魔性の瞳-139◆「心配」
■ヴェロンディ連合王国/王都/レムリアの居室
「・・・いや、あまり大丈夫ではなさそうだな。」
エリアドは差し出された“阿修羅”を受け取りながら、レムリアの表情を見てそう応じた。
無論、エリアドの懸念はレムリアが妖魔から受けた傷のことではない。
“・・・“阿修羅”の“気”に当てられた、といったところか・・・”
当たり前のことだが、エリアドがレムリアに“阿修羅”を渡したのは、けしてそのような余計な負担を掛けさせるつもりでしたことではなかった。自分がレムリアの側に居られ無いながらも、“阿修羅”を持たせておけば、何らかの役に立つだろうと考えたからだ。
しかしながら、鞘から抜かずとも、レムリア程の“力”を持つ者であれば、“阿修羅”の“力”を感じ取ってしまうということなのだろう。
「・・・すまない。余計な負担をかけさせてしまったようだ。」
スッ、と音もなく、私の手の中から“阿修羅”が消える。
「お気になさらずに」
レムリアは、気丈にも笑みをエリアドに向けると、ふぅと小さく息を吐く。
「契那ちゃんも、もう大丈夫だから」
「わかりました」
“・・・はたして、この契那という少女は、どうなのだろう?”
レムリアと契那の遣り取りを危機ながら、ふとそんなことを思い、エリアドは傍らの少女の顔をちらりと見た。
そっとレムリアから手を離した契那は、エリアドに目線を向ける。
「どうかされまして?」