魔性の瞳-163◆「奮起」
■ヴェロンディ連合王国/王都/大聖堂
「心得た」
短く言うと、セイは聖剣ノルンを支えに立ち上がった。瞳を細めて相手を睨み付ける。
「エリアド、援護する。存分にやるがよい」
きっぱりと言い切ったセイは、清々しい表情を浮かべていた。
☆ ☆ ☆
契那は虚脱感と戦いながらも、なんとか立ち上がった。三度に渡る反発結界の使用による疲労が、全身を覆っている。
「しっかりしなさい・・・。今・・・やらないで、いつやるというのですか」
自分を叱咤すると、歯を食いしばって躰に残る最後の力を振り絞った。
「エリアド様・・・私の力を送ります・・・」
☆ ☆ ☆
ハリーは首を振って気をしっかり保つと、ゆっくりと立ち上がった。守護の剣、ヴァンガードを握りしめる手が震えているのを見て、苦笑する。
「似合わないねぇ、こんなのは。と言う事で、早いトコかっこ悪いのは終わらせないとね」
周囲を見ると、セイも、契那も立ち上がっている。エリアドの前には、レムリアが目映い輝きを放つタインを構え、真っ向からラ・ルに向き合っている。
「エリアド殿。援護するので、頼んだよ」
☆ ☆ ☆
レムリアは、タインを手に最後の力を振るおうとしていた。すんでの所で、エリアドの声を聞くと、暴走する力を押さえようとする。
『この力を、皆さんを守る為に使わなければ・・・』
精神が焼き切れようとする中で、レムリアはありったけの気力と振り絞った。
お待たせ致しました。「魔性」第百六十三話です。起死回生はなるのか。それは、次回をお楽しみに。