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魔性の瞳  作者: 冬泉
第四章「怪の扉」
133/192

魔性の瞳-132◆「瀕死」

■ヴェロンディ連合王国/王都/レムリアの居室


「何奴っ!!」


 シャリーンと鋭い音を立てて剣を引き抜くと、今まさにレムリアに襲いかかろうとしていた巨躯の悪鬼にセイは立ち向かった。

 念を込めると、手に持った長剣が白色光を放つ。歩みを止めてセイに向き直った怪物に、体重の乗ったセイの必殺の一撃がヒットする。


『グァァァァァッ!!』


 強烈なノックバックによってバルコニーの方まで吹き飛ばされた猛禽妖魔は、そのまま欄干を越えて下の庭園に落ちていった。


「姫君っ! ご無事か!」

「わたくしは大丈夫です、セイ!」


 レムリアの側に駆け寄ったセイは、バルコニーから更に三体の猛禽妖魔がのそりと入ってくるのを目にした。


「ここは私にお任せを。姫君は早く脱出されて下さい!」


 通廊へレムリアを押し出すと、長剣を両手で構える。眩いばかりの白色光を放つその剣はヴェロンディ王国の至宝、セイの家に代々伝わる聖剣『ノルン』だ。


「どこから忍び込んだかは知らぬが──姫君の安らぎを侵害した罪、万死に値する。天道に代わり、われが裁定を下さん。」


 厳かに言い放つ。長剣の放つ光は、目にしていられない程の輝きだ。その“光”の圧力に押され、じりじりと猛禽妖魔達は後すざって行く。


「!」


 その動きは、目で追えるものではなかった。眩く輝く彗星が飛び込んだかのように、室内が輝きで満たされた。


『ガァァァッ!!!』


 一瞬の事だった。断末魔の絶叫が響くと共に、三体の猛禽妖魔は最初のものと同じ方向に吹き飛んでいった。その身に宿す光の力を剣に凝縮して、剣撃と一緒に相手にぶつけるセイの得意技、“フラッシャー”(閃光撃)である。


「これで終わりとも思えぬが・・・」


 呟いた瞬間。激痛がセイの躰を走り抜けた。


「な、なに・・・」


 セイの影から、鱗の生えた一本の手が伸びていた。そして、その手に握られた曲刀が、セイを深々と貫いていた。


「くっ・・・」


 力を振り絞って躰を引き抜いて振り返る。見る間に礼装の上衣が紅く染まっていく。


『キシャァァァッ』


 妖艶な女性の上半身に蛇の下半身。六本の手には、それぞれ凶悪な刀が握られている。猛禽妖魔よりも遙かにやっかいな相手──女蛇妖魔だ。


「上級、妖魔・・・」


 霞む瞳を見開いて、奥歯を噛み締める。これしきの事で、ヴェロンディ三騎士の一角が倒れる訳には行かない──だが。


『グァァァッ』


 バルコニーから三度の咆吼が聞こえる。開いた戸口の外に潜む複数の黒い影。まだ先程の猛禽妖魔が残っているのか! 前に女蛇妖魔、後ろに猛禽妖魔──傷口からは止め処なく深紅の命が流れ出す。


“天秤を・・・使うしか・・・”


 覚悟を決め、震える手で聖剣を握り直した時。通廊から疾風のように室内に飛び込んできた者がいた。


「契那ちゃん、セイを御願いします! エリアド殿、相手を足止めしますよ!」


 地に崩れ落ちる前に、聞こえてきたのはそんな叫び声だった。

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