魔性の瞳-187◆「目的」
■ヴェロンディ連合王国/王都/大聖堂
「強大な力を持つ者達です。世界のバランスの為にも、無為に動き事は出来ないでしょう」
独り言の様なエリアドの呟きに返す様に、淡々とした口調でレムリアが言う。
「彼らがここに顕れたと言う事は即ち――ここに来る必要が有ったと言う事。そして、また立ち去ったと言う事は・・・」
「彼らが、その目的とする事を果たした、と言う事ですね」
やれやれ、厄介事が倍増ですよ、とハリーがレムリアの言葉を引き取って言うと、苦笑いを浮かべた表情を一転引き締める。
「それは、取りも直さず姫様――貴女を知る為、と私には思えるのです」
脅かすつもりは有りませんが、と言葉を結ぶ。
少し硬い表情のレムリアは、静かに話し出した。
「・・・恐らく、ハリーの予想は正しいでしょう。わたしの心は、夢見にしてはまだ弱い――夢見として振るえる力と、心を制御する力は全く均衡していません」
「姫君・・・」
「いいのです、セイ。わたしの心の弱さが闇を呼び込む危険性を孕むのならば――わたしは、この都から去らねば成りません」
決然とした表情を浮かべて、レムリアは顔を上げた。