魔性の瞳-13◆「吐露」
■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/王宮(祝宴にて)
「・・・人が、人で有り続けるために狂わねばならないとしたら・・・か。」
とてもダンスの最中の若い娘が口にする言葉とは思えぬその言葉に、私は目の前で優雅に微笑む彼女の顔をじっと見た。
“遥か一千年の“時の彼方”、古のスールの地・・・
私が“阿修羅”を得て、それと同時に背負ったものを・・・
そして、それと引き換えに手放したものを・・・
この娘は、知っているというのだろうか・・・。”
それは舞踏会の華やかな音楽の中。
“・・・私とは何か別の形でそれを背負い、捨てたというのだろうか・・・。”
そのことは一片たりとて後悔してはいないものの、心のどこかに満たされぬ想いがあったことは否定し難い。
『人は、孤独なものだ。』
そのことをわかっていてさえ、なお・・・。
天空よりも深い双眸が、彼女を見つめるエリアド自身を、まるで鏡のように映し出していた。
その双の瞳を見つめながら、私は静かに口を開く。
「・・・人であることを捨てるか。それとも、狂気の中で生き続けるか・・・。
それは、私にもわからぬ・・・。」
それは、淡々とした、ほとんど抑揚のない口調。
「・・・だが、私は人であることを捨てるつもりはないし、狂気に囚われたままでいるつもりもない。」
もう一度彼女を見つめ、私はゆっくりと続ける。
「・・・なぜなら。私は、自らの意志で、その道を選んだのだから」