石見・出雲・伯耆
「石見は、銀が掘れることで有名でござる~♪」
忍者の睦月ちゃんが馴れた足取りで、ライたち九州制覇隊の面々を案内する。周防は、安芸の強国、毛利と隣接しているため島津義弘と鍋島直茂が守ることになった。石見には、ライ、火ちゃん、立花道雪、島津歳久の4人だけで石見に進撃することになった。
「俺がいれば大丈夫だ~♪」
「火ちゃんの青春パワーで乗り切ろう~♪」
「確かに人で不足は否めないですね。」
「そうですね、周防だけでなく、九州も心配です。」
これ以上、進軍するには、あきらかに人材不足であった。
「最近、この辺りには、牛頭天王という、牛頭の化け物が出るそうでごぜる。」
「化け物だと!? また鬼が出るのか!?」
「数が少ないのを祈ります。」
「とりあえず銀山の尼子の兵士を追い払いましょう~♪」
「牛頭の化け物・・・まさか・・・あの人は西之島にいるはず、こんな遠い場所にはいないはず・・・でも、牛頭の化け物・・・。」
ライには、ある人物のことが頭をよぎった。
「あれは!? 噂の牛頭の化け物でござるか!?」
「俺がやっつけてやるぜ!」
「いけ! 道雪! 青春が許す~♪」
「あ、あ、あれは・・・!? 」
「いくぞ! 牛頭! 千鳥雷切り!」
「い、いけない!? やめるんだ! 立花さん!」
「モウ!?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
牛頭が殺気に気づき、気合だけで、剣を抜き斬りかかった、道雪を吹き飛ばす。
「死ね!」
「な!?」
牛頭の化け物が道雪をロックオンして、斧を振り上げ道雪を殺そうとする。道雪も今まで鬼や妖怪と戦ってきたが、今回の牛頭の化け物は、殺すと言えば殺すというスケールを感じる、「死」を直感的に感じるのだ。
「ギュウさん!!!」
ライの大きな叫び声に、牛頭の化け物の斧を振り下ろすのを途中で止める。そしてライを見て、笑う。
「ライ!? ライじゃないか~♪」
「ギュウさん、お久しぶりです。」
「ライ、おまえ元気にしてたのか? 突然いなくなったからおふくろさんとチイが心配していたぞ。」
「そうですね、海で溺れたら、船に助けられたら、琉球に着いちゃったんです。」
「そうだったのか。」
「そういうギュウさんは、どうして西之島から遠い、石見なんかにいるんです?」
「おまえがいなくなってから、西之島でも少し事件があってな。隣の出雲にアマも来てるぞ。」
「アマさん!? アマさんも来てるんですか!?」
「おお、アマが石見に行って、軍資金の銀を掘ってこいって言うんだ、相変わらず人使いが荒いだろう。」
「でも、怒らせるとアマさんは怖いから・・・。」
「だよな! ハハハハハッ!」
ライが牛頭の化け物と仲良く話しているのを、外野の3人は安全な場所から見ている。
「あのガキ、竜と知り合いの次は、牛頭の化け物と友達か!? どんな人間関係してるだ!?」
「火ちゃんも火竜さまの使いですよ~♪」
「そんなこと知るか!?」
「まあ、まあ、ライ殿のおかげで、命拾いしたんですから。」
「そういえば、忍者がいないぞ!? どこに逃げやがった!?」
「逃げ足の速さは、さすが忍者だ・・・。」
「ああ~! 鬼だ、妖怪だ、化け物だ、こんな旅、もうイヤだ!」
「ハハハッ・・・。」
3人は牛頭とライにビビっていた。それを見たライは、
「ギュウさん、牛頭を辞めてくれませんか、仲間が怖がっています。」
「仲間!? おまえが誰かとつるんでいるとは・・・。そういえば、さっきからの会話も普通だ!? ライ、どうしたんだ!?」
「ハハハ・・・。実は海竜さまに、心の穢れを祓われてしまったんです。」
「それで、今のおまえからは殺意が感じられないのか・・・。」
「ギュウさん、牛頭を。」
「すまん、すまん、ホイ。」
ギュウさんは、牛頭をなおし、人間の顔に戻った。外野の3人が恐る恐るライに近づいてきた。
「こちらは、西之島でお世話になっていた、ギュウさんです。」
「ギュウです。ライがお世話になってます。」
「島津歳久です。こちらこそ、ライには助けられています。」
「火ちゃんです~♪ 再会は青春だ~♪」
「忍者の睦月ちゃんでござる。」
「あ!?一番早くに逃げたくせに戻ってきた!?」
「立花道雪だ。よろしく。」
「さっきの弱い奴。」
「なんだと!?」
「まぁまぁ、立花さん。」
ライは、ギュウさんに歯が立たなかった立花をなだめる。
「ギュウさん、銀山の尼子の兵士を追い払ってくれませんか?」
「お安いご用だ!」
ギュウさんは、天羽々斬之剣を構え、銀山に向けて、一振りした。レーザービームのようなものが銀山に放たれた。
「ドカーン!!!」
「ええ~!?」
銀山は空に銀を巻き上げながら吹き飛んだ。ライ以外の4人は、「なんという破壊力だ!?」と、目が飛び出るほど驚いた。
「ライ、銀を拾っとけ。」
「はい、ギュウさん。」
「ライ、俺も手伝うぜ。」
「私も銀を拾います。」
「火ちゃんは銀を拾うのが大好きです~♪」
「旧暦12分身の術! みんな銀を拾うんだ!」
「おお!」
「ギュウさん、いえ、殿! 何なりと忍者の睦月ちゃんにお申し付けを。」
こうして、石見を制覇し、出雲を目指す。
つづく。
「ライ~♪」
「アマさん・・・。」
アマという、綺麗な女性がライを見るなり抱き着いてきた。彼女は、西之島でライを弟のように可愛がり、荒んでいた心を心配もしていた。何よりも行方不明になっていたライに会えて嬉しかった。
「ライ~♪ 生きててよかった~♪」
「アマザン、グ、グルジイイ・・・。」
「ごめん!? うれしくて、つい~♪」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・死ぬかと思った・・・。」
アマさんは、小粋な大人の女性であった。
「アマは、ライの姉みたいなものだ。西之島では、劇場で女優と責任者もしていた。それは、大人気だったんだぞ。」
「離れ離れになった姉と弟が再会する! まさに青春だ~♪」
「俺にはライの人間関係が未だに分からねえ。」
「あ、また忍者が1番に逃げているぞ。」
忍者の睦月ちゃんは、危険を察知すると身を隠すのだ。
「アマさん、どうして西之島から遠く離れた、出雲にいるんですか?」
「天の岩戸にバカンスに来たんだ~♪」
「ギュウさんは、事件があったって言ってましたが?」
「あの、おしゃべり牛頭野郎! 余計なことを、ライにしゃべりやがって!」
「事件てなんですか?」
「お頭のとこの一人息子がいたの覚えてるか?」
「口だけ達者な、カーのことですか?」
「そう、あのバカが、ナミさんを殺してしまったんだ。」
「ええ!? ナミさんを!?」
「そして、島を出て、日本のどこかに逃げ込んだらしいんだ。お頭のナギさんの命令で、はるばる日本まで来て、バカ探しさ。」
「カーの奴、実の母親を殺すなんて・・・。」
「ところでライ、お前は何をやってるんだ?」
「かくかくしかじか。」
「キャハハハハ~♪ それで、おまえから殺気がしないのか~♪ 仲間って言っても少ないな、人数が足りてないんじゃないか? まぁ、いい。再会した、ついでに、ここ出雲は、尼子晴久の領土で、1番厄介なのが、あの月山富田城だ。籠城されると落とすのは難攻不落とも言われている。」
「それは困りました。」
「俺が天羽々斬之剣で破壊してやろうか?」
「黙れ! 牛頭! ライがせっかく私を頼って来てくれているんだ! 私が滅ぶしてくれるわ! ハハハハハッ!」
「そんな言い方しなくても・・・。」
「化け物でも、鬼でも何でも出てきやがれ! ライに危害を加える奴は、私が滅ぼしてくれる! 太陽光線。」
そういうとアマは、手を振り上げ、太陽を指さし、月山富田城に指を振り下ろした。太陽の光がお城に向けて放射され、お城に命中した瞬間、
ドカーン!!!
大爆発が起こり、お城は跡形も無く消えてしまった。
「どうだ~♪ ライ、見てくれたか~♪」
「さすがアマさん~♪」
「そうだろう~♪ そうだろう~♪」
「俺だって、あれぐらい・・・。」
「ギュウさん、すねないで下さい。」
この光景を普通と思っている西之島組と、
「俺、これからはライに優しく接するわ・・・。」
「それがいいでですね・・・。」
「人との付き合い方を学ぶのも青春だね~♪」
想像以上の出来事に、表情が引きつる九州制覇隊であった。
「殿! 旧暦家の忍者、睦月ちゃんは、殿に死ぬまでついていきまする!」
「私のことはいい、もう少し出雲でバカ息子を捜索するつもりだし、誰かが攻めてきても、1瞬で太陽の藻屑にしてくれる。だから、ライのために働いてくれ。」
「殿、かしこまりました。」
「あのゴマすり忍者、牛頭の次は、太陽女かよ!?」
「やめろ! 道雪! 聞こえたら殺されるぞ!?」
「変わり身の術が得意なのも忍者だよ~♪ これも青春だ~♪」
「どこが青春だ!?」
「ギュウ、おまえも追放だ。ライについていけ。」
「そんなぁ~!?」
「ハハハハハッ!」
こうしてライたちは、出雲も制覇した。
つづく。
「雨の多い土地だな。」
出雲でアマと別れたライたちは、伯耆やって来た。なぜか雲に覆われていて、雨ばかり降り続いていた。
「そうですね。ギュウさん。」
ライ、ギュウ、島津歳久、立花道雪、火ちゃんは、雨の中を進軍している。
「この国は、元々、尼子の領土だろ? 尼子が滅んだ今、空白地だから、さっさと占領してしまおうぜ!」
「そうだな、周防の義弘兄と鍋島が安芸の毛利に攻め込まれていなければよいが・・・。」
「大丈夫ですよ、2人とも強いんだから。」
「攻めるも守るも青春だ~♪」
「あ、あれは睦月ちゃん?」
そこに偵察に行かされた、忍者の睦月ちゃんが必死の形相で駆け足で帰って来た。
「た、大変でござる!?」
「どうした?」
「一大事でござる!?」
「だから、さっさと言え!」
「お城に8つの頭と8つの尾をもった、「ヤマタノオロチ」という巨大な怪物がいたでござる!?」
「なに!?」
「また歴史に名を残す者の新型の鬼かな?」
「鬼2は、頭が2つあったからな?」
「忍者が初めて役に立ったぞ~♪」
「初めては、余計でござる。」
「ハハハハハッ!」
「ギュウさんは、歴史に名を残す者のことは知ってるんですか?」
「いや、知らない。過去に死んだ歴史の偉人なんだろう?」
「はい、そうみたいです。」
「どこの誰だか知らないけれど、死者の魂を冒涜するとは許せないな。俺がぶった斬ってやる!」
と言っている間に、お城に着く。お城では、ヤマタノオロチが待ち構えていた。
「あれがヤマタノオロチ!?」
「本当に頭が8つもある!?」
「歴史に名を残す者たちの姿が見えないな、あいつらが作り出した化け物じゃないのか?」
「ワンワン!」
「ハチ!? 昔、ライが飼っていた犬じゃないか!?」
「これはハチの霊ですよ。ハチは父上と一緒に殺されましたから。ハチの霊は、妖怪や化け物を見つけると、吠えて教えてくれるんです。」
「へえ~、ハチ、偉いぞ。」
「ワン~♪」
「化け物の上に雨雲が発生してるんですけど、もしかしてコイツが雨の元凶?」
「そうかもしれない、とにかくヤマタノオロチを倒すんだ!」
「おお!」
こうして、ライたちは、ヤマタノオロチとの戦闘が始まった。
「ギュウさん、お願いします~♪」
「一撃で粉砕してくれる! くらえ! 天羽々斬之剣!(あめのはばきりのつるぎ)」
ギュウは、剣を振りかざし、ヤマタノオロチに斬りかかった。
カキン!
天羽々斬之剣が欠けてしまった。
「なに!? 俺の剣が!? うわ~あ!?」
「なんて固い皮膚をしてるんだ。」
「いかん! 戦闘準備! 戦闘準備!」
「戦いが久しぶりで、どう戦っていいやら!?」
「やっぱり戦だよ~♪ これが青春だ~♪」
「もう忍者の奴、姿が見えないぞ!?」
「退避OKでござる。(物陰より。)」
あ・・・第2部に入って、もう5国目だが、主人公のライが戦闘をしたことがなかったことに気がついた。そんなライたちを尻目に、ヤマタノオロチは8つの口から、ボ~っと炎を吐いた。
「火ちゃん。」
「なんだ? 道雪?」
「確か、火の精だよな?」
「そうだ。火ちゃんは、火の精だ~♪」
「なら、火に強いはずだよな~、はい!」
「ギャア!?」
道雪は、ヤマタノオロチの炎を、火ちゃんを盾にして防いだ。
「道雪! おまえ、火ちゃんを殺す気か!?」
「どうでもいいよ。歳久、ライ、3人で同時に飛び込むぞ!」
「おお!」
「千鳥雷切り!」
「二竜雷剣!」
「歳久、普通切り!」
3人はヤマタノオロチに斬りかかるが、逆に、跳ね飛ばされる。
「うわぁ!」
「くそう、ヤマタノオロチには何も効かないのか?」
「ここは一時撤退も?」
「あれ? ギュウさん、さっき斬りかかったヤマタノオロチの尾が光ってますよ? あれは何でしょう?」
「これは、剣だ!? この剣は伝説の天叢雲剣だ!? なんで神剣がヤマタノオロチの尻尾なんかに入ってるんだ!?」
尻尾から剣を取り出したギュウは、ヤマタノオロチで天叢雲剣を試し切りすることにした。
「えい!」
ギュウは剣を振り上げ振り下ろす。剣からレーザービームのようなものが放たれた。
「ギャアアアア!!!」
ヤマタノオロチを倒した。ヤマタノオロチは、真っ二つになり、断末魔の悲鳴をあげて崩れ去った。ライたちは、勝ったのである。
「火ちゃん、こんなんでいいのかな?」
「いいのだ~♪ 青春なんだから~♪」
こうして、ライたちは伯耆も制覇したのである。
つづく。