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制覇! 2 中国四国編  作者: 渋谷かな
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第2回 バカ息子、体を手に入れる

このキャラだけで1話の割り当て、5000字を書けるかは不安である。しかし、そこら辺の書籍みたいに、細かく細かく描写をすれば、きっと文字数はクリアできるはず。なぜ、こんなどうでもいいキャラを独立させてしまったんだろうか?



「ここが本土か・・・。」


カーは本土にたどり着いた。ちなみに現在のバカ息子、カーの現状。西之島でナギとナミの子供として生まれた。カッとなって、母親のナミを殺してしまう。そこに父親のナギが出くわし、神剣、天之尾羽張あめのおはばりで、息子カーの首を切り落とす。しかし、カーの頭は死なず、首だけで空を飛んで、本州までやって来たのだ。新しい体を求めて。カーは、妖怪か化け物のようである。


「どこかに強い体は落ちていないかな。」


カーは、本州の空を飛んでいる。さすがに低空飛行をして、人間に顔だけの姿を見られるわけにはいかない。パニックになってしまうからだ。


「なかなか、体は落ちていないな。」


簡単には、いい具合の体は見つからないようだった。


「どうする? そこら辺の人間を殺して、体を手に入れるか? 安易過ぎる。もしその人間から離れることができなくなったり、その人間が殺されたら、俺も死ぬことになったらどおする? せっかく、首だけになっても生きているんだ。強靭な体を手に入れて、俺は世界を制覇するんだ!」


皮肉にも、主人公のライと同じように、世界制覇を企んでいる。ちなみにカーは、西之島にいる時は、ライに1度も勝ったことが無い。


「そうだ! ライのクソ野郎を殺せる体がいい! そうしよう! 俺様は強くなるのだ! ライなんか、けちょんけちょんにしてやるんだ!」


カーは、ライに対して、劣等感を感じていた。なぜ、同じ年齢で、なぜ、同じ剣士で、なぜ、俺様とライは、こんなにも違うんだ!? なぜ、ライはこんなにも強いんだ!? ・・・勝てない、・・・勝てないと自問自答していた。仕舞には、ライが強いのは剣が神剣だからだ! っと、いちゃもんを付けたりもした。それでも、実力差のあるライには、1度も勝てなかった。


「ああ、分かっているさ。島長の息子として、ぬくぬくと甘えて育ち、わがままで自分勝手に生きてきた俺が、子供の頃からコロシアムで、家族の生活のために命懸けで戦ってきたライに勝てるはずがない。」


カーはカーで、今回、首だけになり、自分は死んだんだ。1回死んだんだと思うことで、精神的な幼さが無くなり、幼稚な部分が無くなった。大人になったというか、大人らしくなったのだ。


「お腹も減ってきたな・・・頭だけなのにお腹は空くのか?」


首だけだが、脳みそが首より上には付いているので、脳が食事の時間を記憶しているのかもしれない。何か食べ物を口に入れたくなったカーは、とりあえずの自分の器を探す。


「あれでいいか。」


カーは、上空から急降下する。新しい体を見つけたのだ。そこは、田んぼのど真ん中だった。


「これが俺の新しい体だ!」


カーが見つけた体は・・・案山子だった。カーは、田んぼのスズメ対策に立てられている、ぼろそうな案山子に頭をセットして、案山子として、動き出した。服装は上着は、ぼろそうな布だけだった。これなら、この体に何かあっても、自分は死ぬことはないと、カーは思ったから、人間ではなく、モノである案山子を選んだ。


「首は生首で、体は案山子か、面白い。いまの俺には、今までの人生を反省するには、ちょうどいい体だ。」


カッコつけのカーだったが、生首になり、今までの体があった普通の暮らしを送っていた日々を反省していた。もっと真面目に、もっと一生懸命に生きていれば良かったと。案山子の体は、自分に対する罰である。戒めのつもりで、案山子の不便な体を楽しんでいる。


「ああ!? しまった!? 空が飛べなくなったのに、どうやって食堂まで行けばいいんだ!? クソ!?」


辺りには、田んぼが広がっていた。収穫前の金の稲穂が実っていた。カーは、稲穂をかきわけ、農道に出る。


「よっこいしょっと、ここからどこに行けばいいんだ?」


カーは、方角も土地の名前も知らずに歩き始める。すると、前から山賊が現れる。この場合は農地に現れるから、農賊か?


「そこの案山子みたいなやつ、持ち金を置いていけ! そうすれば、命は助けてやるぞ! へへへへへ!」

「ふ~ん。」


賊は、3、4人で、剣や鎌を持っている。見るからに悪そうな奴らだ。また悪そうな奴らというのは、雑魚そうに見えるものだ。カーには、そう見えた。きっと、ライには自分が調子がいいだけ、どれだけ体を鍛えても、どれだけ運動神経が良くても、雑魚に見えていたはずだ。立場が変わり、カーにも、それが分かるのだ。自分がどれだけ小物だったのか、ということが。


「刺すならさせばいい。」

「何!?」

「心臓に、その鎌を突き刺してみろ。」


カーは、賊を挑発した。おそらく顔を攻撃されるとダメージを受け、命の危険があるので、さりげなく心臓を相手が攻撃するように。


「やっちまえ!」


賊が、襲い掛かってきた。1人は鎌を心臓に突き刺し。もう1人は、鎌で首を狩った。はねられた首が道に転がる。本当の人間ならこれで死んでいる。


「どうでい!? でかい口を叩くからだ!」

「おい、どうした?」

「か、か、案山子だ。案山子だべ!?」

「はぁ?」


心臓を鎌で突き刺した賊のおっさんが、案山子の胸元を探る。確かに、案山子なのである。心臓なんか無かった。じゃあ、さっきまで動いて、話をしていたのはいったい!? 賊たちは、世にも奇妙な話に、背中がゾクッとしてきた。


「クククッ、やっぱり案山子の体ではダメか・・・。でも鎌で切り落とせば、憑りついても、着脱は可能みたいだな。喜べ。おまえたちみたいな賊が、俺の役に立ったぞ。」


首を狩られて落ちた生首が、クルっと回って、賊の方を向いた。その異様さは、まさに妖怪であった。賊たちは、震え怯え、この世のものを見ているような目ではなかった。


「ヒィーーーーー!? お化け!?」

「もののけだ!?」

「妖怪だ!?」

「逃げろ!?」


賊たちは、悲鳴を上げて、一斉に逃げ始めた。しかし、1人だけ、腰が抜けて逃げ出すことができなかった。


「待ってくれ! 腰が抜けて、動けねえ!?」


恐怖に呑み込まれた賊の男は、動くことができなかった。


「お前の体を頂くぞ。」


ギャア!? と、賊の男が悲鳴を上げると同時に、男の首は体から跳ね飛ばされた。カーの髪は、人間の首を胴体から切断するぐらいの切れ味があった。髪の毛を刃物のようにしたのは、カーの意志だろうか。


「まずそうな体だ。」


農賊の体なので、ちょっと臭いが、新しい体を手に入れた、カーは農家のある村を目指して歩き出す。



カーは、村にたどり着いた。お米の収穫時期ということで、村人たちは笑顔で大いに賑わっていた。お米が豊作なのが、嬉しいのだ。


「おまえ誰だ?」

「カー。おまえは? 与作。」

「ここは、どこだ?」

「伯耆の国だよ。」

「伯耆?」


カーよりも少し小さい男の子が声をかけてきた。カーは、ライに勝てる強靭な体を求めて、フラフラとここまでやって来た。西之島の住人で、初めて本州にやってきた、カーに土地勘は無い。


「どこかに、ご飯を食べられる所はないか?」

「あるよ。こっち。」


カーは、与作という子供に連れられて、食堂まで案内してもらった。道中、カーは街並みを見て不思議がる。西之島は、世界からお客さんがやって来るので、エレキテル文化が発達していた。それに比べ、本土の街は電気・電灯というモノは、一切なかった。遅れてる・・・と、ガッカリしていた。


「おりゅうちゃん、お客さんを連れてきたよ。」

「あ、与作!」

「カー、こっち、こっち。」

「どうも。」


小学生くらいの与作に連れてこられた食堂は、与作の友達、おりゅうの両親が経営する小さなお店だった。席に案内されたカーは、手に入れた新しい体の懐にあった財布を取り出し、中のお金を確認した。小銭が約2000円ぐらい入っていた。これは農族が、誰かから巻き上げたお金なのだろう。まあ食べれるから、いいやと思うのであった。


「何がおいしいの?」

「お米と野菜かな。」

「じゃあ、それを。」

「はい。お米と野菜1人前!」

「はいよ。」

「お米と野菜、喜んで!」


両親のお手伝いをしている、おりゅうが注文を聞き、料理する親に注文を通す。まだ10才ぐらいなのだが、与作は、おりゅうが好きそうだった。


「おりゅうちゃん、おら、役に立つでしょ。」

「そうね。ありがとう。」

「わ~い~♪ おりゅうちゃんに褒められた~♪」


子供の温かい光景を見ていると、クスっと思わず笑ってしまった、カーであった。西之島で母親のナミを殺してしまってから、首だけになり、本州まで空を飛んでやって来て、ここまで心が休まることが無かったのだ。子供たちを見ていると、心が和んだ。


「はい、お米と野菜、お待ちどうさま。」

「うわあ!? おいしそう~♪」

「おいしいんだって!」

「そうだね!? おいしい。ははは・・・。」


料理は、ご飯と温野菜、それにお汁が付いていた。温かくて、美味しそうにだった。料理を運んできたのは、おりゅうだった。


「偉いね。お手伝いして。」

「働かざる者、食うべからず!」

「え!?」

「これがうちの家訓よ!」


しっかりし過ぎていて、おりゅうは、可愛げがなかった。与作は、おりゅうのどこが好きなのだろう? そこにおりゅうの父親がやって来て、話に加わる。


「すまねえな。店をやっているもので、気の強い娘に育っちまった。」

「いえ、将来が楽しみですよ。お米も野菜もおいしいです。」

「それは良かった。でも、お米も採れるかどうか、心配だったんだ。」

「え? そうなんですか?」


何の問題も無さそうなのに、どこに住んでいても、事件はあるみたいだ。


「最近まで、ずっと雨が降っていてな。お米の収穫は無理と思っていたんだ。でも、あるお侍さんが、8首竜を退治したら、そのお侍さんと一緒に、雨雲も去って行ったんだ。」

「雨雲に呪われたんですね。」

「村人たちは、呪われないように裏山に8首竜の亡骸を丁重に埋めて、埋葬したんだ。龍神さまにするんだとよ。そうそう、名前が・・・八岐大蛇ヤマタノオロチと言うらしい。」

「ヤマタノオロチ・・・。」


カーは、その8首竜に、何か心が惹かれるものがあった。これがカーにとって、運命の出会いになることを、まだ知らない。


(製作委員会という形を取らずに、今回はストーリーを書いているのだが、1話5000字チャレンジ中だが、あっという間に5000字を超えそうだ。ということで、最低5000字ということにしよう。今まで、製作委員会は5000字で無理やり終わっていたが、ストーリーにすると、終わるのが無理だから。)



「死ね!」


いきなり農賊が食堂に入ってきて、おりゅうの父親を鎌で突き刺して殺した。おりゅうは、目の前で起こった衝撃的な出来事に震えて、立ち尽くしている。


「ギャア!?」

「お父さん!?」


農賊が4、5人、食堂に乱入してきた。次に子供のおりゅうまで殺そうと鎌を放り投げた。しかし、おりゅうの母親が飛び込み、身を犠牲にして、子供を守る。


「危ない!?」

「お母さん!?」

「おりゅう・・・逃げて・・・。」

「お、お母さん?」


母親の背中に鎌が刺さっている。おりゅうは一瞬にして、父と母を失ってしまった。ちいさなおりゅうの手には、母親の血がべっとりと付いている。


「イヤー!!!」


おりゅうの叫び声が店内に響く。ご飯を食べ終わって、くつろいでいた、カーにも聞こえる。子供の悲鳴は、カーを動かす。


「村人は、女子供も皆殺しだ! 今日でこの村を滅ぼすぞ! ケケケ!」


農賊たちは、鎌を振り回して、ニヤニヤ汚い笑いを浮かべている。その魔の手は、おりゅうに迫ろうとしていた。


「お嬢ちゃん、直ぐにお父さんとお母さんに会わせてやるぜ! ケケケ!」


そこに、子供の与作が農賊とおりゅうの間に割って入る。


「おりゅうちゃんに近づくな!」

「与作!?」


与作は、足だけでなく、全身が震えながらも、大好きなおりゅうを守ろうとしている。両手を広げ、大の字で農賊の行く手を阻む。農賊は、与作をバカにするように、一歩一歩、子供たちに近づいて行く。


「ああ!? 正義のヒーローのつもりか!? 二人まとめて殺してやるぜ!」

「与作、私を置いて逃げろ!」

「俺が時間を稼ぐから、おりゅうちゃんが逃げて!」


与作は、自分は死ぬと思った。それでも、自分が死んでも、おりゅうちゃんだけは助けたいと思った。農賊が鎌を振り上げる。


「ギャア!?」


農賊の体を、カーの伸びた髪の毛が突き刺し、貫通した。農賊は、即死である。そこには、空飛ぶ生首になった、カーがいた。


「な、なに!?」

「カー!?」


おりゅうも与作も、我が目を疑った。農賊が倒されたのだ。そのことよりも、カーの髪の毛が伸び、剣のように鋭く尖っているのだ。


「よ、妖怪だ!?」

「もののけだ!?」

「化け物だ!?」

「お頭に知らせてくるぜ!」


農賊たちは、あたふたしているが、鎌を持っているので、自分たちは偉いんだ! 自分はすごいだ! と自分のことをバカなので勘違いしている。


「ふう。」


カーは、一息ついて思う。昔の自分もライに対して、よく犬のように吠えていたと。他人を見て初めて自分のことがよく分かる。嫌なものだ。ふと、カーは子供たちが視界に入る。


「怖い?」


カーは、子供たちに、自分の異様な姿が怖くないか尋ねる。農賊に声を荒げる前に、不安定な子供たちを気遣い、先に尋ねた。


「カーは怖くないよ。」

「お、お願い! お父さんとお母さんの敵を討って!」


子供たちの目には涙が、その眼差しに、カーは決意して、農賊に向かっていく。こいつらを皆殺しにすると。


「ギャア!?」


農賊の1人が、カーの尖った髪の毛に刺され殺された。残り2人の農賊たちは、食堂の外に逃げ始めた。


「ギャア!?」


背中を向けて逃げるので、カーは背中から伸ばした髪の毛で農賊を貫いて殺した。


「待て!」


逃げる農賊を追って、カーも外に飛び出す。


「なに!?」


外の光景を見て、カーの足は止まった。逃げた農賊を追うのを止めたのだ。


「なんだ!? これは!?」


カーの目に映し出されたものは、村が燃えていた。至る所で農賊に火を放たれて、家や店が村全体が燃えていた。逃げる村人は、無抵抗のまま、農賊に殺されていく。


「村人を殺せば、お米は全部、俺たちの者だ! ケケケケケ!」


農賊のお頭らしき者がいた。殺せ! 殺せ! と村人を殺戮していく。村は農賊に蹂躙されていた。農賊は、100人以上の大軍勢だった。真面目に働いて、田んぼを耕すよりも、他人が汗水働いて、作り上げたものを、かっさらっていく方が、簡単であると、農賊は気づいてしまったのだろう。


「なんてことを!?」


カーは、村の変わり果てた姿に、愕然とした。そして、自分一人なら、体を捨てて逃げれば、助かることが可能だが、子供たちはどうする!? 放っておいたら、確実に殺される。髪の毛が伸びた化け物のような、自分を怖くないと言ってくれた子供たちを、見捨てるのか!? どうする!? と心の中で葛藤した。


「おまえら、生きたいか?」


カーは、食堂の中に戻り、子供たちに急ぎ尋ねた。


「い、生きたい! おりゅうちゃんを助けて!」

「裏山に逃げよう! そこまで農賊も追って来ないよ!」


与作もおりゅうも、子供ながらに自分の意志を持っていた。生きたい! そう思える子供たちが、言い訳や文句ばかり言ってきた、カーは自分よりも大人に見えた。


「行こう! 裏山へ!」

「うん!」


カーは、子供たちを連れ、裏山に逃げることを決心する。おりゅうが最後に父親と母親の遺体を見るのは、サヨウナラと、まるでお別れを言っているようだった。


「行くぞ!」

「おお!」


カーと子供2人は、裏山を目指して走った。途中に遭遇した農賊は、カーが髪の毛を、グサグサっと突き刺して殺していった。農賊の返り血は、与作にもおりゅうにも付いている。子供なのに血にまみれてしまった。これも平和ではない、時代が悪いと思うしかなかった。



「は、は、は。ここまで来れば、大丈夫だろ!?」


カーと子供たちは、何とか裏山に到着することができた。


「おりゅうちゃん、大丈夫?」

「大丈夫、少し安心したら、力が抜けただけ・・・。」


おりゅうも与作も、1度にたくさんの残酷なことを目にして、ドッと疲れが押し寄せてきた。無理もない、まだ子供なのだ。こんな悲惨な光景は、夢か幻であってほしいと思いたい。


「おまえたちは、見つからないように隠れていろ。」

「カー?」

「俺様が、全て殺してくる!」


カーは、村に戻り、農賊を皆殺しにしてくると言うのだ。恐らく、もう村人は生き残ってはいないだろう。また、あれだけ大量の賊を相手にした場合、自分も顔に攻撃を受ければ、倒されてしまうかもしれないというリスクがあり、恐怖を感じないことは無い。


「カー、危ないよ!?」

「カー、行かないで!?」

「おまえら・・・。」


子供たちは、カーを心配してくれる。自分たちが、親を殺され、村を焼かれたのに、自分のことよりもカーを心配している。カーは、おりゅうの両親や村を守れなかったことが、自分の心を痛くする。締め付けられるようだった。


「俺様なら、大丈夫だ! すぐに片づけて、ここに帰ってくるよ。」


カーは、子供たちの頭を撫でてあげる。納得はしていないが、子供たちは、カーを止めることができない。子供たちには、親や村の敵を討ってほしい、という気持ちよりも、誰にも死んでほしくない、カーにも生きてほしいと思っているのに・・・。


「カー!」


カーは、燃え盛る村に向けて、山を走って降りていく。子供たちは、カーの後姿を見守るしかできなかった。そして、新しく山にできたばかりの祠にお祈りをした。


「龍神さま、カーを助けてください!」

「八岐大蛇さま、農賊を倒してください!」


子供たちの健気な、儚い願いに、山が少し光、山が少し動いたような気がした。


「クソ!!!」


山を降りていくカーには、不安があった。あまりの多勢に無勢。勝てる見込みはなかった。カーは、死ぬ気だったのかもしれない。



「あいつだ! あれが化け物だ!」


カーは、村まで戻ってきた。村人は、大人も、女子供も、鎌が刺さっていたり、血を流して死んでいた。生き残っている者はいなかった。農賊どもが戦利品で宴会を開こうとしていた。


「気をつけろ! 髪の毛が伸びて、刃物みたいになるぞ!」

「構うもんか! 一斉にかかれば、簡単に殺せる! なんたって、こっちの方が人数が多いんだからな! やっちまえ!」

「おお!」


カーは、あっという間に農賊に囲まれた。囲まれたというより、自ら道の真ん中を進み、農賊のお頭がいる、広場までやって来た。農賊は、数の理を活かし、カーに一斉に襲い掛かる。


「ギャア!?」


カーは髪の毛をハリネズミのように四方八方に尖らせ、投げられた鎌を防ぎ、襲いかかってくる賊どもを、突き刺して殺しまくった。周囲には、血の匂いが漂う。


「う!? なに!?」


カーは、わき腹を見た。農賊が鎌をカーに突き刺している。刺した農賊は、ニヤッと笑う。そして刺した鎌で、カーの肉体の肉を引き裂く。


「それ! おまえら! 一気にやっちまえ!」

「おお!」


お頭の合図に、カー目掛けて鎌が飛んでくる。賊が手で鎌で切り付けてくる。


「グワッ!?」


鎌が、カーの額に刺さる。これは空飛ぶ生首のカーに取っては、致命傷である。額から血が流れる。カーの視界がグラグラ揺らいで地面に倒れていく。


「ゲフッ!?」


カーは、意識を失った。



「俺はどうしたんだ? 死んだのか?」


カーの心の中、意識だけあるエテール、カーの精神体である。カーからすると、自分は死んでしまい、幽体離脱してしまったような感じである。


「俺は、村を救うことができなかった。あの子たちは、どうなった!? 無事に生き残ることができるのか!?」


悪さばかりしてきた、愚かなバカ息子だった。そんなカーに、人を心配する心が、生まれた。自分の母親を殺してしまった罪を後悔したからなのか、父親に体を切り落とされ、不便な生首生活を送ったからだろうか。五体満足で、島長の息子として、何をやっても許されてきた時には無かった、他人を思いやるという感情である。


「おい! そこの生首!」

「え?」


どこかからか声が聞こえてくる。


「私は、八岐大蛇。この地で死に、この村人たちに、龍神として、祠まで作ってもらったものだ。」

「竜の化け物!?」


声の主は、8首竜の八岐大蛇だった。


「子供たちが、おまえに力を貸してほしいとお願いをした。」

「あの子たちは無事なのか!?」

「今はまだ無事だが、農賊に見つかれば殺されるか、子供だけで生きていくのは難しいだろう。」

「そんな・・・。」


カーは、子供たちを助けることができなかったことに、落胆し絶望する。そんなカーに八岐大蛇は、ある提案をする。


「子供たちを助けたいか?」

「助けたい!」

「どうしてだ?」

「あいつらは、俺みたいな奴を、心配してくれた。俺みたいな、どうしようもない奴を、信じてくれた!!!」


八岐大蛇の問いかけに、感情が高まり、カーは声を荒げる。カーの思いを本気、本音だと、竜は受け止める。村人に亡骸を大事に山に埋めてもらった恩もあり、八岐大蛇は、力を貸すことを決心する。


「私と契約しろ。」

「おまえと!?」

「私は、8つの命があり、まだ7つの命が残っている。そのうちの1つをおまえにやろう。そうすれば、おまえは生き返ることができる。」

「本当か!?」


八岐大蛇は、なんと首の数だけ命を持っていた。1つはギュウに殺された。しばらくの休眠期間を過ぎれば、自然に蘇るのかもしれない。


「だが、おまえは体が無いので、私の体を使うことになるがよいか?」

「弱っちい体じゃないだろうな?」

「これでも九頭竜に次ぐ、8首竜なんだがな?」

「2番手か・・・それでもいいや。子供たちを守ることが優先だ。それに、2番手でも、2番手からでも、1番を倒して、俺様が1番になるんだ!」


カーの子供たちを助けたいという想いは、自分勝手でわがままし放題の自己中心的な心を壊した。それどころか、自分が1番、強く、偉くなくてもいい、1番を目指せばいい、という向上心まで、目覚めさせたのだ。このことは、カー自身は、まだ気づいていない。


「契約成立だ。話が名を叫べ!」

「八岐大蛇!!!」


エテールな精神世界で、カーは、竜の名前を力強く叫んだ。



「お頭、この化け物、大したことありませんでしたね。」

「俺たちにかかれば、どうってことないぞ!」

「ケケケケケ!」


カーの死体の前で、農賊たちの村人を虐殺して、略奪した食料と酒で宴会を開いていた。こいつらにとって、人の命に価値は無いのだろう。


「そんな汚いの、どっかに捨ててこい! 酒がまずくなる。」

「へい。ただいま。」


農賊の頭に言われて下っ端が、カーの死体を捨てるために手で掴もうとした時だった。死んだはずのカーの目がパカっと見開いた。


「ギャア!?」


下っ端が悲鳴を上げた。


「どうした?」

「し、し、死体が動きました!?」

「なに!?」


お頭は飲んでいたお酒を口から吐きだした。農賊たちの目の前に胴体を切り離した、カーの生首だけが宙に浮いている。目を開いていて、意識があるのだ。


「生首!?」

「ヒイイイイ!? 化け物だ!?」


農賊たちは、世にも異様なモノを見て、背筋がゾクッとしていた。恐怖で動くことはできず、ただ身震いをするだけだった。


「来い、八岐大蛇。」


生首のカーが、そう言うと8つの首のある竜の光のようなものが、裏山から、カーを目掛けて飛んできた。そして、生首と竜の光は、雷に打たれたような、激しい光を放ちながら、1つになった。


「これが俺の新しい体・・・。」


カーは、自分の体を見回した。普通の人間の体と言えば、普通の人間の体にしか見えない。それでもカーは竜人の体を手に入れた。


「化け物め! 死ね!」


農賊が鎌を投げてきた。しかし、鎌はカーの体に当たって、跳ね返される。竜の鋼鉄の皮膚を鎌ごときでは傷つけることはできない。


「すごい!? 肌の強度が、竜並みに硬いのか!?」


その強靭な肉体に、カー自身も戸惑い、驚いた。


「我をまとえ!」


さらに竜は、カーに語り掛ける。カーの体に八岐大蛇がまとわりついていく。そして8首竜の鎧になる。色は緑で、背中から8つの竜の首が生えている。


「これは!?」

「八岐大蛇の鎧だ。おまえは、竜の侍に選ばれたのだ。」

「竜の侍!?」

「竜に認められたものは、その竜の鎧を着ることができる。おまえの子供たちを守りたいという気持ちを、私が認めたのだ。」


カーは、どうしようもないバカ息子だったが、八岐大蛇に竜の侍に選ばれる。これは、才能や努力ではない。これなることが、カーの運命なのかもしれない。


「さっさと終わらせよう。」

「おお!」


カーの八岐大蛇の鎧には、剣も付いていた。鞘には、8首竜の絵がカッコよく書いてある。柄頭には、8つの竜の頭が付いている、見るからに豪華そうな作りであった。カーは、八岐大蛇の剣を抜いた。


「おい、生首。」

「誰が、生首だ。誰が。」

「おまえが使える必殺技が、八岐大蛇斬で近接攻撃、八岐大蛇破で遠距離攻撃ができるぞ。」

「わかった。」


最初なので、八岐大蛇は丁寧に、カーに説明する。スキルを認識した、カーは農賊を倒しにかかる。


「村人の敵討ちだ! 八岐大蛇破!」


剣から8匹の竜が解き放たれる。


「ギャア!?」


竜は次々と賊たちをかみ殺していく。


「すごい!?」


カーは、剣から竜たちが飛び出し、賊を倒していく様子に驚いていた。竜にも驚いているが、その指示を自分がしたことに、1番驚いている。


「くそ! 化け物め! 俺は頭で、1番偉いんだぞ! 俺は強いんだぞ!」


農賊の頭が、精神が狂ったかのように、カーに迫ってくる。カーは、昔の自分を見ているようで、嫌だった。


「調子に乗っていた時の俺って。気持ち悪かったんだな。」


カーは、力を手に入れて、さらに人間というものが見えてきた。自分のことだけを考えている人間が、どれだけ周りに迷惑をかけているのか、自分のやっていたことを、農賊のお頭がやっている。その姿を見て、過去を後悔した。


「八岐大蛇斬!」


カーの振るった刀から8首竜が飛び出し、農賊のお頭を切り裂いた。1瞬だった。お頭はギャア!? っと言い斬られて死んだ。


「な、んなんだ・・・なんなんだ? なんなんだ!?」


戦いが終わった。カーは辺りを見回した。やって来た時は、村人が普通に生活をしていた。子供が笑顔で走り回っていた。村人は、お米の豊作を喜んでいた。それなのに、もう誰もいない。辺りに村人と農賊の血の匂いしかしなかった。


「なんでこうなるんだ!? なんでこうなるんだ!? うわあ~!?」


カーは、初めて見る、人が大量に死んでいるという光景に、気が狂いそうだった。吐き気がしていた。自分自身が、この惨状の一部であるということに、自己嫌悪した。


「まだ、終わっていないぞ。」

「ああ!?」


もがき苦しみ、呼吸をするのも苦しんでいるカーに、八岐大蛇は言う。


「おまえの帰りを待っている者たちが、裏山で待っている。」

「与作!? おりゅう!?」


カーは、自分の考えばかりに囚われて、自分も殺人者だと、母親のことも含めて、たくさんの人を殺したのだと、苦しんでいた。しかし、八岐大蛇に言われて、裏山に子供たちを残してきたことを思い出した。そうすることで、カーは自我を取り戻した。


「行かないと! あいつらが待っている!」


カーは、子供たちのことだけを考え、裏山に走って行った。他のことは、全て忘れて、無心で走った。



「与作! おりゅう!」


裏山に走って帰ってきた。カーは、子供たちを見つけて、大声で叫ぶ。


「あ!? カーだ!?」

「カーだ!?」


その声に与作も、おりゅうも気づき、カーに駆け寄る。子供たちは、走っている勢いのまま、カーに飛びついて抱き着く。


「おまえたち無事だったんだな!」

「カー! カー!」

「うええん!」


子供たちは、カーを見て安堵したのか、安心して泣き出した。カーも子供たちの無事な姿を見て、本当は泣きたいぐらい喜んでいた。


「どうした? そんなに泣いて?」

「カーが帰ってくるのが遅いから、殺されたのかと思ってた。クスン。」

「カーが生きててよかった。私、絶対に帰ってくるって、信じてたもん!」

「おりゅうちゃん、ズルい!?」

「ハハハハハ!」


子供たちの子供らしいやり取りに、カーの心が和んだ。救われたのは、子供たちなのかもしれないが、本当に心を救われたのは、カーの方なのかもしれない。


「おまえたち、これからどうする?」

「え?」

「どうしよう?」


与作とおりゅうの両親は、農賊に殺されてしまった。もう村には誰もいない。村に帰っても、人であったものの死体が転がっているだけだった。子供たちの今後には、不安しか待っていなかった。


「一緒に行くか?」

「うん。カーと一緒に行く!」

「カー、大好き!」

「おりゅうちゃんには、おいらがいるだべ!?」

「知らない! プイ!」

「ハハハハハ!」


こうして子供たちは、カーと一緒に旅に出ることになった。だが、お世話になった村を、村人を死臭が漂う村のままにはしておけない。カーは、子供たちに尋ねる。


「亡くなった人々を放置していくことはできないんだ。かといって、子供の与作とおりゅうを村に連れていくこともできないんだ。・・・村を焼き尽くしていいかな?」


カーの言っている言葉の意味を、与作もおりゅうも、子供ながらに察した。特に目の前で両親を殺されたおりゅうは、村には帰りたいと思わなかった。


「いいよ。ねえ、与作。」

「うん。おりゅうちゃんがいいなら、いいよ。」


カーは、子供たちの言葉を聞いて、複雑な気持ちにはなったが、子供たちを村に連れて行かなくていいことに、少し安堵した。


「村の方向に手を合わせ、みんなが天国に行けるように、お祈りしよう。」

「うん。」

「はい。」


3人は、村の方向に手を合わせ、瞳を閉じた。それぞれのお祈りをする。カーは、過去の自分の愚かさと、村人を救うことができなかった、自分の無力さを。おりゅうは、お父さんとお母さんに別れを告げた。そして、天国で2人仲良く暮らしてほしいと。与作も両親への祈りと、これから、おりゅうちゃんを守っていきますと、亡くなった村人の魂に誓った。


「これから竜になるんだけど、嫌いにならないでね。」

「カーなら、いいよ!」

「カーは、大好き!」

「ありがとう。ここで待ってる? それとも、背中に乗りたい?」

「乗りたい!」

「私も空を飛びたい!」


子供たちからすると、生首の姿の方が怖く、竜の姿は、神のようでカッコイイみたいだった。子供たちのワクワク感が伝わってくる。


「八岐大蛇化!」


カーの姿が巨大な8つ首竜に変化していく。その姿を子供たちは、瞳をキラキラさせながら、ワクワク興奮している。


「はい、乗っていいよ。」

「わ~い~♪」


子供たちは、カーの差し出した、竜の手に乗る。そして、手から背中に移してあげた。子供たちは、竜の背中や空を飛べると喜んでいる。


「しっかり捕まっていてね。いくよ。」

「飛べ!」

「いけ!」


子供たちは、何もかも忘れて、今を楽しんでいた。カーの八岐大蛇は羽根を羽ばたかせ、地面から飛び立っていく。空高く舞い上がっていく。


「わ~い~♪」

「高い~♪ 高い~♪」


子供たちは、大喜び。空を飛んでいると、眼下に血塗られた村が見えてくる。与作とおりゅうは、自分の育った村、、両親と暮らしていた村、大好きだった村とお別れをするために、竜の背中に乗っていることを思い出し、表情は曇る。


「私の村・・・。」

「おりゅうちゃん・・・。」

「いいかい? 焼き尽くすよ?」

「うん。」


カーの問いかけに、子供たちは元気なく返事をする。悲しい出来事なので、あまり長引かせないように、カーは竜の口に火を溜め始めた。


「八岐大蛇火炎!」


8つ首の竜が8つの口から炎を吐いた。村の何もかもを焼き尽くしていく。炎は、田んぼの稲穂にも燃え移り、炎が海の波のように揺らめいている。楽しかった思い出も、何もかも燃えていく、燃えてしまうことに、おりゅうの感情が高まる。我慢していた思いが溢れ出す。


「お父さん! お母さん! 私は強く生きていくから! 私のことは心配しないでね! 天国に行ったら、幸せに暮らしてね!」


おりゅうの大きな声に、おりゅうの両親も手を振って、安心して天国に上っていくように思えた。炎で火葬された、村人の魂は、己の不幸を嘆いて、怨霊にならずに、天に召されていく。


「ありがとう。」


おりゅうのお父さん、お母さん、そして、村人の魂が、そう言っているように、カーや子供たちには聞こえた。救えなかった命を救えたようで、カーの心は癒された。与作とおりゅうも、自分たちは生き残ったのだから、死んだ村人たちの分まで一生懸命に生きようと前を向いた。


「これから、どこに行こうか?」

「分かんない。」

「知らない。」

「妖怪の世界に行かないか?」


今後の道しるべを決めようとするが、カーに子供たちには、行く当てはない。その時、カーの中に生きている、八岐大蛇が行先を提案する。


「私は、元々、妖怪の世界の住人でな。私の帰りをお嬢様が待っている。」

「行こう! 妖怪の世界!」

「面白そう! 妖怪さんに会ってみたい!」

「カーみたいに、生首ばっかりだったりして?」

「ハハハハハ!」

「よし! 妖怪の世界に行ってみよう!」

「おお!」


カーたちは、新しい旅の行先を、妖怪の世界を目指すことになった。


つづく。

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