魔性の瞳-104◆「騒動」
■ヴェロンディ連合王国/王都/王宮正門
エリアドは、ふと、近衛兵の一人──服の装飾から見るに、おそらく隊長格の人物であろうと思えた──に、目が止まった。
その瞳に、他の者には見られぬ“光”が宿っていたからだ。
“・・・瞳に、このような“光”を宿す者が、まだこの国にいたのだな。”
わずかに目を細めて、その男を見る。
「貴公・・・。(名は・・・)」
一瞬、そう聞こうとして、言葉を止める。
“・・・いや、もう十分だ。これ以上、この国と関わり合いになる必要はない。”
自分にそう言い聞かせ、ゆっくりと瞑目する。
「・・・いや、なんでもない。」
私は黙って正面の王宮に視線を戻し、ゆっくりと馬を進める。
☆ ☆ ☆
魔剣士は、一礼して門を抜けていった。口にしかけた言葉は、しかし最後まで話されることはなかった。
“交わらぬのが命運か・・・。全ては、糸を紡ぎし女神のお心の儘に、というこのなのだろうな”
己の俗っぽい考えに苦笑しながらも、ふと、視線を上げると。
“ふむ・・・”
王宮の方から、五騎の近衛騎士が笑いながら正門に向かってくる。豪奢な衣装は、騎士正装を可能な限り華美に仕立て上げたものだ。
“着飾るばかりが騎士ではなかろうに”
必要以上に、その身をキラキラと輝かせて、近衛騎士達は馬を進めてくる。と、自分たちに向かってくる魔剣士の姿が漸く目に映った。
「おやぁ? これは、舞踏会におられた騎士殿ではなかろうか?」
「おぉ、そのとおりだご同輩。それも、エルド男爵様の許嫁に手を出したとか」
「許嫁? あぁ、“魔性の瞳”姫か」
「お似合いかもしれんぞ? この者も“魔剣”を帯びているというからな」
ははははは、とあくまで爽やかに近衛騎士達は笑った。相手の耳に、その会話が入るのを見越しての行動だった。
「何があっても、扉は開けておくように。いいな」
部下に指示を出すと、シュテファンは詰め所を出た。ゆっくりと魔剣士の後を追う。