魔性の瞳-110◆「同僚」
■ヴェロンディ連合王国/王都/王宮正門→王宮
黙って空を見上げる相手に合わせて、セイは並足で王宮正面玄関に向かう。
“魔剣士と言われているが・・・まだ若いな。その割には老成した口調で話すが・・・”
それは自分も同じなのだろう、と思い返してセイは人知れず苦笑していた。自分が説教じみた事を多々言うところが、同僚のハウによくからかわれる一因なのだろうが。
「己が内に真理を見い出し得るのは幸せなことだ。その想いを大切に育むと良い」
そうは思っていても、やはりそんな事を言ってしまう辺り、やはりセイには杓子定規の嫌いがあるのだろう。そんなセイの言葉に対して、低い笑い声が出迎えた。
「相変わらずの説教上戸だな、セイ」
「ハリーっ!」
正面玄関から背の高い騎士が歩いてくると、エリアドとセイを出迎えた。褐色の髪に褐色の目。人をおちょくった様な笑みが口端に浮かんでいるのが全体的に不真面目な印象を与えている。
「はじめまして、だな。私はハリー・ハウ。貴公の横にいるバーナード卿の同僚だ。よろしくな」
「ハリー、こんなとこで何をしてる? 今日は非番だったのではないか?」
「まぁね」
苦笑しながら頷くと。
「そこの御仁を迎えに来たのさ。サー・ムーンシャドウ。私と一緒に来て貰えないかな?」
「何処に連れてく気だ?」
「気になる様なら、セイ。お前さんも一緒に来たらどうだ?」
いつもの揶揄する様な口調にかちんと来たセイは怒りを込めて言った。
「無論、同行する!」