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魔性の瞳-185◆「戦後」
■ヴェロンディ連合王国/王都/大聖堂
「・・・完敗、だな」
ふぅ、と息を吐いてハリーが言う。
疲れたような表情で、セイも頷く。
「認めたくはないが――これは見逃して貰った、と言う事なのだろうな・・・」
「あぁ、違いない。これで“ご挨拶”とは痛み入る。こっちは持てる全力だったっていうのにな。その気になれば、我々は赤子の手を捻るよりも簡単に排除されただろうな」
「是非も無い。」
肩を竦めるハリーにセイは渋面を作った。
「不本意ではあるでしょうけれども・・・」
労る様にレムリアが二人に言う。
「生きてさえいれば、次の機会があります。今は手が届かなくとも、何れはその高みにまで達する事も可能でしょう。理由はどうあれ、生き残ったことをこそ喜びましょう」
「・・・そうですね。姫君の言う通りでしょう。素直に認めるには、我々は捻くれ過ぎていますがね」
「お前と一緒にするな」
早くも調子を取り戻したハリーがセイに笑いかける。
何時もの通り、セイは憮然として対応する。
そんな二人の“お約束”に、周囲を固める親衛王騎士たちの厳しい表情も緩んだ。