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魔性の瞳  作者: 冬泉
第三章「心の嵐」
114/192

魔性の瞳-113◆「兆候」

■ヴェロンディ連合王国/王都/王宮→謁見の間


 エリアド、セイとハリーの三人は、巨大な白銀の両開き扉が三つ並ぶ王宮正門に近づいていった。全てを白い大理石で作られた王宮は非常に壮麗な姿であり、“中原の宝玉”と呼ばれていることも頷けるところだった。

 三人は正門を固める近衛騎士に馬を預けると、一つだけ開いている右の大扉を潜った。中は高い天井のホールになっており、正面には上に続く大階段となっていた。セイは躊躇無くその階段を上がっていく。その勢いに薄い笑みを浮かべてハリーが、一歩遅れてエリアドが続く。

 階段を登り切ると、そこは両側に石の円柱が並ぶ荘厳な回廊になっていた。ハリーが足を少し早めるとセイに追いつき、エリアドが二歩後を追う形となった。やがて、両開きの巨大な扉にぶつかると、二人はそこでその歩を止めた。


「直衛の近衛騎士達がいないねぇ」

「・・・」


 何か当てこするようなハリーの言い方に、額に青筋を立てるセイ。


「今日はベルムントの隊が当直だ」

「影も形も見えないけど? 定時退城かな?」

「黙ってろ。」


 おーこわ、と小声で言うとエリアドに笑ってみせる。顰め面をして、何かを考えているセイ。


「じゃ、開けるかな」

「ちょっと待て」


 ハリーの手をセイが止めた。


「どうした? 漸く異常事態を感じたかい、セイ」

「貴様もそう思うのか」

「あぁ。幾らウチの近衛騎士がボンクラでも、持ち場を離れはしないでしょ? ということは・・・」


 己の剣の柄に手を掛けると、セイは静かに言った。


「二人とも。中に入るぞ」

「りょーかい。では、行こうか」


 ハリーが扉に手を掛けると、大きく開け放った。


               ☆  ☆  ☆


 謁見の間に近づいてゆくにつれ、あたりに奇妙な気配が漂い始める。


「・・・」


“・・・嫌な気配が漂っているな。・・・何かまずいことでも起きているのだろうか。”


 起こり得る事態について、いくつかの可能性がエリアドには思い浮んだ。・・・が、それらはどれ一つとっても、あまり考えたくない可能性だった。そのような事態になっているくらいなら、いっそのこと異界の魔王でも降臨している方がありがたいくらいなのだが・・・などという甚だ不穏当なことを考えながら、しかし、実際のところ、そのような(異界の魔王が降臨しているというような)可能性はさほど高くあるまいとも感じていた。おそらく、この場で起こり得る中で最悪の可能性は“阿修羅”の暴走であり、二つめはレムリアの“夢見”の力の暴走であろう。そのような状況になってさえいなければ、まだマシな方だと言わねばなるまい。


『二人とも。中に入るぞ。』

『りょーかい。では、行こうか。』


「・・・了解した。」


 エリアドは二人の言葉にゆっくり頷き、開いてゆく扉の奥をじっと見た。

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