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魔性の瞳-160◆「闇句」
■ヴェロンディ連合王国/王都/大聖堂
低く笑うと、ラ・ルは無造作に大剣を一振りした。ゴゥ、と地響きが鈍く轟き、大聖堂を抱いた空中島ががぐらりと揺れる。
「無駄だ、と言っているのが判らぬとはな。」
人は何処までも愚昧なものだ、と結ぶ。阿修羅が古の聖句を受けて輝く中で、その浅い嘲笑は変わらない。
「古の聖句か。その本質を知らずとも、口端に上らせる程短慮なるか──」
闇の大剣が、宙に軌跡を描く。
「闇より出し(いでし)、
影より深き。
時嶽の彼方、
闇称聞こゆる。」
流れる様な闇句に、目映く輝かんばかりだった阿修羅の刀身が急速に曇っていく。
「ククク・・・闇に属するモノは、闇に還れ。自然な流れであろう? 為す術も無く、己がモノが闇に落ちるのを観るがよい」
「魔性」の第百六十話をお送りします。「始まりの聖句」に対する「終末の闇句」が発動します。既に、セイ、ハリー、契那が倒れた後、エリアドとレムリアの二人でどう対処するのでしょうか?