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魔性の瞳  作者: 冬泉
第三章「心の嵐」
127/192

魔性の瞳-126◆「詭弁」

■ヴェロンディ連合王国/王都/謁見の間→回廊


「・・・何も“望んで”関わり合いになりたいと思っているわけではない。かの御仁の“何か”が気になっているのは確かだが、ね」


 エリアドは少女にそう応じた。


「だが、君がそう言うのなら、今のところはこれ以上の詮索はなしにしておこう。その前に解決しておいた方がよい問題がいくつかあるということも確かなことなのだろうし、ね。」


 ふぅ、と小さくため息をついて、エリアドは傍らの窓から夜空を見上げる。

 やはり、自分はこうした場所には向いていないのではないか。そんなことを、ふと感じる。旅の空の下、街の明かりが届かぬ夜のキャンプで仰ぎ見る、天を埋め尽くす無数の星々が少しだけ懐かしく思い出された。


「差し出がましいことを申し上げてしまいました」


 ご不快に思われたのでしたら、どうかお許し下さいませ、と少女は深く頭を下げた。


「契那ちゃんの言うことはもっともだよ」


 やれやれ、とハリーは肩を竦めた。


「詭弁というのはね、エリアド殿。誤った事柄を無理して自分に納得させる為に言う言葉なんだよ、知っていたかい?」


 解説する義務なんてないんだけどね、と契那の手前、戯けてはみせるが、その双眸は全く笑っていない。


「人が誰かを想う時。それが、自分の心に及ぼす影響は少なくない。相手によって、成り立ってしまう関係は致命的なものにもなるのさ。無防備に相手に心を晒すってことって、キミには想像できるかい?」


 懸念の表情を浮かべて眉宇を寄せる契那に、心配ないよとでも言うように微笑むと。


「弱い心の持ち主が一人でもいると、強固な結界も役に立たなくなる。自分に何が出来て何が出来ないのか──その違いを判らなかったが為に、命を落とした者は沢山いるよ」

「ハリーさま。」

「おっと、言い過ぎたか。失言を許してくれたまえ、エリアド殿」


 悪びれずに、にこにこと笑みを浮かべると、ハリーは二人を先導して歩き始めた。

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