魔性の瞳-143◆「曲解」
■ヴェロンディ連合王国/王都/レムリアの居室
「・・・ふむ。そういう受け取り方があるのか。」
エリアドは目線を少女(契那)に転じて、呟くように言った。
実のところ、そのような受け取り方があることさえ、エリアドは気づいていなかった。
「たしかに、私は、彼女が私の言葉をどのように受け取るか、ということまで深く考えていなかった。
・・・というより、私の言葉が別の意味で受け取られる可能性を考慮していなかった、と言うべきか。
・・・君の言うように、言葉には、二面性、・・・いや、多面性と言えるほどに、解釈の仕方があるのだろう。
・・・言葉というものは、便利なようでいて、実は不便な・・・いや、危うい、もの・・・なのかもしれない、な。」
歩みは緩めず、レムリアの後を追いながら、エリアドはなかば呟くようにそう続ける。
「・・・契那嬢、といったか。御助言、感謝する。・・・君の言う“尊厳”という言葉が、君が私の言葉を『私の正しさがいずれわかるだろう。』という意味だと受け取った結果なのであれば、その一言でさえ、『私の言おうとしたことは、君には伝わっていなかった』という証になるのであろうから」
歩を早め、レムリアとの距離を縮める。
「・・・レムリア。・・・少し、かまわないか。」
それを伝えなければならないということはわかったが、どのように伝えればよいか、わかっていたわけではない。今さら私が『結界が撓んだのは、君のせいではない。』と言ってみたところで、彼女がすでにそうだと思っているのであれば、もはやさしたる意味はないのかもしれない。
しかし、それでも――このままにしておくべきことではないように、エリアドには思えた。
暫く間が開いてしまいました。公事が多忙で、思うように更新が出来ませんが、少しずつでも進めて行きたいと思います。