魔性の瞳-171◆「対応」
■ヴェロンディ連合王国/王都/謁見の間
「なんと・・・強大な闇の使い手か」
王宮、謁見の間。アクティウムと契那は謁見の間に赴き、ヴェロンディ連合王国国王であるアーサー・アートリムに今までの状況を奏上していた。
「契那たちが遭遇した相手──陛下、あれはもしや闇そのものかも知れませぬ」
「闇そのもの、か・・・」
幾多の死線を潜ってきた、さしものヴェロンディ国王もその表情を暗くした。闇そのもの、とまで形容される存在など、“彼の者”以外には考えられない。
「やっかいなことになったな、アクティウム」
「御意。北の国境線への攻撃も想定して、最大限の警戒が必要でしょう」
「あの・・・」
躊躇いがちに、契那が口を開いた。
「何かな、契那」
「・・・はい。あれだけの闇の使い手です。直接、この都を突く事も有り得ます。大聖堂の結界さえ破れば都の防備は無いも同然です」
「ふむ。だが、先程の話では、セイ、ハリーとそなたの三人で掛かっても、相手を阻止できなかったのではないのか?」
「仰る通りです。相手が都を攻撃するならば、確実に大聖堂の結界を狙うでしょう。その弱点が、わたしたちにとって最大の利点ともなります」
決然とした表情を浮かべると、契那ははっきりと言い切った。
「待ち構えるのか?」
「背水の陣ですけれども、確実に待ち受けられます」
契那の言葉に、国王アーサーはそうだな、と頷いた。
「皆には負担を掛ける」
済まない、と頭を下げた国王に、契那は慌てた。
「陛下、その様なことは為されないで下さい。国と民を守ること──それが、私たちの務めなのですから」
「契那の言う通りですぞ、陛下。我ら戦士は斯様な事態の為におるのです。お気になさらぬ様に」
契那とアクティウムの言葉を聞き、ヴェロンディ国王アーサー・アートリムは、暫し愁眉を解いた。
一部、欠落していましたので、追加しました。[31.12.2009]