何一つない。ならば、少なくともそのことについて迷う必要はない。
「・・・あの“ラ・ル”という男にせよ、“黄昏の三騎士”と名乗った者たちにせよ、並みの者ではないことは明らかだ。どうやら我らは、我らが考えている以上に厄介な状況に陥っていると考えざるを得ぬようだ。」
・・・とすれば、我らはこれから如何に為すべきか。
それは、けして容易には答えの出せそうにない問いだった。