魔性の瞳-101◆「自覚」
■ヴェロンディ連合王国/王都/中央市場
「おやおや。どうやら、不味いことを言ってしまったみたいですね。私もまだ修行が足りないなぁ」
去っていくエリアドの後ろ姿を眺めながら、その若者は苦笑いを浮かべた。
「成る程、あれが噂の“魔剣士”殿ですか。やはり人の噂など当てにはならない、と言うところですね。さてさて、非常に興味深い事態になってきましたね、これは」
にこにこ笑いながら独りごちるが、その双眸には鋭い輝きが宿っていた。
「今の状態ではお話しにもなりませんが――本人が自覚して精進した場合、その成長が楽しみですね。まぁ、何れにせよ、あの“阿修羅”を帯びていて、何も起こらないという訳がありませんからね。放って置いて欲しいと思っていても、周囲がその様にしてくれませんから。まぁ、まだ判ってはいないようですが・・・」
いやはや、目が離せませんねぇ、とのんびり独白する。エリアドの姿が完全に見えなくなるまで見送ると、踵を返す。
「さて、と。取り敢えずは宿に戻りましょうかね。リックもそろそろ到着している筈ですし・・・」
宿に帰って善後策を講じましょうかね──などと口ずさみながら、爽やかな笑顔を浮かべた若者は、人混みに消えていった。
──いや。
「あの〜、“銀の枝”という宿に行くにはどうすればいいのでしょうか?」
道が判らなくて、迷っている姿が見られたという。
更新に間が開いてしまって恐縮です。出張続きですので、11月末まで更新が不定期になろうかと思います。宜しくお願い申し上げます。