土佐・讃岐
ライと家久は、土佐の長宗我部を三好の猛攻から救うためにやって来た。しかし、三好が悪魔設定になった今、三好悪魔との対決は、避けることができないのだ。
「さあ! もう少しで城も落とせるぞ!」
土佐の長宗我部を、三好軍の三好長逸が攻めていた。三好の黒い軍勢に囲まれて、城には火の手が上がり、落城寸前で会った。
「長逸さま! 敵の援軍です!」
「なに!? 敵の援軍だと!?」
兵士の報告に、三好長逸は振り返った。
「なんだと!? 竜だと!?」
海竜、火竜、空竜の3竜が三好兵士を薙ぎ払って、吹っ飛ばしている。
「竜が助けに来てくれた!?」
籠城していた、長宗我部元親にも竜が三好兵を倒している景色が見える。
「三好! 許さないぞ! 竜たちよ! 三好を倒すんだ!」
「おお!」
ライと家久も三好兵と刀を交えている。ライは、竜に命令する。
「あんな子供が、竜を従えているというのか!?」
三好長逸は、目を疑った。
「竜の神の子とでもいうのか!?」
子供が竜を扱うなどと。
「だが、私も三好を名乗る武将。こんなところで負ける訳にはいかん!」
三好長逸は、覚悟を決める。
「不本意だが・・・、いでよ! 悪魔!」
黒い闇に三好長逸が包まれる。そして、闇の中から何かが生まれる。
「我が名は、アガリアレプト。水を支配する精霊を支配する者。」
三好長逸は、魂を売り、悪魔と契約をした。
「なんだあれは!?」
「人間が化け物になった!?」
ライと家久は、人が悪魔になる様を見てしまった。
「いでよ! エレーロギャップ!」
「アガリアレプトさま、お呼びでしょうか?」
アガリアレプトは、水を支配する精霊を呼び出す。
「水の竜の動きを止め、火の竜の炎を消すのだ!」
「かしこまりました。」
お辞儀をすると、エレーロギャップは、海竜の元に飛んでいく。
「なんだ? あれ?」
ライの目にも、水を支配する精霊の姿が見える。
「水の竜は、水に戻り、その水で、火の竜の火を消しましょう。」
「ギャア!?」
エレーロギャップが命じると、海竜は、形を留めることができず、砕けてしまう。
「海竜が!?」
ライは、驚いた。竜が水になってしまったのだ。その水が、ザパーンっと、火竜に被さり、ジュワ~っと、火竜も消されてしまう。
「火竜が!?」
ライは、無敵と思っていた竜が、いとも簡単に消されてしまったのだ。
「アガリアレプトさま、ご命令通りに致しました。」
「よくやった。残った空竜を倒しに行くぞ!」
「はは、かしこまりました。」
アガリアレプトとエレーロギャップは、ライに突進してくる。
「来る!?」
ライも悪魔が近づいてくるのに気づいた。
「くらえ! 闇の水!」
黒い水が、水鉄砲のようにライを襲う。
「守れ、空竜!」
「おお! 風のバリア!」
空竜は、ライの周りに、風で渦巻きを作り、闇の水を防ぐ。
「今度は、俺の番だ! 空竜破!」
ライは、剣を振るい、必殺技を繰り出す。空竜の形をした突風が、悪魔を目掛けて飛んでいく。
「エレーロギャップ!」
「はい、水のバリア!」
精霊は、水で防御幕を張り、風の侵入を阻む。
「クソ!?」
「子供のくせに、やるな!?」
ライとアガリアレプトの戦いは、一進一退であった。
「長逸さま、本国より帰還命令です!」
「なに!?」
伝令の兵士がやってきた。
「九州を攻められた、義興さまと松永さまが九州から敗走しました。」
「なんだと!?」
悪魔に魂を売った三好家が、負けたことに驚いた。
「それをやったのは、俺です。」
「な!? な!?」
九州で三好に土を着けたのが、目の前にいる子供と聞いて、さらに驚いた。
「また、三好義賢さまが備前で、得体のしれない武将と遭遇し敗走! その者は島津義久と名乗ったそうです。」
「義久さん!?」
「兄上!?」
ライと家久は、義久が前線に帰って来てくれたことが、うれしかった。
「義賢まで、負けたというのか!?」
アガリアレプトになり、悪魔の凄さを実感している長逸には、信じられなかった。
「また、京で歴史に名を残す者という者たちが、将軍、足利家の手先として暗躍しているとのこと。殿が、四国を捨て、京に帰還せよ! とのご命令です!」
三好の殿、三好長慶である。頭脳明晰、知略に長けている。その長慶が激しい戦乱の世に危機感を持ち、三好の武将を京に集めるという。
「仕方ない。竜の子よ、勝負はお預けだ。私と戦いたければ京に来い。」
長逸は、悪魔の体から人間の姿に戻る。
「おまえたちは、歴史に名を残す者ではないのか?」
ライは、長逸に尋ねる。
「歴史に名を残す者? なんだ? そいつらは? 私は、ずっと遠征で戦っていたので、京のことは知らない。」
長逸は、歴史に名を残す者のことは知らないようだ。
「歴史に名を残す者は、過去の歴史に偉業を成して、名前を残してきた英雄たちと戦ってきました。彼らは、神剣や特殊能力を持ち、鬼という化け物を使ってきます。俺たちは、九州から、ずっと戦ってきました。」
「妖か? それで殿は、我々に悪魔と契約しろと言ったのか・・・。」
長逸は、歴史に名を残す者を知る。
「我々の目的は、天下を統一して、民に平和な暮らしを送らせてあげたいだけだ。我々が統治してきた領地の民の声に、耳を傾けるんだな。」
「え!?」
ライは、長逸の言葉に驚く。ライは、剣術を磨きたい、日本国を剣で制覇したいという気持ちもあるが、大人も子供も、平和に暮らせる世界にしたいとは思っている。悪魔に魂を売っている三好も、同じことを考えているというのだ。
「道中、三好悪魔を配備しておこう。せいぜい殺されないことだな。おまえが強ければ、またどこかで会えるだろう。さらばだ!」
「ちょっと、待って・・・。」
長逸は、退却した。ライは、長逸と会話をしたいと思った。
「敵であっても、思いは同じなのか?」
ライは、自問自答した。今までは、ただ目の前の敵を倒せばいいと思ってきた。その前提が、敵と接することで、相手の立場になることで崩れてきた。
「拙者は、長宗我部元親です。助けてくれてありがとう。」
土佐の長宗我部元親が挨拶にきた。
「私たちは、九州中国制覇隊です。」
「噂の九州を制覇したという!? まさか中国地方まで制覇していたとは!?」
「長宗我部さん、一緒に戦ってくれませんか?」
「分かりました。がんばって、三好家を倒しましょう。」
「おお!」
ライたちは、長宗我部を仲間にした。
こうして土佐も制覇したのだった。
つづく。
鍋島、義弘、空ちゃんは、悪魔のヨナちゃんに憑りつかれていた。伊予を空にすることもできないので、讃岐に進軍する。
「ライに会わせないと、闇に落とすわよ!」
悪魔のヨナちゃんは、ライ以外は、どうでもいいのだ。
「ええ加減に止めろ!」
鍋島は、ご機嫌斜めのヨナちゃんを叱る。
「みなさん、うどんでも食べていきませんか?」
その時、うどん屋の娘に声をかけられた。
「やっぱり、うどんは讃岐だな。」
一行は、うどんを食べていくことになった。
「あれ。」
「ん?」
空ちゃんは、義弘の背中から、うどん屋の暖簾を指さす。
「うどん屋、あすもでうす?」
義弘には、何のことか分からなかった。
「アスモデウス!?」
その声を聴いて、ヨナちゃんは、ピクッとする。
「待て! このうどん屋は、悪魔だぞ!?」
「なに!?」
一行の足が止まる。
「フフフ、バレたら仕方がない。私は、三好悪魔だ!」
なんと、うどん屋さんは、三好の手下の悪魔だった。
「私の名前は、アスモデウス。滅ぼす者だ!」
人間の体が闇に覆われ、悪魔の姿に変身していく。
「悪魔の炎をくらえ!」
アスモデウスが口から火を吐こうとした。
「ちょっと待った!」
ヨナちゃんが、そこに割り込む。
「なんだ、小娘!?」
アスモデウスは、ヨナちゃんに尋ねる。
「小娘ですって!?」
ヨナちゃんは、ブチ切れる。
「私は、邪神テスカトリポカの化身よ! 邪神よ! 邪神! あんたみたいに、たかが悪魔じゃないのよ!」
ヨナちゃんは、どんどんテンションが上がり、闇に追われていく。
「おまえの魂を抜いてやろうか!?」
もう声は、小娘の声ではなく、禍々しい邪心の声になっていた。
「お許し下さい! 私は契約に基づいて、ここにいただけです! 本当は平和に、うどん屋さんを営みたいだけなんです!?」
アスモデウスは、邪神に命乞いをした。
「許してほしければ、うどんを4杯、おまえのおごりだ! 分かったな!」
「はい! 直ぐに作ります!?」
悪魔は、邪神には勝てなかった。悪魔も縦社会なのであった。アスモデウスは、人間の娘の姿に変わり、うどんを作りに厨房に行く。
「悪魔娘が役に立った・・・。」
「・・・。」
「うどん大好き。」
鍋島たちは、無料で、うどんが食べれることになった。
「おいしい! 悪魔にしておくのはもったいないな!」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
アスモデウスは、手作りうどんが褒められて、うれしくて、口が軽くなった。
「でも、なんで悪魔が三好に加担してるんだ?」
「三好長慶さんが、魂をあげるから、天下統一するために力を貸してと、堕天使の皇帝ルシファーさまにお願いしたんです。それで契約が成立したんです。」
三好は、悪魔と取引してしまったのだ。
「ルシファーって、何者だ?」
「ルシファーさまは、魔王サタンです。魔界でトップの方です。」
「大物なんだな。」
ついに、魔王まで出てきてしまった。
「魔王と邪神は、どっちが偉いんだ?」
「魔王さまです。」
「じゃあ、俺たちと戦わないといけないんじゃないの?」
鍋島が、余計なことを言う。
「私は何も見てません。うどんの生地を捏ねている間に、通過されましたと言います! 人間界に来て、戦うことよりも、うどんが大好きになりました!」
アスモデウスは、うどんの虜になりました。
「わかった。何か困ったことがあれば、私の名前を出せばいい。」
「ありがとうございます。邪神さま。」
「うどん、もう一杯おかわり!」
「はい、ただいま、お持ちします。」
ヨナちゃんは、男前な悪魔であった。悪魔も全ての悪魔が悪い訳では無いようだ。
こうして、讃岐も制覇した。
つづく。