156/192
魔性の瞳-155◆「召喚」
■ヴェロンディ連合王国/王都/大聖堂
「ラ・ル殿・・・だったか。・・・どうやら、貴殿は相当、腕に自信をお持ちのようだ」
私はゆっくりと口を開いた。
「おそらくは、その自信の源となるだけの“力”もお持ちなのだろう。」
じっと相手の気をさぐる。怯えや不安は無論のこと、わずかばかりの動揺すら感じられない。
いや、むしろ感情そのものが感じられない、と言うべきか。
・・・だが、もしこれだけの者を一度に相手にして、無傷で済むと思っているなら、それはいささか過信と言うものではないか?
言おうとしていたその言葉を、しかし私は言わずに止めた。
「・・・いや。貴殿を相手に、そのような言葉など意味がない、か。」
“・・・この男は、どこかこの世の“理”から外れたところにいるのではないか。”
そんな気がしてならなかった。
「・・・これ以上やるなら、こちらも“本気で”御相手させていただかねばなるまい。」
修羅の闘気が全身を包む。
“・・・阿修羅よ。”
私は、静かに虚空に手を翳す。
この回は、エリアドの一人称です。