第八十九話 宿場町ダグア
宿場町ダグア、そこはベイラとぐライアスを繋ぐ街道の距離が長いために作られた町で、土地がやせているためあまり作物は多く取れず、鉱物なども取れないため基本的に街道を通撫人々を相手にしないと収入を得る事ができないため冬の間は半数以上の者が距離がやや近街道の起伏が少ないベイラへ引き上げる。
離れたところに林があるが、そちらではなぜかいどどこを掘っても水が出なかったため土地がやせていても水が出て街道に近くあまり魔物も出ない場所に宿場町が築かれたらしい。
「今はまだ閑散としてると思いますが、あと一ヶ月もすると街道を行き来する人が多くなりますよ」
「へぇ~、この街道は結構人が通るんですね」
「今年は特にライアスから人が多く流れてくるでしょうから私共の駅馬車の利用者も多く見込めそうです」
「……ああ、確かに」
ラグルス話しているとダグアの町の入り口である門には守衛以外誰もおらず順番を待つことなく町に入るための手続きが行われたのだが、ここで問題が発生した。
犬車に元々乗っていた面々は身分証を出す必要はなくラグルスが名簿を渡し問題なしとされたが、キルグだけは乗客ではなく正式な護衛でもないため身分証の提示を求められ、関所で手続きをせずに国境を越えて来てしまっていたため不法入国扱いとなる事を伝えられた。
「す、すみませんが、いくらあのリトロ様のお弟子様といえど規則は規則ですので入国税と追加で不法入国分の罰金を払っていただきたく……」
「ふむ、参りましたね。今持ち合わせが無いので魔物の素材をギルドか店で換金したいのですが」
「あ、はい、そ、そうでしたか。それではこちらの札をお渡ししますので日没までに違反金をお支払いしていただけましたら……」
「それでよいならこちらとしては構いませんが、よろしいんですか? 一応、不法入国という犯罪を犯した者を通すなんて、それでいいのかな?」
「い、いえ! 剣豪リトロ様のお弟子様であらせられるキルグ様を信用しないなどという選択はあり得ません!」
さすが有名人といったところか、顔パスとまではいかなくても不法入国した者を監視を付けずに町に入れちゃうんだ。これが一般の冒険者とかだったら牢屋へ直行だったんじゃないのか? 例えば俺だったら、とかね。
何やら握手まで求められていた。どうやら門の守衛はリトロのファンらしい。
ウラグリオにそんなにリトロと言う人は人気があるのか聞いてみるとギリバイアス連合王国ではリトロは強さ以外は滅茶苦茶で話をするにもまず戦ってからという戦闘狂で兵士や冒険者などに人気が高く、それに比べてまともに会話が成り立ち礼儀作法もある程度できる弟子のキルグ(あくまでも戦闘時以外だが)は一般人に人気が高いらしい。
獣人族、特に戦う事を生業としている者は強さにあこがれる傾向が強く余程の性格が破綻していない限り他国の将軍などにも一定の敬意を払うらしいが、普通の平民はたとえ一流の武芸者だったとしても他国の者ならあまり知る事は無いという事だった。
ちなみに、あの門番は南の国境沿いの町出身である程度ギリバイアス連合王国の噂でリトロなどの強い者の噂を知って憧れているのだとも教えてくれた。
「さて、それではまず宿に向かいます。キルグさんはどうなさいますか?」
「宿に行っても金がないですしまずはギルドへ行って素材を換金してきます。場所はさっきの守衛さんに聞いたので問題ないです」
「そうですか。それでは、ここまでの護衛ありがとうございました」
キルグと別れ駅馬車一行はとりあえず予約されていた宿へ向かった。この宿場町ダグアではバズを一日休憩させるためと補給を兼ねて二泊する事になっており、宿は朝食と夕食がセットになっていて昼食は各自自腹で好きなところでとる事になっていた。
これが駅犬車の特急だと二頭立てで速度重視で進み、この町で交代用のライドドッグをあらかじめ待機させて繋ぎ変えてからすぐに出発する事になるらしい。ただ特急は早い事は早いのだが乗り手の事はお構いなしで結構な速度で進むため乗り心地は最悪どころか地獄で割れ物なんて積めば全部壊れてしまう事になるらしい。ま、中にはあまりの地獄の行進に壊れかける人もたまに出るとか何とか、とにかく特急に乗る時は体調を万全にして胃の中を空の状態にして乗ると言うのが一般常識らしい。
「それでは出発は二日後の午前九時の予定ですのでくれぐれも遅れないようお願いいたします。護衛の方は八時集合でお願いします」
宿で部屋割りの確認などをしてとりあえず二日後の朝、駅犬車の出発まで各自自由時間となり解散となった。
「レイ、これからどうする? まだ夕食には少し早いしちょっと町を見て周るか? それとも部屋で休むか?」
「……ん~、ちょっと散歩……リンも……行こ?」
「ああ、そうだな、ちょっと見て周るか――にしても、てっきりレイは部屋で寝るとか言うと思ってたのに、意外だな」
「……犬車でぐっすり寝たから……これ以上寝たら夜寝れない……少し散歩して身体動かす」
普通あれだけ寝てたら十分夜寝れない気もするけどな。
ダグアはそれほど広くない様なのでまず迷う事は無いとは思ったが念のため『地図アプリ』を使って宿の位置をマークしておいた。
宿場町と言ってもライアスからベイラまでの距離が遠かったのである程度の安全の確保と休息のために作られただけ町のため宿以外の建物があまり無く、酒場ぐらいしか娯楽がない。
途中屋台が何軒か出ていたが夕食前だったのでどんなものが売っているのか歩きながら目をやる程度で通り過ぎ進んで行くと、空き地に何やら建物を建ているのが見えたどうやらライアスから人が流れてくるのをみこして簡易宿泊所を建設中らしい。
あ~、確かにいっぱい人が流れて来そうだもんな、しかもそれほど金を持ってない人が多数。そう考えれば一般的な宿より安い宿が多くあった方が儲かるか、しかも今回の人の流れは一過性の者になるだろうし流れが止まった後に簡単に解体できる宿の方がいいんだろうな。
「これといって面白そうなところは見当たらないな」
「……ん、宿の建設してたとこが……一番活気あった……でも、観光できる様なとこが無かったのは残念」
「そうだな~、景色がいいわけでもないし特産物もない、せめて温泉でもあればいいんだけどそれも無いしな~」
はっきり言って休憩する以外に何もする事が無い! 土産物も売ってないし、何か観光の目玉になる様なものがあれば宿場町としてじゃなく普通の町として栄えそうだけど……冬の間の交通の問題もあるしちょっと難しいかな?
その後ギルドの位置と駅舎の位置を確認したところでそろそろ夕食の時間となったので宿に戻り夕食を食べた。メニューは肉野菜炒め、ライ麦パン、トマトスープで味は可もなく不可もなくと言ったところで、正直言って野営した時に食べた食事の方が美味しかった。
「う~ん、不味くはないんだけどな~」
「……ん、普通……せめてデザートが欲しかった」
「部屋戻ったらなんか出すよ」
「……ん、お願い」
ちょっと残念な気持ちを抱えたまま受付でカギを受け取ってから部屋へ向かったのだが、部屋にあるベッドがツインではなくダブルだった。
いや、同じ部屋までなら何とか耐えれるけど、さすがに同じベッドで寝るのは我慢できる自信ないぞ……最悪俺はレイに氷漬けにされるな。
氷漬けになるのは嫌だったので部屋にもう一つベッドを置くだけのスペースがあるのを確認し『倉庫アプリ』からシングルベッドと衝立を出して手早く設置した。
「リン、デザートお願い」
「あいよ」
デザートは冷凍リンゴのハチミツかけを出した。(冷凍リンゴのハチミツ掛けとはリンゴをよく洗ってから凍らせてそれを解凍してから切り分けハチミツをかけたもの)
デザートを食べながら今後の戦い方について考えスマホ(ウェアラブル端末含む)を使わないとほぼ無力になっちゃうから使わないという選択はなしとして、この世界にはありえない武器(主に銃火器)を使うのは悪目立ちすると今更ながら思っていることをレイに相談してみるとそれほど大勢に見せた訳でもないし見せた相手も口の軽い者はいなさそうなので確かに大っぴらに珍しい武器の様なものを(この場合銃火器を指す)人前で使わないというのは正しいだろうという事を言われた。
「ま、レイもいるしそうそう苦戦するような事もないとは思うから魔法だけでも十分やっていけるか」
「ん、強欲な商人とかバカな貴族に目を付けられると面倒だから、銃はできるだけ使わない方がいい」
その後、明日はどうするか話し合った結果、レイが最近あまり狩りをしていなかったのでちょっと腕が訛っちゃってる気がするから魔物と戦っておきたいのと魔法を使った俺との連携も確かめておきたいという事もあり、ギルドへ行って簡単なものでもいいから何か討伐依頼をこなそうという事になった。
この町で娯楽といったら酒場(昼間も営業中らしい)くらいしかなく、もしする事が無いからとレイが酒場で酒を飲んだりするとまた大変なことになるのではないかという思いからもギルドへ行く選択になったのは心底よかったと思う。
レイのやつ一人だと酒飲まないくせに、俺がいると介抱してくれると思って飲みやがるからな。
翌朝、ギルドへ行くと中にはギルド職員しかおらず冒険者の姿はなかった。とりあえず依頼札の掛かった掲示板を見てみると宿の雑用的な依頼が大半で、討伐依頼に関しても最高でもブロンズランクのものしか掛かっていなかった。
「目ぼしい討伐依頼はないみたいだな。でもまぁ、連携を試すだけならブロンズランクくらいまでで狩れる程度の魔物の方が逆にいいか?」
「……ん、多少失敗しても……そのくらいの魔物なら対処可能」
「ま~、フリー扱いになってるゴブリン討伐は一応人型魔物だし対人戦の練習にもなるから受けるとして、他にゴブリンが出る場所で受けれそうな依頼を受付で聞いてみるか」
ここのギルドは特別ルールで自分より下のランクの依頼に制限がかからない、例えばゴールドランクの冒険者がウッドランクの依頼を受けても構わないことになっていた。ただし、一部の依頼は低ランクの冒険者に優先権が与えられると明記されていた。
「お、リンくんとレイちゃんじゃないか」
「おはようございます。バルゥクさんたちも依頼受けに来たんですか?」
「ああ、ちょっと小遣い稼ぎに簡単なものでも受けようと思ってね」
大地の牙はまだ護衛依頼が終わったわけではないので今後の護衛に支障が出ないようあまり危険な依頼はできないからフリーとブロンズランクの中でも比較的安全な依頼をいくつか選ぼうとしていたらしい。どうせなら一緒にやらないかと誘われ、冒険者パーティの連携というのもあまり見てこなかったしレイとの連携の参考にもなるかと思い誘いを受ける事にした。ま~、黒翼と一緒に行動してた時に戦い方は見ていたけどあれは連携というより傭兵の集団戦闘術といった感じだったので、いかにも冒険者といった感じの大地の牙の戦い方を参考にしたいと感じた。
「それで、何かやりたい依頼とかやりたくない依頼はあるかい?」
「いえ、特には……あ、できれば討伐依頼がいいですね。ここはブロンズランクまでの強さの魔物の討伐依頼しかないようなんで選択は任せますよ」
近場の森で出る魔物の討伐依頼をいくつか受けて問題なくこなしていったのだが、レイと俺の戦いを見てバルゥクたちが『おまえらがいれば俺たちの護衛なんていらないんじゃないか?』と言われたが、こっちは客として乗ってるのでゆっくりしたい旨を伝えた。
そして、依頼板を出して狩った魔物と比較して確認してみると、まだ少し依頼の討伐数に達していない魔物がいくつかあったので森の奥の方へ移動しつつ探すことにした。




