魔性の瞳-124◆「理解」
■ヴェロンディ連合王国/王都/謁見の間→回廊
「すまないが、宜しくお願いする」
ふぅ、とエリアドは小さくため息をついた。
「むろん、セイ殿には私から説明するつもりだが・・・」
言葉尻を濁す所に、彼の迷いが感じられた。
“さて、どのように説明したものやら・・・”
エリアドには、セイを納得させられる自信などあろうはずも無かった。
しかし、現時点の最大の心配事が“阿修羅”を預けたレムリアの安否であることを考えると、たのえ今解決策が思い浮かばなくても、すぐに行動したいと言う想いが強い。
無論、全てが単なる杞憂に過ぎないのかもしれないということも承知してはいたのだが、エリアド自身も不思議なくらいレムリアのことが気になっていた。
「物事を複雑に考えないことだよ。誠意を持って当たれば、相手も誠意を持って返してくれるだろうからね。逆に、邪念や打算が混じれば、旨く行くものも旨く行かなくなるさ」
ハウはそう言うと、思案に暮れるエリアドを先導するように歩き始めた。
「不思議なことにね、セイはそう言った邪心や邪念を的確に把握してしまうんだ。お陰で、セイに正義だと認められることは、ここでは非常に高く評価されるってことさ。これは、あの男爵様とて例外と主張することは出来ないんだよ」
まぁ、余人であればいざ知らず、私利私欲ってものが欠落してるあの潔癖お嬢さんだからなんだけどね、とハリーは笑って言った。