魔性の瞳-156◆「大差」
■ヴェロンディ連合王国/王都/大聖堂
「“闇の聖剣”を呼ぶか・・・」
エリアドの行動を見守りながらも、ククク、とさも面白そうな笑みを浮かべるラ・ル。
「呼ぶがいい。そして貴公がその“代”(しろ)を知るのであればな」
片手で軽々と持った長大な両手剣が、禍々しい波動を放つ。それだけで――歴戦の勇士であるセイもハリーも、脚が一歩も前に出なくなる。
☆ ☆ ☆
“なんて力だ・・・”
信じられない程の重圧は、それこそ“北の魔王”その者と対峙しているかの様だった。いや、幾多の修羅場を潜ったセイは思った。それ以上かもしれない、と。
“たとえそうであったとしても・・・私は負けられない”
気組みで負けては是非もない――セイは自分の心と精神を研ぎ澄ませた。
☆ ☆ ☆
“ホントかよ・・・”
一方、ハリーも自分を叱咤していた。何時もの余裕が、まるで感じられない。妖魔を戦っている時すら、こんな感情を持たなかった。それは、恐怖。底知れぬ相手にぶつかった時に感じる絶望。
“何をびびっているんだ、オレは?”
セイや契那が頑張っているのに――エリアドや、レムリア姫が危険を顧みずに、相手に立ち向かっているのに。
“みっともない所、見せられないだろ!”
奥歯を噛み締めながら、ハリーは拳が白くなる程、愛剣ヴァンガードの柄を握りしめた。
☆ ☆ ☆
“信じられない程の、力です・・・”
契那は、必死に意志の力を集めていた。必ず、また自分の力が必要とされる。何時でも、魔導の力を解放できる様、契那は必死に心を鎮めた。