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魔性の瞳  作者: 冬泉
第四章「怪の扉」
139/192

魔性の瞳-138◆「疑念」

■ヴェロンディ連合王国/王都/レムリアの居室


「・・・かたじけない」


 エリアドはそう言うと、セイとハリーに小さく頭を下げた。


“・・・さすがに、妖魔の気配は消えたようだな。・・・もっとも、“天秤”に耐えるような相手であれば、そもそも気配など感じ取らせはしないかもしれぬが、な・・・”


 エリアドはあたりを静かに見廻した。

 レムリアの部屋を訪れるのは昨日から三度めだが、どうやらやっと、少し落ち着いてあたりを見る心の余裕ができてきたらしい。

 意外に、などと言っては失礼かもしれないが、ここが王族の居室であるという事実を考えれば、そう言ってしまってしまっても、けして言い過ぎにはならないくらい、質素シンプルな部屋だ。


“・・・しかし、妖魔タナ・リなどが、王宮の、このような奥深くにまで侵入してくるとは。・・・宮殿を守る結界に、何らかの形で“ほころび”ができていると考えるべきなのかもしれぬ”


 恐らく、部屋に置かれている家具は、どれも良い品なのだろうが、けして華美な装飾が施されているわけではない。


“・・・それにしても。なぜ彼女レムリアが狙われる? “阿修羅”を持たせたことが裏目に出たか?

 ・・・それとも、彼女レムリア自身の身に、何か妖魔タナ・リに狙われるだけの理由があるのか?

 ・・・いや、理由はあるな。・・・“王の妹”などという立場一つをとって見ても、彼女に利用価値を見出す者はいよう。・・・まして、“災厄を告げる者”、“魔性の瞳”などと呼ばれるだけの“何か”を、彼女が本当に持っているのであれば、その先は言わずもがな・・・か”


 そんなことを考えながら、レムリアと契那のところに向かったエリアドは、あるいは少し難しい表情をしていたかもしれない。そのことに気づいて少しだけ表情を和らげ、私はこう続けた。


「・・・二人とも、大丈夫か?」

「大丈夫です」


 壁に凭れて、床に座っていたレムリアは顔を起こした。傍らに付く契那が慎重に傷の手当てをしていた。


「傷は、塞がっています、姫さま。もう、心配はありません」

「ありがとう、契那ちゃん」


 ゆっくりと、レムリアは立ち上がった。躰が揺れるのを契那が隣で支える。


「この剣をお返しします。危ないところを、助けて貰いました」


 古びたその剣を、そっとレムリアはエリアドに差し出した。

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