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魔性の瞳  作者: 冬泉
第五章「闇の舞」
175/192

魔性の瞳-174◆「氷解」

■ヴェロンディ連合王国/王都/大聖堂→回廊


 無人の回廊に二組の足音が響いている。一つは、柔らかく、一つは堅く──レムリアとセイは、急ぎ王宮の謁見の間を目指して先を急いでいた。


 セイの心には、先程からちらちらと揺れる疑問が渦巻いていた。あの者──あの者は、姫様は一体どう思っているのだろうか? 兎に角、聞いてみなければ答えも出ない。気が進まない乍らも、セイは一抹の不安をも払うべく行動を起こした。


「姫様、あの・・・」


 セイにしては珍しく、歯切れの悪い切り出しだ。


「姫様とあの者は、如何なるご関係でしょうか?」

「あの者? エリアド様のこと?」

「はい。」


 斯様な事態で、謁見の間に向かっている状態で、おかしな話をしている、そんな感じはあったが。セイの心配も理解できるレムリアは、慎重に言葉を探した。


「わたくしの独り善がりかも知れませんが…互いに心を開ける方だと、思っています」

「お互いに理解できると?」

「理解、では無いかも知れません。同情でも、お互いに支え合う、でもありません」

「では、どの様に?」


 レムリアの言葉に、セイは些か困惑した。そんなセイに、レムリアは柔らかい笑みを浮かべて言った。


「自分をさらけ出しても良い、そう思える方、ですね」

「・・・」


 自分をさらけ出す──その言葉が躯に染み込むにつれ、セイは目を見開いた。心を開く? 斯くも排他的な姫様が・・・心を開く・・・?


“それが本当で有れば・・・”


「人は、出来るだけ自分を綺麗に見せようとする。でも、光と闇の申し子である人は、その内面に葛藤と矛盾を抱え込んでいる。どんなに表面上取り繕っても、内面は誰にも判らない・・・」

「・・・その判らない、いえ判らせたくない内面を、姫様はあの者が知ることを良しとすると・・・」

「そうですね・・・」


 レムリアの心の中でも、葛藤が残っていないと言えば嘘になる。だが、レムリアは表層に浮かび上がったものよりも、心の奥が感じていることを信じようとしていた。


「・・・相手に自分を晒すのは、自分を捨ててしまう様な事にも思えます。けれども、わたくしのすべてを知って貰いたい、全てを知って、その上でどうされるかを決めて貰いたい──そう想うのです」


 わたくしの、我が儘かも知れませんが、とレムリアは結んだ。




 大変お待たせしております。魔性の174話をお送りします。年度末でどうにも多忙で、4月一杯更新不順きち続きます。恐縮ですが、気長にお待ち頂ければ、と思います。

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