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魔性の瞳  作者: 冬泉
第三章「心の嵐」
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魔性の瞳-106◆「鮮烈」

■ヴェロンディ連合王国/王都/王宮正門


『やぁ、魔剣士殿。ご機嫌は如何かな。』


 エリアドは馬を止め、無表情に彼らをちらりと一瞥する。


「・・・問題ない」


 近衛騎士の言葉に応じたのは、何の感情も籠もっていない平板な声。むろん、彼らの出自など知るはずもなかったし、また知りたいとも思っていなかったのだから、その後の彼らのセリフに異論など挟めようはずもなし。


「・・・で、そのサー・ヒューバート・ヴェラット殿が、私に何か用でもおありか?」


 エリアドはそのように続けた。


               ☆  ☆  ☆


「日も暮れてきましたが、夕食を召し上がりにいらしたのかな、魔剣士殿は?」


 ヴェラット卿は、口調こそ丁寧に保って言った。


「我らとて、麗しの姫君との優雅な食事、と洒落込みたいのはやまやまながら、如何せんこれから市中警邏の仕事が待っている」

「左様。身分が自由の方が羨ましいことですな」


 ヴェラット卿の言葉に和する様に、隣の近衛騎士が呵々大笑した。


「しかしだぞ、方々。我らの働きがあればこそ、魔剣士殿の様な御仁も枕を高くしておられるのだ」

「ヒューバート殿の言う通りですな。まぁ、せいぜい人生を謳歌することですな。我らがしっかり護って上げる故に」


 徐々に、口調に侮蔑的な色合いが混ざっていく。と、その時。


「斯様なところで、何を無駄口を叩いているのか!」


 裂帛れっぱくの気合いを込めた言葉が近衛騎士達を打つ。飛び上がる様に振り向いた彼らに向かって、一騎の騎士がだく足で近づいてくる。


「た、隊長っ」


 先程までせせら笑うかの様だったヴェラットが一転して情けない声を上げる。


「貴殿ら。疾うの昔に中央市場に赴いている筈ではないのか? このような所で、何を油を売っている?」


 声を発したのは、はっとする様な女性だった。小柄ながら、瞳を輝かし、裂帛の勢いを言葉に込める気迫は、大の男五人を軽く飲む。


「そ、即刻、現地に赴きます」

「行け。私を失望させるな」

「ははっ!」


 馬に拍車を当てると、五騎の近衛騎士は脱兎の如く、その場を立ち去った。


「揃いも揃って・・・」


 舌打ちしそうなその女性騎士に、シュテファンは近づいていった。


「バーナード卿、良いところへいらっしゃいました」

「ラダノワ殿か。またもみっともないところを見せたな」


 バーナード卿と呼ばれた女性騎士は苦笑しながらシュテファンに親しみを込めた笑みを向けた。


「貴公にも迷惑を掛けた様だ。部下が申し訳ないことをした」


丁寧に頭を下げると、バーナード卿は静かに言った。

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