ついに本州・長門・周防
「ついに本州か。」
一人の少年が海の向こうに見える大陸を眺めている。その表情は、充実感に溢れていた。
「ライ、そろそろ軍議が始まるぞ!」
「高橋さん、分かりました。すぐに、行きます!」
遠くから、少年を呼ぶ声がする。少年の名前は、ライ。島流しの島、西之島の出身である。ライは、子供の頃から剣術を学び、とても強い剣士になった。幾多の激戦の末、九州を制覇したのである。
「遅れるなよ!」
ライを呼びに来たのが、高橋紹運。元は大友の家臣であったが、殿を「歴史に名を残す者」に化け物の鬼にされ、殿の敵を討つために、参戦している。
「いくぞ! 本州!」
ライは、決心を新たに、自分の運命を前に進めていく。
「それでは、軍議を始める。」
司会進行役は、鍋島直茂。元は竜造寺の家臣であったが、殿を「歴史に名を残す者」に化け物の鬼にされ、殿の敵を討つために、参戦している。
「・・・が、なぜ義久がいない!?」
「兄者が面目ない。」
島津義久。自称天才である。父を「歴史に名を残す者」に化け物の鬼にされ、殿の敵を討つために、参戦している。家督をついで大名になった。現在は、壱岐か対馬で人を探している。そして、弟、島津義弘。武芸に秀でている。無口で不器用。
「まだ、海ちゃんは見つかっていないのかな?」
「あの子は、やさぐれていますからね。」
義久の探し人が、海ちゃん。海竜の使い。多少、性格に難があるらしい。そして、合いの手を打つのが、火ちゃん。火竜の使い。口癖は「青春一直線~♪」である。
「兄上は、何をしているんだろう?」
「困った兄を持つと大変だな。」
義久を兄上と呼ぶのが、島津3男、歳久。至って普通の気遣いができるオールマイティ武士。茶化すのが、立花道雪。少しチャラいが、忠義には厚い。
「俺が兄の分まで戦います。」
義久を兄と呼ぶのが、島津4男、家久。ライと同じ年くらいだが、実戦経験が浅く直線的である。これで第1部からのメンバーの紹介が、簡易ではあるが完了。
「クソ、義久め。まあ、いい。軍議を始めるぞ。」
鍋島は、仕切り直して、軍議を始める。
「我々は、まず筑前で大内義隆に謀反を起こし、長門、周防を領土にした陶晴賢を討つ。」
「おお!」
「しかし、1番の問題は、我々が陶を攻めている間に、九州が攻められる可能性があるということだ。」
「四国か。」
「そうだ。誰かが残り、九州を守らなければいけない。」
「うむ・・・。」
「僕が残ります。」
「ライはダメだ。歴史に名を残す者が出た時に戦ってもらわないと、我々は全滅するだろう。」
「俺が鬼ぐらい倒してやるよ!」
「無理だ、筑前の戦いで、分かっているはずだ。一匹二匹は倒せても、大人数で攻められたら、我々だけでは、太刀打ちできない。」
「チッ!」
「私が残ろう。」
「高橋、命がけだぞ? いいのか?」
「一度は死んだ命だ、何があっても守ってみせる!」
「わかった。頼んだぞ。」
「おお。」
「家久、おまえは残って、高橋を助けてやってくれ。」
「・・・わかりました。」
家久は、実戦に行きたいのに行けなくて、心の中では、納得していなかった。現状の説明は会話でした通りである。
「これにて軍議を終わる。いくぞ! 本州!」
「おお!」
登場人物の紹介も長くなると、ラノベ層なので、読んでもらえない。1人2行くらいが、ギリギリの線かな?
制覇!!! 中国・四国編、第2部がスタートする。
つづく。
「青春一直線~♪」
「わあ!? 空の上を歩いてる!?」
「火で道ができるなんて!? ありえん!?」
「あ、妖の仕業に違いない!?」
「むむむ・・・!?」
「クスクス~♪」
火ちゃんが、火の道の橋を九州の筑前から本州の長門にかけた。ライ、島津義弘、歳久、立花、鍋島のパーティーで本州に挑む。高橋と島津家久は、九州の防衛。島津義久は、行方不明であった。
火竜の使い、火ちゃんのスキル「火の道」に武将たちは驚いている。半信半疑なのである。戸惑っている武将たちを見て、ライはこっそり笑っていた。
「は~い~♪ 本州に到着です~♪」
「やっと着いた・・・。」
「地面に足がついていると安心する・・・。」
「俺は平気だったぞ・・・。」
「ふう~・・・。」
「火ちゃん、ありがとう~♪」
「これも青春のためです~♪」
「ハハハ・・・。」
やっと本州に着いた一行は、まず、ここがどこであるかを確認する。鍋島が側にいた武人に尋ねてみる。
「すまない、場所を尋ねたい。ここは何と言う場所ですか?」
「ここは・・・壇ノ浦。」
「かたじけない。教えてくれて、ありがとう。」
「みんな、ここは壇ノ浦らしい。」
「ということは、長門の国らしいな。」
「そうだ、陶晴賢は周防にいるからな。さっさと通り抜けてしまおう。」
周防を目指そうする一行だが、
「もし、客人のご一行さん。」
「なんだい?」
「せっかく壇ノ浦に来たんだ・・・死んでいきなさい。」
「え!?」
そういうと武人は剣を抜いた。
「わしは、平清盛。歴史に名を残す者じゃ。」
「なに!?」
ライたちは、思わぬ形で、歴史に名を残す者と遭遇してしまった。
「誰が相手をしてくれるのかな? それとも全員でまとめてかかってくるか?」
「拙者が、お相手しよう。」
島津義弘が1番最初に名乗り出た。
「では、いくぞ! ドリャア!!!」
「うわぁ!? なんだ!? この気合は!?」
「凄まじい風圧だ!?」
「これが歴史に名を残す者の実力なのか!?」
「この人も強い、ヤマトタケルと同じくらいか、それ以上だ・・・。」
平清盛を中心に発生している、竜巻のような気合のオーラが辺りにあるモノを吹き飛ばしていく。
「そこまでです。」
これから戦いが始まろうとした時に、上空から女性の声がする。上空を見た平清盛は、気合のオーラをおさめ、辺りは静けさを取り戻す。
「紫式部か・・・。」
「清少納言もいますよ~♪」
上空を2人の着物を着た女性が姿を現した。
「なんだ、あの女共は!?」
「紫式部、清少納言・・・、あいつらも歴史に名を残す者だというのか!?」
「どうする? 歴史に名を残す者を一度に3人も相手にするのか!?」
武将たちは、戦々恐々としていた。
「平清盛、あなたを迎えに来ました。」
「ほっといてくれ! わしは壇ノ浦にいたいんだ!」
「紫式部さまのお誘いは、素直に受けた方がいいですよ~♪」
「なぜ、受けねばならん!?」
「そんなことも分からないのか?」
「でた! 紫式部さまのお得意のルーティン~♪」
「わからんわい!」
「どあほう。」
紫式部の必殺の冷たい一言は、相手の精神に響き渡り、あっと言う間に相手を弱らせる。
「どあほう。どあほう。どあほう。」
「うわぁ!? 分かった! ついていくから、「どあほう」と言うのをやめてくれ!」
「最初から、素直に言うことを聞いてください。」
「さすが紫式部さま~♪」
平清盛は、紫式部たちと一緒に行動することになった。
「人間のみなさん、早く京に来てください。お待ちしております。」
「今度は、剣と剣をまみえようぞ!」
「さようなら~♪ あ!? 紫式部さま、置いて行かないで下さいよ!?」
こうして、歴史に名を残す者たちは去って行った。
「なんだったんだ!?」
「命拾いをしたのか!? 助かったのか!?」
「歴史に名を残す者、規格外の強さだな・・・。」
武将たちは、歴史に名を残す者たちの強さに恐怖を感じていた。
「紫式部、あの人が一番強そうに感じた。」
ライは、正確に相手の強さを見定めていた。
「みんな、気を取り戻して、陶を倒すため、周防を目指すぞ!」
「おお!」
一行は周防を目指すのであった。
つづく。
「おまえたちはなんだ!?」
大内義隆の領土を謀反を起こし、下剋上を成功させた、陶晴賢の前に、
「鬼島津! 島津義弘!」
「雷切り! 立花道雪!」
「平凡! 島津歳久!」
「自称天才! 鍋島直茂!」
「雷と書いて、ライ!」
「5人合わせて、九州制覇隊!!!」
「決めポーズも決まったよ~♪ これが青春だ~♪」
読んでもらおうと、少しでも、おもしろくすると、こんな感じ。
(恥ずかしい・・・。)
(死んでしまいたい・・・。)
(穴があったら入りたい・・・。)
(発案者、殺してやる!)
(ハハハ・・・。)
武将たちは、顔から火が出る位、恥ずかしかった。
「おまえたち、恥ずかしくはないのか?」
「ない!」
陶の質問にも、羞恥心を振り払うように、強がりで答える。
「謀反者、陶晴賢。降参しろ! おまえは包囲されている!」
「誰が降伏なんかするもんか! 勝負だ!」
「俺が相手してやるぜ!」
「道雪、頼んだぞ!」
陶と立花の戦いが始まったが、勝負は一瞬でケリが着いた。
「陶晴賢! 打ち取ったり!」
九州制覇隊は、長門・周防を手に入れた。逃げ出す兵士、降伏する兵士、敗戦した方は大変である。また勝ち取った領土を治めるのも大変である。
「みんな、地下の牢屋で変なのを見つけたのだが・・・。」
「ふにゃ。」
島津義弘が変なのの首根っこを捕まえて持って帰って来た。
「なんだ? 変な恰好をした女だな?」
「まさか!? 忍者か!?」
「忍者ってなに?」
忍者とは、術というスキルを使うことができる、ファンタジー世界の魔法使いのようなものである。
「いかにも、私は、由緒正しき名門忍者の旧暦家の落ちこぼれ忍者、12人分身が得意の睦月ちゃんだ~♪ どうだ! 参ったか~♪」
「そんなに優秀な忍者なら、どうして捕まってるんだ?」
「ガーン! ・・・落ちこぼれと言っただろう・・・。」
「この忍者・・・使えんな。」
「そんなことを言わないで、睦月ちゃんを雇ってください! わざと捕まって、食事をもらう生活は、もう嫌なんだ!」
「呆れるな、こいつ飯のためにわざと捕まっていたのか!?」
「まぁ、いい。偵察や情報収集くらいはできるんだろうな?」
「できます! 睦月ちゃんの得意分野です!」
「人材不足で猫の手も借りたいぐらい困っているんだ。」
「ニャア~♪」
「わかった、雇ってやる。」
「本当か!? ありがとう~♪」
「石見・出雲の尼子の動きを探って来てくれ。」
「その前に、ご飯が食べたいです!」
「はぁ~、こいつと話してると、お腹が空いてきた。みんなで飯にしよう。」
「やった~♪ ごはん~♪ ごはん~♪」
一行は、食堂に移動して、白いごはんを食べている。
「おまえたちは、どこの大名の家来なんだ?」
「我々は、九州制覇隊だ。」
「な、なに~~~!? 大友や竜造寺に島津と有力大名がひしめく九州を最近、制覇したものがいるという噂が流れていたが、おまえたちが九州を制覇した連中だったのか!?」
「俺たちも有名になったもんだな~♪」
「そうか、牢屋で捕まった忍者も知ってるぐらいだからな。」
「それを言わないで~♪」
「可愛い子ぶるな。」
「そうか~♪ 睦月ちゃんは強い国に就職できたんだな~♪ 父上が聞いたら涙を流して喜ぶぞ~♪ 父上! やりましたよ~♪」
「こいつ、話を聞いてないな。」
「おい、睦月ちゃんよ。」
「なんですか?」
「米をどれだけ食べる気だ?」
「ええ!? まだ、お茶碗9杯目です~♪」
「食い過ぎだ! そんだけ食ったら、さっさと仕事に行けよ!」
「殿!? そんなご無体な!?」
こうして、陶をさっさと倒し、新しい仲間、忍者の旧暦睦月ちゃんが加わったのである。
つづく。