魔性の瞳-127◆「不羈」
■ヴェロンディ連合王国/王都/謁見の間→回廊
「・・・貴公たちの言葉は、心して胸にとめておくことにしよう、ハリー殿。おそらく、貴公が抱いた懸念は、もっともなものなのであろうし、貴公は、これまでそうして命を落とした者を見てきたのであろうから。」
ハリーの言葉に応じるエリアドの口元には、小さな歪みが戻ってくる。
「・・・だが、貴公たちに、これまで見てきたものがあるように、私にも、これまで見てきたものがある。・・・結局、人は、自らが信じるように生きることしかできない。・・・そこまで言い切ってしまえば、少し言い過ぎになるのかもしれないがね。・・・そして、その代償は、どのような形であれ、いずれ“身をもって”支払うことになる。その生き方が正しかろうと、あるいは間違っていようとも。・・・そうだな。私が倒れる時には、私にでき得る限り、貴公たちを巻き込まぬように注意するとしよう。」
少しだけ間を取ると、言葉を続ける。
「・・・悪く思わないでほしい。貴重な助言をいただけたことは感謝しているし、貴公たちのような考え方も嫌いではない。だが、他人の言葉を確かめもせずに信じる者は、盲目であること以上に、世の中に目を閉ざしていると私は思っているのでね。」
“あえて、そこまで口にせぬ方が無難に済むのかもしれないな”
とそんなことを思いながらも、エリアドはそのすべてを口にした。それが、この国に蔓延しつつある“事なかれ主義”に対する反発だったのか、それとも私自身の若さゆえだったのか・・・、その判別は、その時のエリアドにもつかなかったのだが。