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制覇! 2 中国四国編  作者: 渋谷かな
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伊予・備中・豊後・伊予

お茶とお餅をおいしく食べている鍋島、義弘、空ちゃん。しかし、優しいおじいさんの様子が変だ。


「おじいちゃん。」

「なんだい? 滑石。」

「かわいい。」


小さな女の子がやって来た。


「おじいさんの孫か?」

「違います。お嬢様が錬成された妖怪です。」

「なんだ、妖怪か・・・おい!?」


鍋島たちは、驚いた。なんと、妖怪にお茶とお餅をご馳走になっていたのだ。


「石膏たちが、三好軍と戦い始めたよ。」

「そうか、わかったよ。」

「滑石ちゃん、お姉ちゃんのお膝においで。」

「わ~い!」


滑石は、空ちゃんのお膝の上に乗った。遊んでもらえるのが、うれしいのだ。


「きなこ餅、おいしいよ。」

「わ~い!」


空ちゃんと滑石は、楽しそうに笑っている。


「こら!? こいつら妖怪だぞ!?」

「・・・。」


鍋島と義弘は、戸惑う。


「私も竜の使い。人間からすれば、化け物だよ。」

「な!?」

「・・・・。」


人間を睨む空ちゃん。その視線にも、戸惑う鍋島と義弘。


「お姉さんも妖怪なの?」

「うんうん、竜の使いなの。」

「竜の使い?」

「どちらかというと竜。人間ではないの。」

「じゃあ、私と一緒だね。」


竜の使いと妖怪は分かり合えた。


「ハハハハハ!」


その時、おじいさんが楽しそうに笑う。


「じいさん、なにがおかしい?」

「いや、人間だけが分かり合おうとしていないと思ってな。」

「なんだと!?」


うるさい鍋島には、妖怪と分かり合おうという気持ちが無かった。


「静かにしなさい。そのおじいさんは正長石。あなたたちでは勝てないわよ。」

「な!?」

「・・・。」


やっと、鍋島も理解した。反抗したら殺されると。


「なぜ、お茶を出して、もてなしくれるのです。」


無口な義弘が話し始めた。この男が今まで、しゃべっていなかったのが幸いであった。鍋島だけなら、妖怪の怒りを買って、殺されていたかもしれない。


「我々、妖怪は、長が亡くなって、喪に服していた。長の跡をお嬢様が跡を継ぐことになって、こうして私は、挨拶のために四国に派遣されたのです。挨拶のためにね。」

「・・・。」

「挨拶だと!?」

「黙れ。鍋島。」

「黙れ! 鍋島!」

「ク・・・。」


じいやは、挨拶に来ただけと言う。いちいち驚く鍋島を、空ちゃんと滑石の女の子が注意する。鍋島は、黙るしかなかった。


「それなのに、妖怪の出番を奪うかのように、京の三好が九州まで攻め込んでいるという。これは困ったものなので、1番柔らかい滑石兵では敵わないので、次の石膏兵に交代させました。」

「おかげで滑石は、1つのキャラクターになれました。キャハ!」

「よかったね。滑石ちゃん。」

「うん。エヘヘ。」


妖怪は、妖怪の事情があるのだ。


「お嬢様次第だが、これからは妖怪・人間・歴史に名を残す者と3つ巴の戦いは免れないじゃろう。」

「3つ巴の戦い!?」

「反応するな。鍋島。」

「反応するな! 鍋島!」

「おまえら、うるさい!」


空ちゃんと滑石ちゃんに口答えする鍋島。


「なんだ!? おまえたちは!?」

「村人は、皆殺しだ!」


ドカ! っと、家の引き戸が開き、三好兵が入って来る。


「三好兵!?」


いきなりの敵襲に、鍋島と義弘は驚く。


「死ね!」


三好の兵士が刀で、おじいさんに斬りかかる。


「危ない!」


鍋島と義弘が反応するが、間に合わない。


「ズズズズズ。」


空ちゃんと滑石ちゃんは、普通にお茶をすすっている。


「なに!?」


三好兵の刀がおじいさんに当たり、刀身が折れた。刀の当たった部分が鉄の塊のように変化している。


「石膏兵では、ダメだな。次回から、方解石を兵士にしよう。」


おじいさんは、持っているお餅を食べきり、立ち上がる。


「座っている老人を殺そうなんて、妖怪でもしないぞ。」


そういうと、おじいさんは、鉄で剣を作った。


「ギャア!?」


あっという間に、三好兵を皆殺しにした。


「滑石、挨拶も終わったし帰るぞ。」

「は~い! お姉ちゃんありがとう。」

「私の名前は空ちゃん。空ちゃんでいいよ。」

「うん、空ちゃんお姉ちゃん、ありがとう!」


滑石ちゃんは、じいやの元に走っていく。


「ま、待て・・・。」


鍋島は、妖怪の異形と異様な強さを見て、何と言ってよいのか、わからない。


「・・・。」


義弘も、恐らく剣技では、互角か勝てると思ったが、体が鉄になるのでは、勝負にはならないと思った。


「死にたくなかったら、できるだけ、心霊スポットには近づかんことだな。あとは、お嬢様の気分次第じゃ。ハハハ!」

「バイバイ!」


そういうと、じいやと滑石ちゃんは、闇の中に消えていった。


「妖怪、なんて恐ろしいんだ!?」

「義弘が無口で助かった。」

「拙者が口下手で悪かったな。」


3人は、なんとか命拾いした。しかし、妖怪の恐ろしさを実感することになった。


伊予の三好軍は、空ちゃんの風のいたずらと妖怪の石膏兵との戦いで、本国である京から離れすぎていることもあるが、かなりの痛手を負ってしまった。


つづく。


立花、火ちゃん、小早川、吉川は、備中に進軍した。強敵に出会わないように忍者の睦月ちゃんに索敵させているのだが・・・へっぽこ忍者だった。


「おまたちは何者だ!?」


立花たちの前に、1人の武将が立ち塞がる。


「我々は、九州・中国制覇隊だ!」

「なに!?」


武将は、ジーっと見てくる。確かに毛利の小早川と吉川がいた。


「小早川と吉川だな!? ということは、九州を制覇したというのは、毛利だったのか!?」

「違う。九州の連合軍と中国の毛利は、ある目的のために、手を結んだのだ。」

「ある目的だと!?」


武将は、毛利元就が九州・中国を制覇したと思ったが違うようだ。


「今、世の中には、鬼という化け物を使う、歴史に名を残す者という者たちが暗躍している。」

「歴史に名を残す者?」

「九州の大名も、我が元就公も殺された。」

「なに!? 毛利元就が死んだというのか!?」


武将は、驚いた。中国地方の雄、毛利元就が死んだというのだ。


「まったく訳が分からんが、敵ではないようだな。」


武将は、敵意をなくし、立花たちに近づいて名を名乗る。


「私は、宇喜多直家。備前のクソ大名、浦上家に仕えている。しかし、謀反を起こし備中の三村領を攻め込もうと思って偵察に来たのだが、ここは、空っぽのようだ。」

「領主の三村はいないのか?」

「三村は、美作に進行していなかったので、備中は、私が頂いた。どうだ? 取引しないか?」

「なに?」


備中の領主となった宇喜多は、立花たちに提案を持ちかける。


「備中、美作、そして浦上家の支配する備前を、私にくれるならおまえたちに協力してもいいぞ。」

「なんだと!?」

「そうすれば、私たちは、毛利とも戦わなくていいからな。」

「なんだか、そちらにいい条件ばかりだな?」


立花たちは、少し腑に落ちない。


「捕虜を。」


宇喜多がいうと、縄で縛られた忍者の睦月ちゃんが現れた。


「あ!? へっぽこ忍者!?」

「不覚にも捕まったでござる・・・。」

「うちの食堂で、ご飯を盗み食いしていたのを捕まえただけだ。」

「・・・出会った時と同じだ。」


睦月ちゃんは、ご飯が大好きなのだ。


「殿! 助けて!」

「他人のフリをしようか?」

「睦月ちゃん、犠牲になるのも、青春だよ?」


立花たちは見捨てる気が満々だった。


「殿、提案を受け入れてください!」

「へっぽこ忍者が何を言う?」

「殿、周りは鉄砲隊に囲まれています!」

「なに!?」


捕まっていても忍者なのだ。立花たちは、宇喜多軍に囲まれていた。


「ほ~お、食い意地は張っているようだが、忍者としては優秀だな。」

「殿、お褒め頂きありがとうございます。」


睦月ちゃんは、簡単に手の平を反す。


「みなさん! 殿は、三村や浦上の圧政に苦しむ人々を助けたいだけです。さっさと提案を受け入れて、睦月ちゃんを助けてください!」

「ああ! もう! わかった。その提案を吞む。」


立花たちは、渋々、宇喜多の提案に折れた。


「それでは、この勢いのまま、美作に行き、三村を暗殺しに行くぞ!」


宇喜多は、強力な見方を得て、下剋上を果たそうとするのだ。


こうして、立花たちは、備中を制覇した。


つづく。


高橋紹運が死んだ。ライは、助けることができなかった。島津歳久と家久と合流した。高橋のお墓参りをしている。


「・・・。」


三人は、高橋のお墓に手を合わせて祈る。


(高橋さん、必ず、敵は取ります。)


ライは、目を閉じて、高橋のお墓に誓う。


「そろそろ、行こうか。」


歳久が、いつまでも動かないライに声をかける。


「はい。」


ライは、目を開け、立ち上がる。


(高橋さん、行ってきます!)


ライたちは、お墓を後にした。



「いいか、今度、九州が襲われたら、私一人では守れない。絶対に防衛線を突破されるなよ!」

「はい。」

「兄上、かっこ悪い・・・。」

「仕方がないだろう! 本当のことなんだから・・・。」


高橋に代わり、島津歳久が九州探題の職に就いた。


「クス。」

「おお!? ライ殿が笑ったでござる。」


場が和んだのが、年長者の歳久は嬉しかった。


「四国を制覇してきます!」

「頼んだぞ、ライ!」

「はい!」


ライの目に生気が宿っている。大好きだった高橋の死に悲しんだが、同じ悲しみを繰り返さないためにも、徹底的に戦うつもりになっている。


「俺もいますよ!」

「そうじゃな、家久。ライ殿の邪魔にならないようにな。」

「邪魔なんてしません!」

「ハハハハハ!」


4男の家久もライと一緒に四国に出陣する。


「いでよ! 竜!」


ライは、気が付けば、天を割り、竜を呼ぶことができるようになっていた。


「最近のライは、何でもありだな・・・。」

「りゅ、竜に乗ることになるとは・・・。」


ライと家久は竜の背中に乗る。島津兄弟は、普通の人間なので驚くばかりである。


「歳久さん、行ってきます!」

「兄上、お達者で!」

「頑張れよ!」


ライたちは、竜に乗り伊予の国を目指した。


つづく。


鍋島、義弘、空ちゃんは、三好軍と妖怪軍の戦いに巻き込まれた。ライたちが来るまで、山の中に隠れるのだった。



「おんぶ。」


空ちゃんは、義弘の背中に飛び乗る。


「な!?」

「こら、自分で歩け!」

「鍋島、うるさいから嫌い。義弘、静かだから好き。」


義弘は、空ちゃんに気に入られてしまった。義弘も女性を振り落とすこともできないので、空ちゃんを背中に背負って、山道を登る。空ちゃんは、笑顔で義弘の背中におんぶされている。



「人間ではない、何かが来る。」


空ちゃんが、変わった発言をした。


「三好軍でないということは、妖怪か!?」


鍋島と義弘は身構える。しかし、現れたのは、西洋風の衣装を着た、普通の女の子だった。


「女の子? なんだ、妖怪じゃないんだ。フ~。」


鍋島は、一息ついて安堵する。


「どうして、こんな山奥に、女の子が一人でいるの?」

「確かに!?」

「気を抜くな!」


空ちゃんの指摘に、鍋島と義弘は、臨戦態勢に入る。


「天狗と思ってきたけど、人間か・・・残念。」


女の子は、独り言のように、ショックを受ける。


「おまえは、何者だ!?」

「聞かれたから答えるけど、私は、ヨナルデパズトーリ! 邪心テスカトリポカの化身の冥界の悪魔だ! おまえたちの魂は頂くよ!」

「なに!?」


この女、九州でライに出会い、怪我している所を助けられ恋に落ちた、純粋な悪魔である。しかし、行動は極めて危険なデンジャラス・ガールである。


「剣? そんなものが私に利くわけがないじゃない。」


鍋島は、刀を抜いて構える。ヨナちゃんも両手に魂を抜くための闇の渦を作る。


「逃げよう。あの女には、勝てない。」

「なに!?」

「あの手の渦は闇。あっという間、闇に吞み込まれ、魂を抜かれる。」


空ちゃんは、悪魔にも精通しているようだ。


「くらえ! 闇落ち!」


ヨナちゃんの放った闇が鍋島の後ろに現れ、鍋島を闇が呑み込んでいく。


「うおお!?」

「鍋島!?」

「こんな所で死んでたまるか! ライたちが来るまで生き抜くんだ!」


鍋島は、闇に呑み込まれようとしたが、必死に足掻いている。


「ライ?」


ピタッとヨナちゃんと、ヨナちゃんの闇の渦の吸引が止まった。


「あの皆さんは、ライのお友達なんですか?」

「我々は、ライと一緒に九州を制覇した者だ。」

「なんですって!?」


ヨナちゃんは、驚いた。闇に落とそうとした連中が、愛しいライのお友達だった。ヨナちゃんは、闇の渦を消した。


「ライのお友達とは知らなかったので、失礼しました。お怪我はありませんか?」


ヨナちゃんは、態度を180度、変えた。営業スマイルで低姿勢で接してくる。


「なんだ!? なんだ!? 急に態度が変わったぞ!?」

「ライの知り合いなのか?」


鍋島と義弘は、悪魔の変化に戸惑った。義弘は、ヨナちゃんに質問する。


「はい。一夜を共にした仲です。キャア!? 言っちゃった!?」


ヨナちゃんは、恥じらう乙女のように照れている。正確には、山で遭難して、明るくなるまで山の中で1晩一緒に待機していた、である。


「ライのやつ・・・悪魔が趣味だったとは・・・。」


鍋島たちは、ライに呆れる。


「お兄さん、お姉さん、ライが、いつもお世話になっています。困ったことがあったら何でも言ってくださいね。私が闇に落としますから。エヘ。」

「はあ・・・。」


こうして、鍋島たちに、ヨナちゃんが合流したのだった。


つづく。


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