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魔性の瞳  作者: 冬泉
第三章「心の嵐」
104/192

魔性の瞳-103◆「自嘲」

■ヴェロンディ連合王国/王都/王宮正門


 町を抜け、エリアドは王宮正門前の広場に出る。門には、いつもの如く警備の近衛兵たちが並んでいる。初めてこの城を訪れた時にも感じたことだが、型通りの対応しかしない、まるで人形のような兵士たちだ。


 実際に“北”との戦いに赴いている兵士たちであれば、多少は違うのだろうが、もし“北”の奇襲を受けるようなことにでもなれば、この都は程無く陥ちてしまうだろう。そんなことを思いながら、当たり前のように正面から門に向かう。


「・・・警備ご苦労。」


 一声だけ掛けると、“月光”に乗ったまま、エリアドは悠然と門を潜った。


               ☆  ☆  ☆


 番所の入り口に立つと、黙ってその人物が門を通り抜けていくのを見送る。己の行為が、些か無遠慮とも取られかねなかったのだが、実の所シュテファンは余り頓着してはいなかった。


“あれが、彼の魔剣士殿と言う訳か。お目に掛かるのは初めてだが・・・”


 成る程、と頷けるような鋭さを内に秘めている感を受ける。そんな御仁には、この平和惚けしたこの国の警備体制には苦笑すら出ないだろう──そんな想いが浮かんでは消える。所詮は、斯様な考え方こそこの国では外様なのだと、そう苦笑いしながら思うのも毎度のことだった。


 アーサー・アートリム王子と、隣国ヴェルナのアン・コーデリア姫が婚姻し、全てが良い方向に動くと期待されていたのではあるが、そんなことも、実際は国の責を全て二人の肩に載せ、“後は任せた”と言っているだけの構図だった。変わろうとする意識が国民に無く、どうして王と王妃の二人だけでなんとかなろうか。それを想うと、目に険しい光が宿るのを止められもしなかった。


“だが・・・一人粋がったところで、どうにもなるまいが・・・”


 熱くなったところで、賛同してくれる友人も同志もいない。『世こそ和すれば事も無し』と思っていることが常識と化しているこの国のこと──異端的でそぐわない考え方にだけは敏感だ。


“魔国との前線に送られて果てるか。まぁ、それでもこの場で朽ち果てるよりはマシなのだろうがね”


 自嘲気味な笑みは癖になる。思わず口元に手をやって、ふと見られていると感じて視線を上げた。

 大幅にお待たせしてしまって恐縮です。色々と公私ともに立て込んでおりまして、年が変わるまで更新が不定期になります。何卒、宜しくお願い申し上げます。

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