豊前・伊予・備後・豊後
ライたちは、3部隊に分かれた。ライたちは、九州の豊後に高橋に会いに行こうとしている。なにか嫌な予感がする。
「兄上! ライ!」
九州の豊前まで帰ってきたライと歳久。そこに島津の4男の家久が馬に乗って、慌てた様子で急いで、こちらにやって来る。
「あ!? 家久だ!?」
「一大事でござる!」
「なにか、あったんでしょうか?」
ライと歳久は、家久を見つける。家久は、ライと歳久の元に着き、馬から降りた。
「一大事でござる!」
「どうした? 家久?」
「なにか、あったんですか?」
「豊後が攻められました!」
「なに!?」
家久は、救援を求めるために、本州へ行くつもりだったと言う。
「伊予の河野が攻めてきたって、大したことはないだろう?」
「違います! 攻めてきたのは、京の三好長慶です!」
「なんと!?」
京の三好家が九州まで攻めてきたというのである。
「三好義興と軍師の松永久秀が、豊後のお城に総攻撃をかけてきて、紹運どのが、自分を逃がすために、1人で籠城されてます! 急いで、助けに行ってください!」
「わかった。」
「高橋さん・・・。」
ライは、尊敬する高橋の危機に表情が曇るが、直ぐに自分のすること、自分のできることをやろうとする。これも高橋に教えてもらった、生き方だった。
「竜、召喚!」
ライは、3竜雷剣を天にかざし、竜を呼び寄せる。ライは、竜の背に飛び乗る。
「先に行きます!」
「頼んだぞ! ライ!」
「はい!」
ライを乗せた竜は、豊後に向けて、すごいスピードで飛んでいく。
「高橋さん、無事でいてください!」
ライは、豊後の城を目指す。
つづく。
島津義弘、鍋島直茂、空ちゃんは、空ちゃんのスキル「空の道」を渡り、四国の伊予に着いた。なにやら様子がおかしい。
「おかしいな? 河野直道は、戦争を嫌う大人しい大名と聞いていたが?」
ところがどっこい、伊予の国は武装した兵士が山のようにいた。陰から様子を見ている3人は、近くの村人のおじいさんに話を聞いてみた。
「河野さまは、殺されました。」
「なに!?」
「あの兵士は、京の三好家の兵士たちです。」
「なんだって!?」
予想外の展開が続き、義弘と鍋島は驚くことしかできなかった。
「もう四国は、土佐の長宗我部以外は、全て三好家の領地です。」
「なんと!?」
「すでに先遣隊は、九州の豊後を攻めに行ったと聞いてます。」
「九州だと!?」
自分たちが中国地方を攻めている間に、四国をほぼ制覇し、そして、九州を三好家は攻めていたのだった。
「・・・九州は、高橋がいるから大丈夫だろう。」
「そうだな。信じよう。」
「三好家に九州を攻めさせないために、四国で反乱の火の手をあげなければ。」
「なにかいい方法はないものか?」
「空ちゃんに任せて。村人とお茶でも飲んでいて。」
「どうぞ、お茶とお餅をご馳走します。」
テンション低めの竜の使いの空ちゃんが、やる気をみせた。空ちゃんは、風になり姿を消した。村人のおじいさんはいい人だった。
「横風。」
まず、港にやって来た空ちゃんは、九州に出港する三好の軍船を横風を吹かせて、ドボン! っと、一回転させ、沈没させていく。
「かまいたち。」
次に、三好の陣にやって来て、キレキレの突風を吹かせ、陣中の兵士たちは、風に切り刻まれていく。
「風よ! 舞え!」
最後に、山に現れ、コツンコツンと石と石を打ち付け火をおこし、風を吹かせて、山火事を発生させる。
「ギャア!?」
「河野の祟りだ!?」
三好兵は、パニックに陥っていた。
「ただいま。」
空ちゃんは、おじいさんのお家でお茶とお餅を食べている、義弘と鍋島の元に帰ってきた。
「あれ、みんな、空ちゃんがやったの?」
「はい。」
「ガンガンやらないと、盛り上がらない。」
「ハハハハハ・・・。」
「・・・。」
義弘と鍋島は、竜の使いの空ちゃんのすごさに戸惑っていた。
「我々だけでは、先に進むこともできないので、ここでお茶とお餅でもいただいて、ライたちが来るのを待つか。」
「お餅、きなこがいい。」
「お茶もどうぞ。」
「おじいさん、ありがとう。」
「・・・。」
伊予部隊は、独特な雰囲気で待機しているのだった。無口な義弘と基本やる気のない空ちゃん。気を遣って、話をするのは鍋島だけなのだ。おじいさんの優しさに救われる。
つづく。
立花、火ちゃん、睦月ちゃん、小早川、吉川は、備後にやって来た。ここは毛利領なので安心して通過できると思っていたのだが・・・。
「みなさん、お待ちしておりました。」
一行の前に女の子が現れる。
「おまえは、何者だ!?」
「私の名前は、ぬらり子。この度、妖怪の長になりました。」
現れたのは、ぬらり子だった。
「妖怪の長だと!?」
「今までは、私のお父さんの四十九日だったので大人しくしていましたが、これからは妖怪が目立たせてもらいます!」
ぬらり子からの宣戦布告であった。
「この女、頭がおかしいんじゃないか?」
「海ちゃん以上に、やさぐれているかも?」
立花と火ちゃんは、ぬらり子に呆れている。
「私をバカにしたな! 鵺先生! やっちゃってください!」
「ヌエ!」
巨大な雷獣、鵺が現れた。
「なんだ!?」
「デカイ!?」
立花たちは、鵺に恐怖した。
「ヤマタノオロチ先生、敵は鵺先生が取ってくれます。クスン。」
ぬらり子は、空に誓って涙を流した。
「ヌエ!」
鵺は、カミナリを周囲に降り注ぎ攻撃してくる。圧倒的な電力で、カミナリは鳴り止むことは無い。攻撃は、立花たちに反撃する時間、策を考える時間を与えてくれない。火ちゃんの火の玉や炎ごときでは、鵺先生のカミナリ攻撃には、対抗できない。
「ギャア!?」
「こんな妖怪と、どうやって戦えばいいんだ!?」
立花たちは、逃げ惑う。もちろん、逃げ足の早い忍者は姿を消している。
「それにしても、弱いな? やっぱり人間に妖怪を倒すのは無理だろう? おまえたち、本当にヤマタノオロチ先生を倒したのか?」
ぬらり子は、素朴な疑問をぶつけてみた。
「違う! 確かに、その場にはいたが、倒したのは俺たちじゃない!」
立花は、機転を利かせたのか、生き残りたいからか、頭の回転が速かった。
「なに!? 人違いだと!?」
ぬらり子は、勘違いに驚いた。
「そうです。ヤマタノオロチを倒したのは、ギュウという牛頭野郎です!」
確かにそうだった。
「そうか、すまなかった。こちらの不手際のようだ。鵺先生、牛頭野郎を探しに行こう。」
「ヌエ!」
「さようなら・・・。」
去っていく、ぬらり子と鵺に、立花たちは無表情で手を振って、お別れをする。
「なんとか生き残ったな・・・。」
「もう少しで、青春が終わるところだった・・・。」
「おまえたち、あんなのばっかりと戦っているのか・・・。」
「人間には、負ける気はないが、鬼とか妖怪に勝てる気がしない・・・。」
立花、火ちゃん、小早川、吉川は、戦意を喪失した。
「ハハハ! 睦月ちゃんに恐れをなして逃げて行ったわ!」
安全を確認してから、忍者が帰ってきた。
「逃げ足忍者!」
「はい!?」
立花は、睦月ちゃんを呼ぶ。睦月ちゃんは、逃げたことを怒られると思った。
「索的に集中しろ! 今度、あんな化け物に出会ったら、全滅だ!」
「殿! 分かったでござる!」
忍者をいじめるより、自分たちが生きることが優先であった。それでも、立花たちは、次の備中に進む。
こうして、備後は制覇された。
つづく。
ライは、竜に乗り豊後の城を目指す。京の三好軍が九州まで攻めてきた。憧れの高橋さんが籠城しているので、早く助けたいと竜を走らせる。
「見えた!」
ライは、空を竜に乗って飛びながら、豊後の城が見えたきた。お城は、炎と煙があがって、ほぼ落城していた。それでも、三好軍の大砲が、ドカン! ドカン! ドカン! っと撃ち込まれている。
「必殺! 3龍雷覇!」
ライは、上空から海竜、火竜、空竜を三好軍に撃ち込む。
「ギャア!?」
黒い鎧を着た三好軍の兵士は、なにが起こったのか分からないで戸惑っている。とりあえず、三好の大砲部隊は倒した。
「何事だ!? 竜だと!?」
「殿! 敵の援軍かもしれませんぞ!?」
総大将の三好義興と軍師の松永久秀である。松永は、軍師らしく微動だにしない。
「やめろ! これ以上戦うなら、俺が相手だ。」
ライは、竜に乗りながら、三好軍に叫ぶ。
「なんだ!? あの子供は!?」
「もののけかもしれませんぞ!?」
得体のしれない竜の登場に、三好軍も交戦するか、判断に悩む。
(なんだ!? あの禍々しい2人は!? 人間ではないのか!?)
ライも、三好義興と松永の異様なオーラに気がつく。
「九州から去れ! 竜の怒りを買うことになるぞ!」
ライは、竜の神のようにも見える。
「大変です! 伊予で村人が反乱を起こしました!」
「なに!? 空っぽにしたのが悪かったか!?」
「義興さま、伊予に戻りましょう。我々が孤立してしまいます。」
「わかった。」
「退却だ! 全軍、伊予へ退くぞ!」
三好軍は、退却し始めた。
「高橋さん!」
ライは、竜から飛び降り、ボロボロになったお城に入って行った。
「高橋さん! どこですか!」
お城は、火の手が上がり、煙も出ている。至る所で柱や瓦が崩れている。
「高橋さん!? 高橋さん!」
ライは、高橋紹運を見つけた。三好の大砲が命中したのか、高橋は、全身血まみれで倒れこんでいた。ライは、高橋に駆け寄る。
「ライか・・・。」
「はい! 高橋さん!」
高橋は、辛うじて意識があった。
「敵は・・・どうなった?」
「退却しましたよ! 城は! 九州は、守られましたよ!」
「そうか・・・命にかえても・・・守るって言っただろ・・・グフッ!」
「高橋さん!」
高橋は、手をライに伸ばす。ライは、両手で高橋の手を握る。
「ライ・・・おまえとは・・・もっと一緒に・・・いたかったな。」
「何を言っているんですか!? 僕には、高橋さんが必要なんです! いろいろ教えてください! もっと叱ってください!」
ライも高橋の弱気を感じ取った。必死に高橋に呼びかけている。自然と目から涙が溢れてくる。体は震えが止まらなかった。
「ライ・・・おまえは生きろ!」
そういうと高橋は、バタッと体から力をなくし、息絶えた。
「い、嫌だ!? こんなの嫌だ!? 高橋さん!!!!!」
ライの悲しい悲鳴は、どこまでも響いた。
「許さないぞ! 三好長慶!」
後日、聞いた話では、三好軍は、もう抵抗する力もない豊後の城に、大砲の弾を一方的に打ち込みまくったという。それを聞いたライは、怒りがこみ上げてくる。
豊後は、九州は、高橋紹運の命を懸けた働きにより、守られた。
つづく。